著者
石井 直明
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.103, no.2, pp.143-148, 2006 (Released:2006-02-06)
参考文献数
5

近年飛躍的に進んでいる老化研究の結果から,老化のメカニズムがインスリン·シグナル伝達経路やカロリー制限が関係する「エネルギー代謝」と,ヘリケースやテロメアが関係し,細胞老化やガン化につながる「細胞分裂」に集約されてきた.この両者は一見,つながりがないように思えるが,エネルギー代謝の副産物として産生される活性酸素による傷害が細胞分裂の停止や細胞死,ガン化に関与することや,インスリン·シグナル伝達経路が細胞分裂を制御しているという報告があることから,老化の基本的なメカニズムが1つのネットワークの中に描かれる日が近いことを感じさせる.
著者
石井 直明
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.103, no.2, pp.143-148, 2006-02-05
参考文献数
5

近年飛躍的に進んでいる老化研究の結果から,老化のメカニズムがインスリン&middot;シグナル伝達経路やカロリー制限が関係する「エネルギー代謝」と,ヘリケースやテロメアが関係し,細胞老化やガン化につながる「細胞分裂」に集約されてきた.この両者は一見,つながりがないように思えるが,エネルギー代謝の副産物として産生される活性酸素による傷害が細胞分裂の停止や細胞死,ガン化に関与することや,インスリン&middot;シグナル伝達経路が細胞分裂を制御しているという報告があることから,老化の基本的なメカニズムが1つのネットワークの中に描かれる日が近いことを感じさせる.<br>
著者
簗瀬 澄乃 正山 哲嗣 須田 斎 石井 直明
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.127-127, 2009

線虫<i>Caenorhabditis elegans</i> (<i>C. elegans</i>)において、高濃度酸素への短時間暴露の反復によって寿命が延長するというホルミシス効果が認められる。我々はこれまでに、<i>C. elegans</i>におけるIns/IGF-1信号伝達経路の活性化が、このホルミシスによる寿命延長効果に関与することを明らかにしてきた。このIns/IGF-1信号伝達経路の下流では、ヒトのフォークヘッド型転写因子に相同なDAF-16転写因子が作用しており、このDAF-16の標的遺伝子として抗酸化系酵素やミトコンドリアにおけるエネルギー代謝に関わる蛋白などが挙げられている。従って、<i>C. elegans</i>で認められたホルミシスによる寿命延長効果において、これらDAF-16の標的遺伝子の発現が役立っている可能性が考えられた。<br>そこで我々は、高濃度酸素暴露によるホルミシス効果が認められる<i>age-1</i>変異体において、SODやカタラーゼなどの抗酸化酵素活性が上昇していることを定量的RT-PCR法によって確認した。また、そのミトコンドリアにおけるスーパーオキサイドラジカル産生量の変化を測定し、短時間の酸素暴露に依存してその産生量が低下していること、さらに抗酸化酵素の作用を除外したサブミトコンドリア粒子(SMP)においてもその産生量が減少していることをこれまでに発表した。これらの酸素暴露に依存した抗酸化系の活性化およびスーパーオキサイドラジカル産生量の減少は、DAF-16発現を欠く<i>daf-16</i>ヌル変異体においては認められなかった。即ち、ホルミシス効果を生じるためにはDAF-16の標的遺伝子候補である抗酸化系酵素が活性化され、エネルギー代謝系が抑制されている可能性の高いことを示唆している。現在、これまでに観察された酸素暴露による<i>age-1</i>変異体のミトコンドリアおよびSMPにおけるスーパーオキサイドラジカル産生量の減少が、ミトコンドリア呼吸鎖自体の作用制御に起因しているのか、それとももっと呼吸鎖の環境的な要因が関係しているのかどうか<i>C. elegans</i>の酸素消費量を測定することによって解明を試みている。
著者
石井 直明 安田 佳代
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第54回大会
巻号頁・発行日
pp.62, 2011 (Released:2011-12-20)

線虫は以下のように放射線に対して高い耐性を示す。 1. 胚発生期において、放射線耐性は最初の細胞増殖期で低下した。線虫はモザイク卵であるため、分裂に伴いターゲットサイズが大きくなってきたことが原因と考えられる。その後、後半の分化期に入ると前半に比べて40倍も耐性になった。この時期には多くの細胞が分裂を停止したことが原因と考えられる。孵化後の幼虫期、及び成虫期ではさらに放射線耐性になった。 2.線虫の一種、C. elegansは幼虫期に餌が不足したり、虫の密度が高くなると正常発生から外れて耐性幼虫になる。餌を与えた時点で正常発生に戻る。耐性幼虫から正常発生に戻すまでの期間に依存せず、正常発生後の寿命が一定なことから耐性幼虫期を「non-aging stage」と呼ぶ。耐性幼虫期に電離放射線を照射し、正常発生後の寿命に変化があるかを調べたところ、寿命延長効果が認められた。その効果は耐性幼虫になってから照射までの期間や照射から正常発生までの期間で大きく変化した。 3.電離放射線照射前の酸素暴露が強いホルミシス効果を示した。この効果は電離放射線と紫外線に高い感受性を示す突然変異体、rad-1 とrad-2で消失した。 線虫は電離放射線により生じたDNAの1本鎖切断を早期に高い効率で修復することから、線虫は放射線に対して強い防御機構を備えていることが示唆された。