- 著者
-
安田 利枝
- 出版者
- 嘉悦大学
- 雑誌
- 嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.1, pp.117-143, 2008-04-30
- 被引用文献数
-
1
LTD(話し合い学習法)に基づくテキストの「読み」には、主として次の学習効果が認められる。(1)個々人の充実感と学習意欲の向上(2)言語スキルやコミュニケーション・スキルの向上(3)学習スキルの獲得(4)論理的・批判的志向スキルの向上(5)対人関係スキルの発達と仲間意識の変化・改善アメリカで確立されたこの学習法は、学習者の先行経験や既有知識と思考スキルを活用して「知識の構造化」を意図する点で、認知心理学の知見と親和性を持っている。批判的思考を含む高度な読み書き能力を身につける上で有効かつ魅力的な学習法であり、大学における導入教育でもっと実践されてよい手法である。なぜなら、学習階梯が明示されていることで学習者にとって取り組みやすい、学習者の既有知識を活性化させるとともに新たな知識との関連付けをすることにより、学習者が新たな知識を学んだという実感を持つことができる、さらに、学習者が学びを楽しみ仲間を作ることが出来るなどの利点があるからである。通常の講義型授業においても、学生の「知識の構造化」を意図した授業者の発問、そして学生同士の交流による「知識の構造化」のための時間を組み込むという形で、LTDの基礎にある学習理論を活用することができるであろう。