著者
安田 利枝
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.117-143, 2008-04-30
被引用文献数
1

LTD(話し合い学習法)に基づくテキストの「読み」には、主として次の学習効果が認められる。(1)個々人の充実感と学習意欲の向上(2)言語スキルやコミュニケーション・スキルの向上(3)学習スキルの獲得(4)論理的・批判的志向スキルの向上(5)対人関係スキルの発達と仲間意識の変化・改善アメリカで確立されたこの学習法は、学習者の先行経験や既有知識と思考スキルを活用して「知識の構造化」を意図する点で、認知心理学の知見と親和性を持っている。批判的思考を含む高度な読み書き能力を身につける上で有効かつ魅力的な学習法であり、大学における導入教育でもっと実践されてよい手法である。なぜなら、学習階梯が明示されていることで学習者にとって取り組みやすい、学習者の既有知識を活性化させるとともに新たな知識との関連付けをすることにより、学習者が新たな知識を学んだという実感を持つことができる、さらに、学習者が学びを楽しみ仲間を作ることが出来るなどの利点があるからである。通常の講義型授業においても、学生の「知識の構造化」を意図した授業者の発問、そして学生同士の交流による「知識の構造化」のための時間を組み込むという形で、LTDの基礎にある学習理論を活用することができるであろう。
著者
安田 利枝
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.33-50, 2012-03-20

合理的かつ総合的なエネルギー政策の検討のためには、熟議をなし得る法制度上の「公共空間」の構築が欠かせない。原子力政策をめぐる現行法制度上の「公共空間」の実情と課題をこれまでの諸研究のレビューにより確認し、原子力政策にかかわる「公共空間」が極めて貧弱である理由を探った。相次ぐ電力会社の不祥事や監督官庁等の失態から、地元住民の間では地方政府への期待が高まり、一般市民の間ではエネルギー政策の選択肢を求める声が大きくなっている。にもかかわらず、むしろそれ故に、原子力発電の推進を国策としてきた中央政府と専門家は、住民、市民の合理的判断能力や科学的思考の欠如という「素人像」を前提として、行政官僚こそが専門科学者との協同により合理的な政策を決定できる、国民はこれを理解し受容すべきであるという、意思決定にかかわる政策信念に固執してきた。このことがパブリックコメントの機能不全、公開ヒアリングの形骸化、環境影響評価の未成熟、円卓会議と市民参加懇談会の変質と退行などを生んだ要因の一つであるとの仮説を導いた。
著者
安田 利枝 ヤスダ リエ Rie Yasuda
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-24, 2005-04-30

1999年の地方自治法(LSGA)は、開発援助の与え手(ドナー)側の援助思潮ならびに開発戦略に基づいて、分権化の原則と政策、参加型開発の定式化、地方政府機関の確立に向けて相当程度包括的な法的枠組みをもたらした。しかしながら、1982年地方分権法とこれに続く分権化スキームと同様、問題は法の実効性、運用、実施にある。実施を阻害する要因として、多くの研究者が、高度に権力を集中させた封建的、権威主義的、世襲制的政治、中央政府の実質的コミットメントの欠如、財政分権化への中央省庁の抵抗、地方政府機関の弱体な管理運営能力等を指摘してきた。だがむしろ根源的な問題は、ネパールの恩顧主義の政治文化に支えられて、課題設定権力がドナーの側にあり、ネパール政治社会に適合的な制度設計の代替案が十分に検討されてこなかったことにある。
著者
安田 利枝
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-24, 2005-04-30

1999年の地方自治法(LSGA)は、開発援助の与え手(ドナー)側の援助思潮ならびに開発戦略に基づいて、分権化の原則と政策、参加型開発の定式化、地方政府機関の確立に向けて相当程度包括的な法的枠組みをもたらした。しかしながら、1982年地方分権法とこれに続く分権化スキームと同様、問題は法の実効性、運用、実施にある。実施を阻害する要因として、多くの研究者が、高度に権力を集中させた封建的、権威主義的、世襲制的政治、中央政府の実質的コミットメントの欠如、財政分権化への中央省庁の抵抗、地方政府機関の弱体な管理運営能力等を指摘してきた。だがむしろ根源的な問題は、ネパールの恩顧主義の政治文化に支えられて、課題設定権力がドナーの側にあり、ネパール政治社会に適合的な制度設計の代替案が十分に検討されてこなかったことにある。