著者
加藤 勲 安藤 功一
出版者
日本酪農科学会
雑誌
酪農科学・食品の研究 (ISSN:03850218)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.A-87-A-94, 1994

硬質チーズの Gouda チーズと半硬質チーズのSt. Paulin チーズを試作し、熟成70日間に於ける各種糖、有機酸及び pH の変化を比較することによって以下のことが明らかになった。<br/>1. 先ず2種類のチース製造に於て製造上の主な相違点は、Gouda チーズのチーズバット内の予備加圧と、St. Paulin チーズの表面熟成菌 (<i>Brev. linens</i>) によるチーズ表面からの熟成である。これらの製造法の違いにより両チーズの味、色、臭い等に決定的な違いが生じた。<br/>2. 70日間15~16℃で熟成させることによってラクトースが分解を受けて Gouda チーズでは熟成前 (約0.2%) の約半分 (約0.1%) にSt. Paulinチーズでは 約1/4 (0.05%) まで減少した。一方、グルコースとガラクトースの含量は Gouda チーズで熟成一週間後でガラクトースで0.05%、グルコースで0.03%程度を示し、その後、熟成50日頃でガラクトースで0.1%、グルコースで0.04%まで増加した。また、St. Paulin チーズでは熟成一週間にガラクトースが0.33%に増加し、その後は減少した。グルコースは0.1%から徐々に増加し、2週間後には0.18%まで増加したが、その後は減少した。<br/>3. 両チーズには元々乳中に含まれる有機酸を含めて熟成中に5種類の有機酸 (オロット酸、ピルビン酸、乳酸、酢酸、プロピオン酸) が認められた。Gouda チーズではオロット酸と酢酸は熟成1日目にそれぞれ 20ppm と 100ppm の濃度が熟成の経過と共に減少し、乳酸は1.25%を示していたものがその後1.5%まで増加した。又、プロピオン酸は3日目に、ピルビン酸は5日目に検出されそれぞれ0.01%、8ppm 程度あったのがその後増加した。一方、St. Paulin チーズでは酢酸、乳酸、プロピオン酸そしてピルビン酸が熟成1日目から急増し熟成3~5日頃に最大に達した (酢酸:46ppm、乳酸:1.7%、プロピオン酸:0.18%、ピルビン酸:10ppm)。その後、熟成25日頃から再び酢酸、プロピオン酸、ピルビン酸が増加し熟成35日頃から徐々に減少した。<br/>4. 両チーズ共に熟成2~3日でpH5.3前後から4.5位に急に低下しその後上昇した。Gouda チーズは熟成期間の最後までほぼpH5.6位で推移するのに対して、St. Paulin チーズは熟成14日頃に pH6.0 まで上昇してその後、35日頃に pH 5.5 まで低下した。更に熟成の経過と共にpHが再び上昇し最後には pH7.3 までに至った。