著者
高橋 史生 田淵 香苗 坪井 美奈子 加藤 勲
出版者
日本酪農科学会
雑誌
酪農科学・食品の研究 (ISSN:03850218)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.A-107-A-112, 1995 (Released:2015-10-31)
参考文献数
12

紅茶浸出液が低温に保存されるとクリームダウン,あるいはクリーミングを生じる。その要因について,本研究は,特に紅茶浸出液に及ぼすカルシウムの影響を中心に検索した。1) カルシウム添加は,明らかにクリームダウンを促進した。その促進効果は,カルシウム濃度依存の傾向を示した。VC や EDTA は,カルシウム添加で生じる紅茶の濁度上昇の抑制効果を示した。2)タンニンとカフェイン各溶液にカルシウムを添加するとある範囲内で濁度の急上昇を認めた。3)カルシウム添加で人為的に作成して得たクリームダウンの沈降成分中のカルシウム濃度は経過時間と共に増大し,しかもカルシウム添加量の増加と共に各沈降成分中のカルシウム濃度が増大する傾向を示した。4) カルシウム添加でクリームダウンを生じさせた沈降物の形態は,球形以外に小桿状,あるいはダンベル型の結晶型も認めた。市販のミルクティーの沈降物中には,紅茶浸出液にカルシウムを添加しただけでは得られない典型的なダンベル型が多数認められた。
著者
N. シャガラジャ 細野 明義
出版者
日本酪農科学会
雑誌
酪農科学・食品の研究 (ISSN:03850218)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.A-1-A-6, 1994 (Released:2015-10-31)
参考文献数
13

“イドゥリ”は南インドにおいて主食的に食べられている伝統的発酵食品である。米粉, 黒ヒヨコマメの粉を捏ね合わせ, 一夜自然発醇させ, バター (batter) が2ないし3cmに膨らんだ段階で発酵を停止させ, それを蒸して食べる蒸しパン様食品である。発酵には乳酸菌が関与し, 発酵によって特有の発酵臭と酸味が醸成される。発酵に関与する乳酸菌は人為的に接種するのではなく, 材料に混入した乳酸菌によって発酵が行われる。しかし, 混入乳酸菌の菌叢はほぼ一定しており, ヘテロ発酵型乳酸菌やPediococcusが見出されるのが特徴である。 本総説ではイドゥリの製造時における細菌の変化と構成菌叢について述べると共に, 主叢をなす乳酸菌のアミノ酸分解物, スパイスそれにアフラトキシンに対する抗変異原性に関する最近の知見を中心にまとめたものである。
著者
バルカス マイノル 大橋 登美男
出版者
日本酪農科学会
雑誌
酪農科学・食品の研究 (ISSN:03850218)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.A-71-A-74, 1996 (Released:2015-10-31)
参考文献数
21

Shiitake mushroom extract, obtained from industrial wastes of dry shiitake was found to reduce the coagulation time of 20% reconstituted skim milk (wt/v%) by stimulating the bacterial growth of Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus B-5b. A time-course study of the lactic acid production rates was conducted at its optimal temperature (37℃), with and without the addition of the extract. Maxima at 12 and 15 hr were obtained, with production rates of 140 and 90mg% lactic acid/hr, respectively. At these maxima, pH values in both media were around 4.90, and below that point, the fermentative activity of the bacteria was gradually inhibited by the increasing concentration of lactic acid in the medium.
著者
イングリッド・S・ スノロ 細野 明義
出版者
日本酪農科学会
雑誌
酪農科学・食品の研究 (ISSN:03850218)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.A-91-A-98, 1995 (Released:2015-10-31)
参考文献数
20

インドネシアは世界最大の群島であり,多くの伝統的発酵食品が存在する。それら発酵食品には微生物としてカビ,酵母,細菌が関与しているが,構成微生物菌叢や製造過程での成分変化について明らかにされているものは極く一部に過ぎない。本稿ではカビを用いて製造するオンチョム,テンペ,タウチョ, ケチャップ,酵母を用いて製造するタペシンコン,タペクタン,ブルムケーキ,ブルムバリ,そして細菌を用いて製造するダディヒ,ミニャクサミン,テラシ,ケチャップイカン,イカンペダ,テルルアシン,テムポヤについて新しい知見と併せ紹介する。
著者
加藤 勲 安藤 功一
出版者
日本酪農科学会
雑誌
酪農科学・食品の研究 (ISSN:03850218)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.A-87-A-94, 1994

硬質チーズの Gouda チーズと半硬質チーズのSt. Paulin チーズを試作し、熟成70日間に於ける各種糖、有機酸及び pH の変化を比較することによって以下のことが明らかになった。<br/>1. 先ず2種類のチース製造に於て製造上の主な相違点は、Gouda チーズのチーズバット内の予備加圧と、St. Paulin チーズの表面熟成菌 (<i>Brev. linens</i>) によるチーズ表面からの熟成である。これらの製造法の違いにより両チーズの味、色、臭い等に決定的な違いが生じた。<br/>2. 70日間15~16℃で熟成させることによってラクトースが分解を受けて Gouda チーズでは熟成前 (約0.2%) の約半分 (約0.1%) にSt. Paulinチーズでは 約1/4 (0.05%) まで減少した。一方、グルコースとガラクトースの含量は Gouda チーズで熟成一週間後でガラクトースで0.05%、グルコースで0.03%程度を示し、その後、熟成50日頃でガラクトースで0.1%、グルコースで0.04%まで増加した。また、St. Paulin チーズでは熟成一週間にガラクトースが0.33%に増加し、その後は減少した。グルコースは0.1%から徐々に増加し、2週間後には0.18%まで増加したが、その後は減少した。<br/>3. 両チーズには元々乳中に含まれる有機酸を含めて熟成中に5種類の有機酸 (オロット酸、ピルビン酸、乳酸、酢酸、プロピオン酸) が認められた。Gouda チーズではオロット酸と酢酸は熟成1日目にそれぞれ 20ppm と 100ppm の濃度が熟成の経過と共に減少し、乳酸は1.25%を示していたものがその後1.5%まで増加した。又、プロピオン酸は3日目に、ピルビン酸は5日目に検出されそれぞれ0.01%、8ppm 程度あったのがその後増加した。一方、St. Paulin チーズでは酢酸、乳酸、プロピオン酸そしてピルビン酸が熟成1日目から急増し熟成3~5日頃に最大に達した (酢酸:46ppm、乳酸:1.7%、プロピオン酸:0.18%、ピルビン酸:10ppm)。その後、熟成25日頃から再び酢酸、プロピオン酸、ピルビン酸が増加し熟成35日頃から徐々に減少した。<br/>4. 両チーズ共に熟成2~3日でpH5.3前後から4.5位に急に低下しその後上昇した。Gouda チーズは熟成期間の最後までほぼpH5.6位で推移するのに対して、St. Paulin チーズは熟成14日頃に pH6.0 まで上昇してその後、35日頃に pH 5.5 まで低下した。更に熟成の経過と共にpHが再び上昇し最後には pH7.3 までに至った。