著者
外山 元 大松 健太郎 安達 哲浩 高橋 司 竹井 豊
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.592-600, 2023-10-31 (Released:2023-10-31)
参考文献数
12

目的:本研究では救急救命処置の実施や救急隊による医療機関選定にかかる時間が救急現場活動時間の延長に影響を及ぼすのかを疫学的に検証することを目的とした。方法:2019年中の全国救急搬送データのうち,転院搬送,軽症例,医師関与例,欠損データを除外した2,575,738件を分析対象データとして,救急現場活動時間の延長に影響を与える因子を最小二乗法による多変量線形回帰によって分析した。結果:すべての因子を考慮した救急現場活動時間の推定値は15.84分であった。多変量解析において,搬送先医療機関決定までの連絡回数が複数回の例(20.96分),関東地方での発生例(19.12分),高齢傷病者(18.77分),非急病事案 (16.54分)は救急現場活動時間を延長させ,心肺蘇生実施例(14.49分)は救急現場活動時間を短縮させる要因であることが示された。結論:搬送先医療機関決定のために行う複数回に及ぶ病院連絡は救急現場活動時間を延長させる主たる要因であった。救急現場活動時間には地域差があり,救急需要と医療リソースの不均衡による連鎖が課題であることが示唆された。
著者
竹井 豊 安達 哲浩 長谷川 恵 大松 健太郎 山内 一 神藏 貴久
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.105-109, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
9
被引用文献数
1

目的:初期評価は傷病者の処置などの優先順位を迅速に識別する重要な観察である。本研究では救急救命学科学生が呼吸・脈拍数を適切に識別できるのか確認した。方法:4年生大学救急救命学科学生105名を対象として,正常値(呼吸数12回/ 分,脈拍数80回/ 分)と異常値(呼吸数24回/ 分,脈拍数100回/ 分)に設定したシミュレータに対してモニター類を使用せず,それぞれ「遅い」「正常」「速い」の3分類で評価させた。結果:ほとんどの学生が異常所見を正しく識別できた反面,35%の学生が正常を正常と識別できなかった(呼吸12回/ 分:遅い38人・速い2人,脈拍80回/ 分:遅い8人・速い28人)。正常呼吸を正常と識別できた学生の所要時間は中央値で12秒(25-75% 信頼区間:10-16),できなかった学生は9.5秒(7-14.8)であった(p=0.007)。結論:正常呼吸・脈拍を正常と識別できない学生が35%にも上った。バイタルサイン測定の精度は高められなければならない。
著者
竹井 豊 長谷川 恵 安達 哲浩
出版者
Japanese Society for Emergency Medicine
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.569-577, 2021-08-31 (Released:2021-08-31)
参考文献数
20

目的:救急隊員の職業上の危険性を明らかにすること。方法:総務省消防庁のヒヤリハットデータベースから抽出したアクシデント事例とインシデント事例を分析した。結果:腰痛の原因は,患者の搬送(運ぶ,上げる,下げる)によるものであり,経験不足はインシデント事例に比べてアクシデント事例の危険性が高いことを示していた。インシデントは,ストレッチャー操作による転倒が多かった。転倒は,現場での患者の移送や,病院到着後の救急車からのストレッチャーの積み下ろしの際によく発生した。多変量解析では,救急車からストレッチャーを積み下ろしする際の作業に対する安全確認の不足が転倒に関連していることが明らかになった。結論:救急隊員の身体的負荷を軽減し,救急医療サービスにおける有害事象のリスクを低減するためには,作業手順を見直し,人間工学に基づいて設計された機器を使用する必要がある。