著者
石突 吉持 山内 一征 三浦 義孝
出版者
一般社団法人 日本内分泌学会
雑誌
日本内分泌学会雑誌 (ISSN:00290661)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.91-98, 1989-02-20 (Released:2012-09-24)
参考文献数
14
被引用文献数
4 6 2

日本では, 昆布ヨードの過剰摂取による甲状腺中毒症 (ITT) の報告がない。我々は, 日本人が好んで摂取する昆布の過剰摂取がITTを発症させることを見出した。献立表から算出したヨード量28-140mg/日を毎日摂取し, 1ケ月, 1年を経て甲状腺中毒症を示した42, 59歳の女性例である。両例のT3は高く, T3/T4比, T4/γ-T3比は低く, 無機ヨード値は正常生活者の平均2.05ug/dlの+2SDより高値であった。昆布摂取の禁止後, 1ケ月で中毒症状消失, T4, T3, γ-T3, T4/γ-T3比は正常化した。摂取ヨード源を明らかにするため, 昆布内及び水浸昆布の出汁中ヨード量を測定した。昆布内ヨードの99%が水浸30分, 煮沸15分で水溶液中に出る事を確かめた。以上の結果は, ITTが昆布及び昆布出汁の過剰摂取により発症すること, また, 昆布出汁として1日28mg/日以上のヨード量を毎日摂取すると, 日本人ではITTが引き起こされる可能性があることを示唆している。
著者
山内 一史 望月 悦子 田中 裕二 丸山 良子 石川 稔生
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.7-12, 1983-03

3種のインスタントコーヒー(NESCAFE GOLD BLEND DECAFFEINATED, NESCAFE GOLD BLEND及びMAXIM)を用いて,二重盲検法により,暗算の作業量を指標としてカフェインの効果を調べた。結果は次の通りである。(1) NESCAFE GOLD BLEND DECAFFEINATED飲用群を対照群として,NESCAFE GOLD BLEND飲用群,MAXIM飲用群との間で暗算作業量の2群比較を行うと,いずれもカフェインを充分含有していると考えられる後者の飲用群に,作業量の増加がみられた。(2)被験者は,インスタントコーヒー飲用直後にカフェイン含有の有無を推定することは出来なかったが,カフェイン含有インスタントコーヒー飲用群では,暗算作業の能率の向上を主観的に感じている者の多いことが示された。(3)インスタントコーヒーカップ一杯に通常含まれる量の2倍程度のカフェイン飲用では,脈拍数の変化はみられなかった。以上の実験結果から,NESCAFE GOLD BLEND DECAFFEINATED飲用群を対照とした暗算作業実験の作業量の増加は,カフェインの中枢神経興奮作用によるものと考えられ,この実験がカフェインの作用を客観的定量的に調べる手軽な方法として,今後の研究に役立つものと考えられる。
著者
山内 一史 楊箸 隆哉 木戸 能里子 坂田 和嘉子 石川 稔生
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-7, 1989-03
被引用文献数
1

インスタントコーヒーを用い,暗算作業量を指標としてカフェインの精神運動刺激作用をみる実験を行った。1.暗算作業検査を繰り返し行うと,その作業量の伸びは徐々に鈍ってくるが,カフェイン飲用によってこの傾向は軽減される。この効果は安定しており,少なくとも30分は持続する。2.上記のクレペリンテストにおけるカフェインの効果は,被験者の暗算作業能力や学習能力において,それぞれ高い能力を持つ被験者に,より有効に作用することが示された。これらの結果より,カフェインの中枢作用について考察を行った。
著者
山内 一史 石川 稔生
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.95-100, 1994-03

不確かな状態で被験者自身が行ったカフェインの摂取・非摂取の予想(初期判断)が,カフェインの中枢作用の自覚を反映する実験終了直後のカフェインの薬理効果の判定(最終的な自己判定)に及ぼす影響を調べた。結果は次の通りである。(1)被験者は,カフェイン無しやカフェインの効果無しなどの否定的判断を選択する傾向が強い。(2)カフェイン摂取・非摂取の自主的な予想の結果は,最終的な自己判定と一致する場合が多い。(3)実際のカフェインの摂取条件と異なる予想をした被験者の,薬理効果の自己判定にアンカー効果がみられた。
著者
仲野 宏紀 明石 直子 和田 知未 井出 恭子 井上 敦介 宮部 貴識 山内 一恭
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.261-265, 2021 (Released:2021-09-16)
参考文献数
15

せん妄は終末期がん患者の30〜40%に合併し,死亡直前は患者の90%がせん妄状態にあるとされるが,治療抵抗性で,嚥下困難や静脈確保困難により薬物投与経路が制限される場合も多い.今回,終末期がん患者のせん妄に対しアセナピン舌下錠の使用を経験したので報告する.緩和ケアチームが介入し,アセナピン舌下錠を投与した患者6名を対象とした.アセナピンは,せん妄による不穏に対し,他の抗精神病薬が無効あるいは使用できないために選択され,明らかな有害事象なく一定の鎮静効果を認めた.全例が嚥下あるいは呼吸機能障害のために,制御困難な呼吸困難や窒息感を合併していた.アセナピン舌下錠は,内服や静脈確保困難な終末期せん妄患者において,せん妄による不穏制御の選択肢の一つになりうると考える.
著者
山内 一也 芹川 忠夫 小野寺 節 北本 哲之 立石 潤 品川 森一 宮本 勉
出版者
(財)日本生物科学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

プリオン病について、プリオン蛋白(PrP)遺伝子の面から解析が進み、また動物モデルでも種々の新しい知見が蓄積した。主な成果は以下のとおりである。プリオン病の発病機構についてPrP遺伝子多型性の関与が分子遺伝学的解析およびマウスへの伝播実験から新しい知見が蓄積してきた。とくにコドン219での正常多型と孤発性CJD発病との関連は欧米人にはみられない日本人特有のものであることが明らかにされ、さらにコドン102と219の病態への関与が示された。また遺伝子多型および異常とマウス伝播の関連も整理されてきた。さらに人PrP遺伝子を過剰に発現するトランスジェニックマウスが作製され、正常マウスよりもきわめて高い感受性を示すことが確認された。一方、生化学的解析でCJD患者脳でのガングリオシド組成の特徴が整理された。スクレイピーに関してはPrP^<Sc>のproteinase K抵抗性とマウスでの潜伏期の長さとの関連が解析され、マウス継代によりブリオンの構造が凝集しやすくなることが示唆された。PrP遺伝子の機能に関連しては、プリオンレス神経細胞が樹立され、アポトーシスによる細胞死滅が明らかにされた。プリオン蛋白の構造変換のモデルとしては、大腸菌のRNase HIのプソイドモジュールについて二次構造転移と自己増殖が調べられ、αヘワックスからβシートへの変換が反応温度に依存していることが明らかにされた。海綿状脳症の病態解析のモデルとしては、遺伝性海綿状脳症ラットzitterについて病変形成に関わると考えられるzi遺伝子のコンジェニックラットが作られ、また、病変形成におけるフリーラジカルの関与が示された。ぺットおよび鳥類での自然発生海綿状脳症の検索の結果、老齢のトリで1例アミロイド様物質沈着病変がみいだされたがプリオン抗体とは反応せず、本病の存在の可能性は非常に低いものと推察された。
著者
谷口 直樹 山内 一信 近藤 照夫 横田 充弘 外畑 巌
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.463-468, 1981-11-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
10

aspirin は抗血小板薬として従来より各種血栓症の治療に使用されている. 近年 aspirin の大量投与は prostacyclin 合成を阻害し, 血栓生成に作用すると指摘され, その投与量が再検討されつつある. 本研究の目的は aspirin の種々の単回および連日投与における血小板凝集能抑制効果を検討することより, その至適投与量を決定することである. 対象は虚血性心疾患, 弁膜症および大動脈炎症候群などの心疾患患者71名であり, 健常人13名を対照とした. aspirin 1日80, 160, 330, 660および990mg連日投与群における4μM ADP最大凝集率には有意差は認められず, いずれの群の凝集率も aspirin 投与を受けていない健常群のそれに比して低値を示した. aspirin 160mg以上の単回投与では投与後1時間以内に凝集能抑制効果が出現した. 単回投与の凝集能抑制効果持続日数の平均値は330mg投与では4日, 660mgでは5.5日, 1320mgでは6日であった. aspirin による胃腸障害, 出血等の副作用の出現頻度は dose dependent であることを考慮すると, 本薬を長く投与する必要がある場合, 可及的少量が望ましい. ADP凝集抑制効果の観点からは1日量80mgの連日投与または160mgの隔日投与が至適投与法と考えられた.
著者
佐柳 秀明 原 洋 山内 一明 小倉 良平
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.341-346, 1978 (Released:2010-03-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

ミトコンドリア懸濁液に紫外線を照射すると, 過酸化脂質の増量や呼吸鎖の脱共役が観察されるが, これに抗酸化剤としてのグルタチオンがいかなる影響をあたえるかを検討した。1) 11.2×106erg/cmcm2量の紫外線照射をうけたミトコンドリアは電顕的に明らかに膨潤がみられ, KCl-Tris緩衝液中でも520nmの吸光度の低下をみた。しかし, グルタチオンを添加すると, 膨潤ミトコンドリアの収縮が観察された。2) 11.2×106erg/cmcm2の照射をうけたミトコンドリア懸濁液にグルタチオンを10-5mol加えて室温に10分間放置すると, 照射にもとづくRCR, ADP/Oの減少やstate 4の開放などが回復し, また, 過酸化脂質の減少がみられた。以上の紫外線照射によるモデル実験系より, 細胞内に普遍的に存在するグルタチオンが抗酸化作用を有することを, ミトコンドリアの形態的観察や生化学的検討から確認しえた。
著者
高須 俊明 WAGUR M.A. YASMEEN Akba SHAHANA U.Ka AKRAM D.S. AHKTAR Ahmed 五十嵐 章 上村 清 土井 陸雄 石井 慶蔵 磯村 思无 吉川 泰弘 山内 一也 近藤 喜代太郎 SHAHANA Kazmi U. AKHANI Yasmeen AHMED Akhtar M.A.WAQUR SHAHANA U Ka D.S.AKRAM 橋本 信夫 高島 郁夫 WAQUR Anwar AKBANI Yasme AHMED Akhtar
出版者
日本大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

1 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)多発の動向と原因(1)多発の動向:(i)パキスタンのカラチではなお(1991〜93年)SSPEの多発が続いており、カラチ市民病院では3年間に総計36例(毎年9〜16例)が登録された(人口100万対年間1.3)。そのうち36%は2歳未満罹患麻疹(early measles)から、64%は2歳以上罹患麻疹(late measles)からの発生であった(高須)。麻疹罹患者のSSPEの罹患率は10万対22、early measles 罹患者からは10万対22、late measles罹患者からは10万対21となり、late measles罹患者からの発生が多い傾向が続いている(高須)。(ii)麻疹の発生は減少傾向にあり、1978年には15歳未満人口10万対2888であったのが、1987年には15歳未満人口10対380であった。カラチにおける地域調査では麻疹流行期には麻疹罹患年齢が高年齢側に広がり、非流行期の麻疹では比較的低年齢層に罹患年齢が集中する傾向がみられた(磯村)。麻疹ワクチンの普及は進みつつありカラチの調査地域では15歳未満児で66%、5歳未満児では82%に達しているが、臨床的有効率は比較的低く(76%)、ワクチン接種者で麻疹未罹患である児の中和抗体保有率は75%に留まっていた(磯村)。以上のように多発はなお続いているが、麻疹ワクチンの普及、麻疹発生の減少に伴なってSSPEが果して、いつごろから減少し始めるかに強い関心が持たれる。(2)多発の原因:(i)ケースコントロールスタディでは妊娠母体の異常および分娩時の合併症、新生児期の異常、early measlesおよびSSPE発病前の疾患罹患がリスクファクターと考えられた(近藤)。(ii)カラチの小児の免疫能の検査によって、麻疹ウイルスと他の病原微生物の混合感染の頻度が高く、免疫系の初期発達に対する過度の負担のため麻疹合併症や麻疹ウイルスの持続感染が成立する可能性の高い低生活環境レベルの小児が多く存在すること、および種々の病原微生物との接触機会が少なく、免疫系の発達が不十分なままlate measlesに罹患した場合ある種の接続感染が成立する可能性が考えられる高生活環境レベルの小児が存在することの両方がカラチにおけるSSPE多発の要因である可能性が示唆された(吉川、寺尾)。(iii)麻疹ウイルスの遺伝子変異が持続感染の可能性を高めたり持続感染後のSSPE発病を促進したりする可能性が考えられるが、これらは今後実証されるべき課題として残っている。このように多発の原因には生活環境のレベルが関与している可能性が強くなってきたと考えられるが、なお今後SSPE多発とのつながりを解明して行く必要があり、麻疹ウイルスの遺伝子変異と共に大いに興味が持たれる。(3)その他:(i)インド亜大陸のいくつかの地域(ボンベイ、バンガロール、ベロール、マドラス)では一つの病院で毎年5〜36名のSSPE患者の新患があり、多発を推測させる(高須)。(ii)タイの疾患サーベイランス制度はそれなりに機能しており、特に下のレベルほど統計が生きており、事務的な保健統計よりもはるかによく活用されていることがわかった。パキスタンのシンド州の調査により、疾患サ-ベラインス制度を樹立する可能性について肯定的な結果が得られた(近藤)。2 日本脳炎(JE)様脳炎の病原(i)1992年に採取した急性脳炎髄液からPCR法により24検体中それぞれ8検体、1検体に西ナイルウイルス、JEウイルスの核酸塩基配列を検出した。IgM-ELISAでも1989〜92年に集めた39髄液検体のうち7検体で両ウイルスに対する抗体が陽性であり、9検体は西ナイルウイルスにのみ陽性であった。これらの結果から、カラチでは1989年以後の急性脳炎の病原として西ナイルウイルスが重要な役割を果しているが、JEウイルスも急性脳炎の病原の小部分となっていることが示唆された(五十嵐)。(ii)1990〜92年にカラチとカラチから87kmの所にあるハレジ湖岸の野外で採集したコダタイエカ118、756匹(779プール)からの西ナイルウイルス、JEウイルス分離は陰性であった。このことは急性脳炎の病原となるウイルスがカラチおよび周辺地域に常在はしないことを意味するものと考えられた(上村)。以上のようにカラチのJE様脳炎の病原の本態がようやく明らかになってきたが、今後ウイルス分離によって知見をより確実なものにする必要がある。
著者
竹井 豊 安達 哲浩 長谷川 恵 大松 健太郎 山内 一 神藏 貴久
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.105-109, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
9
被引用文献数
1

目的:初期評価は傷病者の処置などの優先順位を迅速に識別する重要な観察である。本研究では救急救命学科学生が呼吸・脈拍数を適切に識別できるのか確認した。方法:4年生大学救急救命学科学生105名を対象として,正常値(呼吸数12回/ 分,脈拍数80回/ 分)と異常値(呼吸数24回/ 分,脈拍数100回/ 分)に設定したシミュレータに対してモニター類を使用せず,それぞれ「遅い」「正常」「速い」の3分類で評価させた。結果:ほとんどの学生が異常所見を正しく識別できた反面,35%の学生が正常を正常と識別できなかった(呼吸12回/ 分:遅い38人・速い2人,脈拍80回/ 分:遅い8人・速い28人)。正常呼吸を正常と識別できた学生の所要時間は中央値で12秒(25-75% 信頼区間:10-16),できなかった学生は9.5秒(7-14.8)であった(p=0.007)。結論:正常呼吸・脈拍を正常と識別できない学生が35%にも上った。バイタルサイン測定の精度は高められなければならない。
著者
Sinchaisri Tip-Aksorn 永田 伴子 吉川 泰弘 甲斐 知恵子 山内 一也
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.409-416, 1992-06-15 (Released:2008-02-15)
参考文献数
20
被引用文献数
9 12

狂犬病ウイルスCVS株を, 脳内, 眼球内, 鼻腔内, 筋肉内, 皮下それぞれの経路でマウスに接種した後, 中枢神経系におけるウイルスの広がりをアビジン-ビオチン複合体(ABC)法を用いた免疫化学的および病理組織学的手法によって経時的に検索した. 脳内接種と眼球内投与群でのみマウスは致死性感染を生じたので, この2経路において詳細な検討を行った. 脳内接種マウスでは, ウイルス抗原は主に大脳皮質の神経細胞, 錐体細胞, 海馬の顆粒細胞に認められた. 眼球内接種マウスにおいては, 最初に三叉神経節に検出され, 続いて大脳皮質と小脳に広がっていく傾向が観察された. 海馬で眼球内接種の初期では極く僅かの細胞に抗原が認められたのみであった. いずれの経路においても感染マウスの中枢神経系には炎症像もNegri小体も認められなかった. この結果から, 死に至る運動失調や衰弱といった臨床症状は, 炎症反応によるものではなく, ウイルスの神経系機能への直接的な影響に起因することが示唆された. また, 通常の病理組織学的検査や海馬のスタンプ標本の蛍光抗体法では狂犬病の同定ができない症例が存在する可能性が示唆され, 狂犬病を疑われて早期に死亡した患者や屠殺された動物などの検査には, ABC法が有用であると考えられた.
著者
福井 敏樹 山内 一裕 松村 周治 丸山 美江 岡田 紀子 佐々木 良輔
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.578-585, 2020 (Released:2021-03-31)
参考文献数
21

目的:我々はこれまで種々の生活習慣病関連因子と大血管のスティフネス指標である上腕足首間脈波伝播速度(brachial-ankle pulse wave velocity: baPWV)の関連について報告を続けてきた.喫煙は動脈硬化の危険因子であるが,baPWVに対する喫煙の影響についての縦断解析的な報告はまだほとんどみられない.方法:これまでbaPWVを測定した男性7,251名,女性2,707名のなかで,10年間の喫煙状況の推移を把握し得た非喫煙継続者(非喫煙群)および10年間喫煙継続者(喫煙群)である男性419名,女性38名を抽出した.女性は抽出された喫煙者が非常に少なく,今回は男性のみを対象とした.そして,10年の経過中で禁煙を開始した者,禁煙と喫煙を繰り返していた者は除外し,さらにbaPWVに最も影響を与える血圧の影響を除外するために,10年間の経過のなかでの高血圧治療薬服用者を除外した男性274名を今回の解析対象者とした.結果:解析対象者男性274名のうち非喫煙群は181名,喫煙群93名であった.両群の初年度および10年後の年齢,BMI,血圧,生活習慣病関連因子のなかで,有意差を認めたものはHDLコレステロールと中性脂肪のみであった.10年間のbaPWVの変化量は,非喫煙群128cm/sec,非喫煙群200cm/secと喫煙群の方が有意に大きかった.また初年度,3年後,5年後,7年後,10年後のすべての測定結果がそろっている者による解析では,3年後以降の喫煙群においてbaPWV変化量が有意に大きかった.結論:喫煙による大血管の動脈硬化の進展への影響を,経年的なbaPWV変化量で把握できることが初めて示された.
著者
田内 亮吏 川上 紀明 小原 徹哉 齊藤 敏樹 馬場 聡史 森下 和明 山内 一平
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.11, no.11, pp.1285-1290, 2020-11-20 (Released:2020-11-20)
参考文献数
9

側弯症矯正手術後におけるインプラント抜去に関する報告は散見されるが,主にフックを使用した症例の報告であり,近年のペディクルスクリューを主体とした矯正術後のインプラント抜去に関するまとまった報告はない.今回,特発性側弯症に対するインプラント抜去の手術成績およびアライメント変化の評価を行った.2005年から2018年までに抜釘術を施行した126例について手術成績を評価,術後2年以上経過しえた53例について冠状面および矢状面アライメントを評価した.合併症発生率は約11.9%で,1例に術中骨折,3例に術後骨折が発生した.抜釘術後の主カーブCobb角の矯正損失平均2.8度で,胸椎後弯角の増加は平均6.6度であった.頚椎前弯,T1 slope角,SVAも有意に変化していた.10度以上の主カーブCobb角の増加症例が3.8%に対し,胸椎後弯の増加は18.9%と,抜釘術は矢状面アライメントにより影響していたことが示唆された.こうした結果を踏まえ,本人および家族に抜釘術の問題点などを十分に説明した後に抜釘術を考慮する必要がある.