著者
安部 順子 山田 康一 吉井 直子 柴多 渉 大島 一浩 掛屋 弘
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
臨床薬理 (ISSN:03881601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.325-330, 2020-11-30 (Released:2021-01-21)
参考文献数
19

40 歳代の女性.慢性腎臓病(CKD)にて維持血液透析を週 3 回施行中で,内シャント閉塞のため人工血管植え込みあり.今回,同部位の人工血管感染からのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)菌血症,化膿性椎間板炎および両側腸腰筋膿瘍の診断にて入院となり,ダプトマイシン(DAP)1 回 6 mg/kg を週 3 回透析後に開始したが,週末は「サンフォード感染症治療ガイド」に基づき 1.5 倍に増量投与した.約 7 週間後,炎症反応は正常化し,画像所見上膿瘍も消失.DAP の週明けのトラフ濃度(Cmin)は 24.3 μg/mL 以下で,クレアチンキナーゼ(CK)値はほぼ正常範囲内で推移し,その他の副作用もなかった.本症例について,DAP の血中濃度 7 点からのシミュレーションにより,週 3 回の血液透析患者に対する週末の投与方法について薬物動態学的に検討した結果,有効性,安全性,耐性菌誘導の抑制の観点から,週末は 1.5 倍量 1 回の投与方法が最適であることが予測できた.