著者
掛屋 弘
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.11, pp.2268-2274, 2019-11-10 (Released:2020-11-10)
参考文献数
14
被引用文献数
2

ステロイドは,感染免疫を担当する白血球の血行動態やその機能に影響する.特にCD4陽性T細胞を減少させ,細胞内寄生菌や真菌,ウイルスによる日和見感染症を発症させる.また,炎症部位や感染巣への好中球の遊走能や貪食能も低下させるため,細菌感染症の発症にも注意が必要である.そのリスクは,ステロイドの投与量が多いほど,投与期間が長いほど増加するが,リスクを定量的に評価することは難しい.そのため,投与開始後には,慎重に経過を観察し,適切な感染症予防や診断・治療を行うことが患者の予後を左右する.
著者
安部 順子 山田 康一 吉井 直子 柴多 渉 大島 一浩 掛屋 弘
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
臨床薬理 (ISSN:03881601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.325-330, 2020-11-30 (Released:2021-01-21)
参考文献数
19

40 歳代の女性.慢性腎臓病(CKD)にて維持血液透析を週 3 回施行中で,内シャント閉塞のため人工血管植え込みあり.今回,同部位の人工血管感染からのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)菌血症,化膿性椎間板炎および両側腸腰筋膿瘍の診断にて入院となり,ダプトマイシン(DAP)1 回 6 mg/kg を週 3 回透析後に開始したが,週末は「サンフォード感染症治療ガイド」に基づき 1.5 倍に増量投与した.約 7 週間後,炎症反応は正常化し,画像所見上膿瘍も消失.DAP の週明けのトラフ濃度(Cmin)は 24.3 μg/mL 以下で,クレアチンキナーゼ(CK)値はほぼ正常範囲内で推移し,その他の副作用もなかった.本症例について,DAP の血中濃度 7 点からのシミュレーションにより,週 3 回の血液透析患者に対する週末の投与方法について薬物動態学的に検討した結果,有効性,安全性,耐性菌誘導の抑制の観点から,週末は 1.5 倍量 1 回の投与方法が最適であることが予測できた.
著者
掛屋 弘
出版者
一般社団法人 日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:24345229)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.73-76, 2023 (Released:2023-08-31)
参考文献数
26

日本医真菌学会では,これまでに代表的な深在性真菌症の診断・治療ガイドライン〔侵襲性カンジダ症(2013年),侵襲性カンジダ症に対するマネジメントのための臨床実践ガイドライン(2021年に改定),アスペルギルス症(2015年),クリプトコックス症(2019年)〕を発刊してきた.今回,澁谷和俊理事長を委員長に,発症頻度はまれであるが臨床的に重要な真菌症であるムーコル症,トリコスポロン症,フサリウム症,スケドスポリウム症,マラセジア症,および輸入真菌症(ヒストプラスマ症,コクシジオイデス症,パラコクシジオイデス症,ブラストミセス症,マルネッフェイ型ペニシリウム症),さらに注目されているCandida auris等を対象として,それらの眼病変や病理像の解説を加えた「希少深在性真菌症の診断・治療ガイドライン」を作成中である.また今回,設定した複数のクリニカルクエスチョンに対して有志によるワーキンググループがシステマティック・レビューを行い,新たなエビデンスの創出にも挑戦している.
著者
大島 一浩 溝端 康光 掛屋 弘 桑原 学 井本 和紀 山入 和志 柴多 渉 山田 康一 切通 絢子 加賀 慎一郎 西村 哲郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.600-603, 2020

<p>A 38-year-old man diagnosed as having COVID-19 pneumonia was transferred to our hospital from another hospital. The patient had received favipiravir at the previous hospital, and as he still had severe respiratory dysfunction, we added hydroxychloroquine and azithromycin to the treatment regimen for COVID-19 pneumonia at our hospital. The respiratory status improved gradually with the treatment and the patient began to be weaned from mechanical ventilation. However, on the 5<sup>th </sup>hospital day, the patient developed ventricular fibrillation (Vf) and cardiac arrest, with return of spontaneous circulation (ROSC) 2 minutes after the start of cardiopulmonary resuscitation. An electrocardiogram recorded after the ROSC showed not QT interval prolongation, but first-degree atrioventricular block. Nevertheless, because both hydroxychloroquine and azithromycin could cause QT interval prolongation, both were discontinued and the Vf did not recur. The patient was transferred to another hospital after extubation and had no neurological deficit. Herein, we report a patient with COVID-19 pneumonia who developed Vf while being treated with hydroxychloroquine,azithromycin and favipiravir.</p>
著者
掛屋 弘 宮崎 義継 渋谷 和俊 河野 茂
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

主に血液疾患に発症するムーコル症の早期診断法開発を目的に原因真菌(Rhizopus oryzae)からシグナルシークエンストラップ法にて得られた未知の候補抗原A(23kDa)を検出するELISAキットの測定条件の最適化後、動物実験モデル感染血清中の抗原Aを測定した。その結果、非感染マウスに比較して感染マウス血清中には抗原Aの抗原価が高い傾向が認められた。