著者
安野 陽子
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.23-35, 1992-06-29
被引用文献数
3

今日, 口臭は関心の高い問題となりつつあり, 口臭の予防への関心は歯槽膿漏, 虫歯についで多いとの報告がある。しかし, 一般成人における口臭の有病率については質問紙法や外来患者についての報告しかなく, 未だに明らかにされているとはいえない。そこで, 宮城県一農村地区の成人健診受診者462名より, 無作為抽出した153名(男性75名, 女性78名, 平均年齢50.3歳)を対象に, 口臭の有病調査を行った。先ず, 不快な口のニオイを口臭とみなし, その強度を2名の判定者が評価し, また, いくつかの判別可能な口のニオイの質についても記録した。あわせて, 口臭の自覚等に関する質問紙調査を実施し, 官能評価との関係について検討を加えた。その結果, 2名の判定者による口臭の有無判定が一致したのは138例で, そのうち口臭ありと判定されたのは46例, 口臭なしと判定されたのは92例であった。2者により口臭ありと判定された者を口臭有病者とみなすと, その率は対象者の30.1%であった。口のニオイの質については, なんらかのニオイの判別されたのが126例あり, また, 判別された口のニオイの総数は195であった。口臭が明らかにあると判定された9例では必ず硫化物臭が認められ, 硫化物を口臭の指標として用いることの有用性を示していた。質問紙による口臭の自覚等は実際の口臭判定結果と対応しておらず, 口臭の有病調査には直接口臭を判定することが不可欠と考えた。