著者
高橋 紀子 島田 義弘
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.19-27, 1989-06-30
被引用文献数
1

年一回の視診型定期歯科検診を実施している某高専校において, 年齢15歳から21歳の学生664名(男子577名, 女子87名)を対象に舌疾患の有病状況について調査し, 以下の成績を得た。同一年齢の男女間の有病率は, 19歳群の男女間を除く他の年齢群では性差を認めなかった。男女合計の年齢群別有病状況は, 19歳群が最も高く56.1%, 20歳が最も低く40.0%であり, この範囲の高低はあるが, 各年齢群間には統計学的有意差を認めなかった。被検者全体における有病者は331名, 49.8%であった。検出された舌疾患は9種類で, それぞれの被検者全体に対して占める割合は, 舌苔32.4%, 毛舌症19.4%, 地図状舌4.2%, 溝状舌2.6%, 舌強直症2.3%, 圧痕舌1.7%, 赤色平滑舌0.6%, 舌裂と正中菱形舌炎がそれぞれ0.2%であった。なお, 舌苔と白毛舌, 地図状舌と溝状舌等のように, 二つの別な疾患が併存する例も多く, 89例に見られた。これらの舌疾患は痛み等の自覚症状に乏しく, 治療処置を必要としないため, 定期歯科検診の際には一般に軽視されがちであるが, 今回の調査では9種類の舌疾患を検出し, 従来の類似した年齢集団を対象とした調査成績と比較して, 舌苔, 毛舌症, 地図状舌はかなり高い有病率であった。
著者
福田 雅幸 高橋 哲 高野 裕史 永井 宏和 山崎 嘉幸
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.52-55, 1998-06

野生動物の襲撃は, 時として致命的である。われわれは, 致命的な熊の襲撃を受けた患者の治療を経験したので報告する。患者は, 69歳, 男1生で野生の熊に遭遇し, 刺創および咬創を受け, 当院救急部に担送された。直ちに, 処置が施され, 一命をとりとめることができた。現在, 最終の手術から, 1年6か月が経過したが, 経過は良好である。
著者
船津 三奈代
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.T31-T40, 2005-12-27

成長ホルモン分泌不全性低身長症(growth hormone deficiency; GHD)は,成長ホルモン(GH)の分泌不全により同性,同年齢の者と比較し,身長もしくは身長増加量が著しく低いものと定義されている疾患であり,GHの補充療法が第一選択として行われる。しかし,GHDに対するGH投与による顎顔面部への影響についての報告は少数例によるものがほとんどでいまだ不明な点も多い。そこで,GHD患者をGH未投与群,短期投与群,長期投与群の3群に分け,GH投与期間による顎顔面部の成長に対する影響について検討を行った。GHDと診断された57名(男子33名,女子24名)について側面頭部X線規格写真の透写図を作成し,顎顔面各部の計測を行った。各計測値について,標準値に対するSDスコアを求め,統計学的手法を用いて比較検討を行った。未投与群は標準値に比べ,前頭蓋底長,全顔面高,上顎骨前後径,下顎骨全体長,下顎骨体長,下顎枝高はいずれも-0.15〜0.86SDであった。長期投与群は未投与群に比べ,上顔面高,上顎骨前後径,下顎枝高が有意に大きかった。短期投与群では未投与群との間に有意差は認められなかった。また,前頭蓋底長,全顔面高,下顔面高,下顎全体長,下顎骨体長については,各群間に有意差は認められなかった。GHDに対するGH長期投与によって,身長のみならず顎顔面部,特に上顎骨,下顎枝の成長を加速させることが明らかとなった。このことは,GHによる顎骨成長コントロールの可能性を示唆するものと考えられる。
著者
島内 英俊
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.91-107, 2000-12

近年の細胞生物学ならびに分子生物学の進歩により, 様々な細菌あるいはウイルス感染症に対して新たなコンセプトに基づいたワクチン療法が開発されてきた。これらの次世代型のワクチンとしては, ペプチドワクチン, 粘膜ワクチン, 抗イディオタイプワクチン, DNAワクチン, 食べるワクチン(edible vaccine)および受動免疫が含まれる。歯周治療あるいは予防のための新たなワクチン療法開発の可能性ならびにその戦略について考察を行った。歯周病は口腔内において最も広くみられる細菌感染症であるが, 最近の研究報告によれば冠状動脈血管血栓症や糖尿病などの様々な全身疾患のリスク因子であることが示唆されている。これらの結果は口腔ケアの重要性を強調するものであり, ワクチン開発の口腔感染症予防に果たす意義を示すものである。数多くの研究結果から, Actinobacillus actinmycetemcomitansとPorhyromonas gingivalisが主たる歯周病原性細菌と考えられており, これらの細菌由来の菌体表層抗原が歯周病ワクチンの免疫原となりうる。われわれはP.gingivalis線毛をアジュバントとともにマウスに経口投与することにより, 血中のみならず唾液中に高レベルのIgGならびにIgA抗体産生を誘導することをすでに明らかにしている。また線毛サブユニットの部分ペプチドはin vivoにおいて防御反応を誘導することから, 線毛あるいはその部分ペプチドを用いた粘膜ワクチンが歯周病ワクチンとして有用である可能性が示唆される。遺伝子工学を応用したDNAワクチンや受動免疫法も歯周病ワクチンのストラテジーとして候補となりうることも示されている。近年の分子生物工学の発達は, 歯周病巣局所における宿主一細菌相互作用の解明を急速に進めてきたが, 我々もP.gingivalis由来の線毛やLPSが樹状細胞の活性化を介して病巣局所における免疫応答を調節している可能性を示すデータを得ている。しかしながら, 歯周病原性細菌に対するワクチン療法を含め, 歯周病を駆逐していくための新たな治療法の開発にはさらなる研究が必要と考えられる。
著者
水田 文子 猪狩 俊郎 安田 真 水田 健太郎 城戸 幹太 下田 元 佐藤 実 高橋 雅彦
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.24-30, 2005-06-30

歯科診療室においては, 患者が厚着していることが多いため, 裸腕に代えて脱衣せずに利用できる血圧測定方法がないか, 健康成人40人に対し, オシロメトリック式自動血圧計を用いて検討した。着衣の状態や測定部位は, 上腕裸腕, ワイシャツ, 薄手のセーター, 薄手のセーターを捲り上げ, 厚手のセーター, 厚手のセーターを捲り上げ, ジャケット, 裸腕前腕, 下腿とした。その結果, ワイシャツやワイシャツに2mm程度のセーターの重ね着程度ならば, 裸腕の血圧測定に代えて利用できることが明かとなった。着衣での頻回あるいは長時間におよぶ血圧測定は望ましくはないが, 健康成人で日常の歯科診療室における血圧測定には十分に利用できるものと考えられた。一般に着衣の上からの測定は駆血に要する圧が高めとなるので測定値が高く出, セーターなどを捲りあげての測定では低くなると言われているが, オシロメトリックメトリック方による測定では必ずしもそうとは限らなかった。
著者
佐々木 元樹 越後 成志 松田 耕策 安藤 良晴 田原 孝之 斎藤 哲夫 森 士朗 飯塚 芳夫 山口 泰 手島 貞一
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.123-129, 1985-12-31
被引用文献数
1

口腔外科領域の重篤な感染症は, 抗生物質の進歩により減少の傾向にあるが, 今回, 口腔底蜂?織炎より頸部にまで炎症の波及した重篤な1例を経験したので報告する。症例は, 25歳男性, 昭和58年9月15日頃より区部歯肉に落痛, 腫脹を自覚し, 9月21日某歯科にて厄を抜歯されたが, 嚥下障害強度なため, 処方された抗生物質を服用できず, また連休にかかったため, 歯科医を転々と受診した後, 9月25日当科を受診した。左側口腔底蜂軍織炎の診断のともに, 左側顎下部および口腔底に切開を加えたが排膿はなく, また, 抗生物質の点滴静注にもかかわらず, 炎症が右側まで拡大したため, 願下部並びに右側の顎下部, 口腔底にも切開を加えたが, 38〜39℃の弛張熱が続いたため, 敗血症を疑い血液培養を行なったが陰性だった。症状が改善しないため右側頸動脈三角への炎症の拡大を疑い, 胸鎖乳突筋前縁部に切開を加えたところ排膿および同部結合組織の壊死を認め, 切開後は次第に症状は緩解した。本例が重篤な症状を呈するに至った原因として, 炎症の急性期における抜歯と, 抜歯後, 処方された抗生物質を服用できなかったこと, 感受性試験で有効と思われた抗生物質が著効を示さなかったことなどが考えられるが, このような重篤な感染症では抗生物質にのみ頼ることなく, 適確な切開排膿の処置を施すことが重要と思われた。
著者
長根 篤子 畠山 寛彰 吉田 宏 丸茂 町子 三条 大助
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.125-131, 1986-12-01

顎顔面口腔領域における電撃痛・知覚麻痺・灼熱痛・穿刺痛・味覚異常・嚥下痛・痙攣など(以下知覚異常として記す)の訴えは, 日常の臨床において時折遭遇するものである。しかし, それらの病因は種々で診断が困難なことも少なくない。そこで, 今回, 我々は, 知覚異常の診断に関する基礎的データを得るために, 過去4年間に東北大学歯学部附属病院を受診した新来患者の中で上記の知覚異常を主訴とした患者111例につき, 主訴と病因との関連性を検討した。その結果, 111例中女性78例(70.3%)男性33例(29.7%)で, 電撃痛, 知覚麻痺各々32例(28.8%), 灼熱痛21例(18.9%), 以下穿刺痛, 味覚異常, 嚥下痛, 痙攣量の順であった。年齢別では50歳代が31例(27.9%), 60歳代が22例(19,8%), 40歳代が18例(16.2%)であり, 特に40〜60歳代の女性が54例(48.6%)であった。来院までの罹病期間は1年以上が47例で最も多く, 次いで1ヵ月以内が24例であった。部位別分類では味覚異常を除く各主訴とも複数の部位に症状が発現し, 全体では舌部, 頬部, 眼窩部, 口唇部に多発した。また111例中59例には心疾患, 胃腸病, 高血圧, 肝疾患, 貧血などの全身疾患が認められた。臨床診断は実に様々なものがあり, しかも不明の症例が21例(18.9%)あったことから, 器質的な異常のみならず心因的背景がある場合も考えられ, 診断の困難性が伺われた。
著者
舟山 眞人 山田 文夫 Masati Funayama Fumio Yamada
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.13-17, 1987-06-01

当教室において身元不明として剖検された死体の中から, 歯科所見を基に身元が確認された最近の3事例を報告する。第1例は220mの海底から引き上げられた男性死体で, 付近海域に沈没した海洋調査船の乗組員の可能性があった。死体上顎の一部に歯列不正(転位歯)がみられ, これがこの調査船の一人の乗組員の顔写真にも写っていた。更にパノラマ写真などとも照らし合わせた結果, 身元が確認された。第2例は山の沢で発見された若い女性の死体で, 3年間手懸りが掴めなかった。しかし, 県内に住む人からの娘の捜索の届出が発端となり, この娘が受診したことのある2歯科医の診療録と剖検時の観察所見とを照合したところほぼ一致したため, この人の娘であると確認された。第3例は外国人専用旅館の焼け跡から発見された焼死体で, 歯科所見と歯型の石膏模型を大使館経由で疑いが持たれた人の国に送ったところ, その人を治療した歯科医によって一致していることが確認された。
著者
笹野高嗣 庄司 憲明 栗和田 しづ子 三條 大助 Takashi Sasano Noriaki Shoji Shizuko Kuriwada Daisuke Sanjo
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.46-52, 1995-06
被引用文献数
1

微小循環系の組織血流の測定にレーザードプラー血流計が広く応用されている。この方法は, 水素ガスクリアランス法など従来の血流測定法とは異なるいくつかの利点を有している。しかしながら, この血流測定法は血流の絶対値を表示しない。そこで本研究では, レーザードプラー血流計を臨床における病態診断システムに応用するための基礎的実験として, 歯肉血流の測定値を水素ガスクリアランス法と比較し, レーザードプラー血流計の表示値の意義について検討した。実験にはネコ4匹を用い, 下顎歯肉の同一部位の血流をレーザードプラー血流計および水素ガスクリアランス法で測定した。歯肉血流を人為的に変化させる方法としては頚部交感神経の電気刺激を用いた。この結果, レーザードプラー血流計では複雑なプリパレーションを行うことなく, 非観血的に歯肉の血流を持続的にリアルタイムでモニターできたのに対し, 水素ガスクリアランス法では, 観血的で, 血流の測定は断続的であり, 瞬時の血流変化には対応できなかった。異なる個体間で測定された測定値については, レーザードプラー血流計の値(mV)と水素ガスクリアランス法の値(ml/100g/min)との間に相関は得られなかった。一方, 各々の血流測定法で算出された血流の変化率については, 両者の間に相関が得られた。以上の結果, レーザードプラー血流計の測定値を絶対値に変換することは困難であるが, 血流の変化率は評価できることが確認された。
著者
室野井基 大家 清 清水 良央 Motoo Muronoi Kiyoshi Ooya Yoshinaka Shimizu
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.157-161, 1995-12
被引用文献数
2

歯に関連する諸構成物の不調和は, 身体諸部位の調和をくずすといわれている。症例は, 35歳の男性で, 腰痛とよく噛めないとの主訴だった。臼歯部の不良補綴物で咬合の乱れが生じていた。直立姿勢で右肩が低かった。メタル・オクルーザル・スプリントを下顎臼歯に施行し, またマイオモニターと鍼治療が疼痛緩和に加療された。3週間後に上記の障害は除去された。本症例は, 咬合の調和が歯の構成物の十分な機能を発揮するのと同時に良い姿勢を保つのに必要であることを示唆している。
著者
枡 武彦 安藤 良晴 飯塚 ふみ子 飯塚 芳夫 手島 貞一
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.49-52, 1984-08-15

ヤマカガシ咬傷後, Defibrination syndromeからDIC症候群に移行して重篤な出血傾向に腎不全を合併し, 交換輸血と血液透析を施行して救命された。受傷後2ヵ月目に当科を受診したが, 両側下顎骨骨体部下縁に著明な骨添加による膨隆を認めた。これはヤマカガシ咬傷後の歯肉出血にともなって下顎骨骨体部骨膜下に形成された血腫が器質化後骨添加によって生じたものであると考えられた。3年4ヵ月後の現在, 添加骨は吸収されてきており, 皮質骨は平坦になってきている。
著者
山田 和祐 角田 哲 篠木 邦彦 梅津 康生 遠藤 義隆 阿部 洋子 川村 仁 丸茂 一郎 藤田 靖 林 進武 猪狩 俊郎 飯塚 芳夫 越後 成志
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.133-144, 1983-12-25
被引用文献数
1

昭和50年11月1日から, 昭和58年8月31日までの最近8年間に, 本学第一口腔外科を受診した歯科治療時の偶発症患者460名について, 臨床的検討を行なった。偶発症の症例は, 口腔外科治療時の偶発症, 保存治療時の偶発症に分類し, さらに症例を細別して検討を行なった。偶発症患者460名のうち, 男性は207名で, 女性は253名であった。偶発症別で最も多いのは, 歯根破折による抜歯中断で, 偶発症患者総数の28.5%であった。年齢別では, 20代, 30代に集中してみられ, 両者あわせて266名で, 偶発症患者総数の57,8%であった。発症より当科来院までの期間別では, 当日より3日目までの来院が170名で, 偶発症患者総数の40.0%であった。
著者
安野 陽子
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.23-35, 1992-06-29
被引用文献数
3

今日, 口臭は関心の高い問題となりつつあり, 口臭の予防への関心は歯槽膿漏, 虫歯についで多いとの報告がある。しかし, 一般成人における口臭の有病率については質問紙法や外来患者についての報告しかなく, 未だに明らかにされているとはいえない。そこで, 宮城県一農村地区の成人健診受診者462名より, 無作為抽出した153名(男性75名, 女性78名, 平均年齢50.3歳)を対象に, 口臭の有病調査を行った。先ず, 不快な口のニオイを口臭とみなし, その強度を2名の判定者が評価し, また, いくつかの判別可能な口のニオイの質についても記録した。あわせて, 口臭の自覚等に関する質問紙調査を実施し, 官能評価との関係について検討を加えた。その結果, 2名の判定者による口臭の有無判定が一致したのは138例で, そのうち口臭ありと判定されたのは46例, 口臭なしと判定されたのは92例であった。2者により口臭ありと判定された者を口臭有病者とみなすと, その率は対象者の30.1%であった。口のニオイの質については, なんらかのニオイの判別されたのが126例あり, また, 判別された口のニオイの総数は195であった。口臭が明らかにあると判定された9例では必ず硫化物臭が認められ, 硫化物を口臭の指標として用いることの有用性を示していた。質問紙による口臭の自覚等は実際の口臭判定結果と対応しておらず, 口臭の有病調査には直接口臭を判定することが不可欠と考えた。
著者
幸地 省子 手島 貞一
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.70-75, 1997-06
被引用文献数
4

宮城県内の111産科医療施設を対象として, 1994年11月1日から1995年10月31日までの1年間に出生した口唇裂口蓋裂等顎顔面奇形が認められた児の発生数と, その出生状況について調査した。日本人出生数14,707児中26児に口唇裂口蓋裂がみられた。口唇裂口蓋裂の発生率は, 0.177%であった。性別裂型別発生率は, 男児で口唇裂が0.081%, 口唇口蓋裂と口蓋裂がそれぞれ0,067%, 女児で口唇裂が0.055%, 口唇口蓋裂と口蓋裂がそれぞれ0.041%であった。他の顎顔面奇形の発生はなかった。合併症が認められたのは6児, 23.1%であった。在胎週齢, 出生体重等出生状況においては, 母集団と差がみられなかった。
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.55-57, 2011-12-28 (Released:2012-08-02)
著者
高橋 善男 川村 仁 林 進武
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.43-52, 1983-09-15

昭和51年から昭和56年までの6年間に, Obwegeser-Dal Pont法を適用した骨格型不正咬合者39症例を経験した。症例は男性16名, 女性23名で, やや女性が多かった。手術対象者は骨格型下顎前突症が大半をしめていた。手術時年齢は16歳から28歳までで, 男女とも20歳前後に集中していた。手術時間は120分から290分であり, 平均は209分であった。出血量は105mlから1,961mlまでであり, 平均は549mlであった。女性では比較的骨が柔らかく手術操作がやりやすい印象があり, 手術時間は短く, 出血量も少なかった。手術による下顎歯列弓の移動は, 対象症例が骨格型下顎前突症が主であったことから, 後方に移動するものが殆どであった。移動範囲は後方へ0mmから19mmであり, なかでも, 8mmから10mm程度後方移動するものが多かった。なお, 前方への移動も1例にみられ, それはPogonionを前方へ15mm移動した症例であった。その前方移動例を除いた術前のoverjetは-10.0mmから3.0mmに分布し, -5.0mm付近への集中がみられた。術後矯正終了時のoverjetは1.5mmから4.5mmの範囲にあり, 3.0mm前後に集中していた。術前のoverbiteは-6.0mmから9.0mmに分布し, 0から3.0mmのものが多かった。術後矯正終了時のoverbiteは0.5mmから4.0mmとなっていた。以上のごとく, 本手術法を適用した骨格型不正咬合者の術後矯正終了時のoverjet, overbiteは良好な状態を示していた。
著者
高橋 哲 永井 宏和 大谷 真紀
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.149-158, 1999-12
被引用文献数
3

MR画像で認められるjoint effusionの生物学的意義を検討するため, 顎関節症患者の関節滑液中の蛋白濃度を, Joint effusionの有無で比較検討した。対象としては, パンピングマニピュレーションを行った顎関節症患者のうち, MRIを撮像し得た27症例38関節である。コントロールとして, 顎関節に症状のない健常人女性, 5例6関節を用いた。Joint effusion像は矢状断でT2強調画像にて高信号域を示し, プロトン強調画像にてその信号が減弱するものとし, 0点から4点までの5段階(Effusionスコア)に分類し, 3点, 4点のものをjoint effusion有りとした。顎関節滑液は希釈法により採取し, 滑液中の蛋白濃度をBCA assayにて測定し, joint effusionの有無, 臨床症状のうち, 関節痛の有無とにおいて比較検討して, 以下の結果を得た。1.コントロール群では, いずれもjointe ffusionは認められず, その蛋白濃度は(中央値 : 0.73mg/ml), 患者群の中で, jointe effusionと関節痛いずれも認めない関節(中央値 : 0.67mg/ml)と同程度であった。2.jointe ffusionは患者群の全関節の65.8%に認められ, 関節痛の有無との比較では, 関節痛のある関節でjoint effusionの出現頻度が高く(p<<0.05), 関節痛の有る関節の蛋白濃度(中央値 : 1.92mg/ml)は関節痛の無い関節(中央値 : 0.86mg/ml)に比較して高値を示した(p<0.05)。3.jointe ffusionの程度(Effusionスコア)と蛋白濃度は正の相関(7=0.663,p=0.025)を示し, joint effusionの有る関節(1.87mg/ml)は, jointe ffusionの無い関節(中央値=1.14mg/ml)に比較して有意に高値を示した(図2)。以上の結果から, MRIで認められるjointe ffusionは, 関節痛のある関節に高頻度に認められ, 関節痛やeffusionの認められる関節では蛋白濃度が高い関節が多く, この蛋白濃度の上昇は, 滑膜炎などの炎症性反応の結果として, 血清由来の蛋白などの分子が関節液中に滲出したもの, あるいは下顎頭の負荷により, 軟骨などの関節構成組織が融解した物質である可能性が示唆された。