著者
高橋 紀子 島田 義弘
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.19-27, 1989-06-30
被引用文献数
1

年一回の視診型定期歯科検診を実施している某高専校において, 年齢15歳から21歳の学生664名(男子577名, 女子87名)を対象に舌疾患の有病状況について調査し, 以下の成績を得た。同一年齢の男女間の有病率は, 19歳群の男女間を除く他の年齢群では性差を認めなかった。男女合計の年齢群別有病状況は, 19歳群が最も高く56.1%, 20歳が最も低く40.0%であり, この範囲の高低はあるが, 各年齢群間には統計学的有意差を認めなかった。被検者全体における有病者は331名, 49.8%であった。検出された舌疾患は9種類で, それぞれの被検者全体に対して占める割合は, 舌苔32.4%, 毛舌症19.4%, 地図状舌4.2%, 溝状舌2.6%, 舌強直症2.3%, 圧痕舌1.7%, 赤色平滑舌0.6%, 舌裂と正中菱形舌炎がそれぞれ0.2%であった。なお, 舌苔と白毛舌, 地図状舌と溝状舌等のように, 二つの別な疾患が併存する例も多く, 89例に見られた。これらの舌疾患は痛み等の自覚症状に乏しく, 治療処置を必要としないため, 定期歯科検診の際には一般に軽視されがちであるが, 今回の調査では9種類の舌疾患を検出し, 従来の類似した年齢集団を対象とした調査成績と比較して, 舌苔, 毛舌症, 地図状舌はかなり高い有病率であった。
著者
福田 雅幸 高橋 哲 高野 裕史 永井 宏和 山崎 嘉幸
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.52-55, 1998-06

野生動物の襲撃は, 時として致命的である。われわれは, 致命的な熊の襲撃を受けた患者の治療を経験したので報告する。患者は, 69歳, 男1生で野生の熊に遭遇し, 刺創および咬創を受け, 当院救急部に担送された。直ちに, 処置が施され, 一命をとりとめることができた。現在, 最終の手術から, 1年6か月が経過したが, 経過は良好である。
著者
高橋 信博 Nobuhiro Takahashi
雑誌
東北大学歯学雑誌 = Tohoku University dental journal (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.18-32, 2002-06-01

歯科の二大細菌性疾患, う蝕と歯周病の発症と進行に関わる最大の病原因子は歯垢である。とりわけ, う蝕原性細菌としてのミュータンス・レンサ球菌, 歯周病原性細菌としてのPorphyromonas gingivalisについては多くの研究がなされてきた。しかし, 歯垢中のこれらの病原性細菌の割合は高くはなく, むしろ, 病状の進行とともに歯垢内環境が変化し, その結果として徐々に病原1生細菌が増加することを示唆している。筆者らは, 歯垢を歯垢細菌と歯垢環境が相互に影響し合う関係の総体(歯垢生態系dental pIaque ecosystem)として捉え, 歯垢生態系を構成する細菌の生態, とくにその代謝活性とそれに伴う病原性の発現について生化学的に検討してきた。その結果, 歯肉縁上歯垢生態系では糖の供給と糖代謝に伴う歯垢環境の嫌気的酸性化が, 歯肉縁下歯垢生態系では歯肉溝浸出液からのタンパク質・ペプチド・アミノ酸の供給とその代謝に伴う歯垢環境の嫌気的中性化が, それぞれの歯垢生態系を特徴づける因子であると考えられた。さらにこれら生態系に生息する細菌の代謝活性が, それぞれの歯垢生態系のう蝕病原性と歯周病原性の発現に直接関係していることが明らかになった。我々は無菌動物にはなれず「如何にパラサイトと共存してゆくか」が重要である。口腔からはじまる消化管細菌生態系をコントロールするためには, その環境と細菌叢を構成する個々の細菌の生態, すなわち生態系の理解が不可欠である。
著者
菅原 準二 木村 和男 曽矢 猛美 三谷 英夫 川村 仁 茂木 克俊 junji Sugawara Kazuo Kimura Takemi Soya Hideo Mitani Hiroshi Kawamura Katsutoshi Motegi
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 = Tohoku University dental journal (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.7-22, 1990-07-10
被引用文献数
5

上顎骨にまで変形が及び咬合平面の左右傾斜をきたしている重度の顔面非対称症に対しては, Le Fort I型骨切り術と下顎枝骨切り術を併用した上下顎同時移動術(Two-Jaw Surgery)が有効かつ確実な治療法である。本稿においては, 我々が日常的に行っている顔面非対称症の臨床的評価方法と, Two-Jaw Surgeryの適応症について述べるとともに, 具体例としてTwo-Jaw Surgeryを適用した3治験例についてそれらの診断および治療内容を報告する。第1症例は, 15歳11ヵ月の女子で, 咬合平面の左下がり傾斜と軽度のClassIII顎関係を有する顔面非対称症例である。第2症例は, 23歳3ヵ月の女性で, 咬合平面の右上がり傾斜と軽度のClassIII顎関係を有する顔面非対称症例である。第3症例は, 16歳6ヵ月の女子で, 咬合平面の左上がり傾斜と過大な下顎骨によるClassIII顎関係を有する顔面非対称症例である。顔面非対称の臨床的評価方法においては, 1)顔面正中線の設定, 2)歯列正中線の偏位, 3)根尖歯槽部正中線の偏位, 4)オトガイ正中線の偏位, 5)上顎咬合平面の左右傾斜度, 6)Smiling Lineにおける歯冠露出度などが重要な検討項目である。我々は, このような評価結果に基づいて, Two-Jaw Surgeryの適応症を3つのカテゴリーに大別しているが, 今回報告する3症例は, いずれも上顎咬合平面の左右傾斜が著しく, 矯正治療単独による修正が極めて困難な部類に属する患者である。
著者
船津 三奈代
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.T31-T40, 2005-12-27

成長ホルモン分泌不全性低身長症(growth hormone deficiency; GHD)は,成長ホルモン(GH)の分泌不全により同性,同年齢の者と比較し,身長もしくは身長増加量が著しく低いものと定義されている疾患であり,GHの補充療法が第一選択として行われる。しかし,GHDに対するGH投与による顎顔面部への影響についての報告は少数例によるものがほとんどでいまだ不明な点も多い。そこで,GHD患者をGH未投与群,短期投与群,長期投与群の3群に分け,GH投与期間による顎顔面部の成長に対する影響について検討を行った。GHDと診断された57名(男子33名,女子24名)について側面頭部X線規格写真の透写図を作成し,顎顔面各部の計測を行った。各計測値について,標準値に対するSDスコアを求め,統計学的手法を用いて比較検討を行った。未投与群は標準値に比べ,前頭蓋底長,全顔面高,上顎骨前後径,下顎骨全体長,下顎骨体長,下顎枝高はいずれも-0.15〜0.86SDであった。長期投与群は未投与群に比べ,上顔面高,上顎骨前後径,下顎枝高が有意に大きかった。短期投与群では未投与群との間に有意差は認められなかった。また,前頭蓋底長,全顔面高,下顔面高,下顎全体長,下顎骨体長については,各群間に有意差は認められなかった。GHDに対するGH長期投与によって,身長のみならず顎顔面部,特に上顎骨,下顎枝の成長を加速させることが明らかとなった。このことは,GHによる顎骨成長コントロールの可能性を示唆するものと考えられる。
著者
中村 雅典 Masanori Nakamura
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 = Tohoku University dental journal (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.9-17, 2002-06-01

破骨細胞が骨破壊の主たる細胞であることはいうまでもないことであるが, 他の細胞による骨破壊が完全に否定されているわけではない。ビスフォスフォネート(BP)は破骨細胞による骨吸収・破壊を特異的に抑制する薬剤である。そこで, 我々はBPを投与したコラーゲン誘導関節炎(CIA)マウス, 並びに重症慢性リウマチ性関節炎(RA)患者の骨破壊機構についてFlow Cytometryと形態学的に解析を行った。CIAマウスでは, BP投与・非投与に関わらず著しい骨破壊が認められた。非投与群における骨破壊部位には活性化した破骨細胞はなく, 多くの好中球が集積し, 一部はruptureし, この部位の骨基質からコラーゲン線維が消失していた。RA患者腸骨骨髄では, 著しい顆粒球造血, 特に未熟好中球の増加が認められた。この未熟好中球は骨梁表面に集積しており, CIA同様に一部はruptureし, 骨基質からコラーゲン線維が消失していた。以上の結果から, 関節炎の骨破壊時には好中球造血の異常な亢進が起こり, この好中球による骨破壊が強く示唆される。近年, また, 関節炎だけでなく, 歯周疾患のような骨破壊を主体とする他の疾患(歯周疾患など)においても同様な造血異常が報告されてきており, 造血という全身に立脚した骨破壊性疾患の解析が期待される。Osteoclasts are the main cells responsible for bone destruction and resorption However, whether cells other than osteoclasts destruct bone remains controversial.Bisphosphonates(BPs)are specific inhibitors of bone resorption by osteoclasts.We examined the effects of BPs on bone destruction in mice with collagen-induoed arthritis(CIA).Severe bone destruction was confirmed in BP-treated CIA mice, indicating bone destruction by cells other than osteoclasts.Histological and flow cytometrical studies showed Increased granulopoiesis and bone destruction by neutrophils.Similar results were obtained in studies of patients with severe rheumatoid arthritis. In this paper, we describe the process of and data derived from our experimental strategy and review possible mechanisms of bone destruction by neutrophils.
著者
島内 英俊
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.91-107, 2000-12

近年の細胞生物学ならびに分子生物学の進歩により, 様々な細菌あるいはウイルス感染症に対して新たなコンセプトに基づいたワクチン療法が開発されてきた。これらの次世代型のワクチンとしては, ペプチドワクチン, 粘膜ワクチン, 抗イディオタイプワクチン, DNAワクチン, 食べるワクチン(edible vaccine)および受動免疫が含まれる。歯周治療あるいは予防のための新たなワクチン療法開発の可能性ならびにその戦略について考察を行った。歯周病は口腔内において最も広くみられる細菌感染症であるが, 最近の研究報告によれば冠状動脈血管血栓症や糖尿病などの様々な全身疾患のリスク因子であることが示唆されている。これらの結果は口腔ケアの重要性を強調するものであり, ワクチン開発の口腔感染症予防に果たす意義を示すものである。数多くの研究結果から, Actinobacillus actinmycetemcomitansとPorhyromonas gingivalisが主たる歯周病原性細菌と考えられており, これらの細菌由来の菌体表層抗原が歯周病ワクチンの免疫原となりうる。われわれはP.gingivalis線毛をアジュバントとともにマウスに経口投与することにより, 血中のみならず唾液中に高レベルのIgGならびにIgA抗体産生を誘導することをすでに明らかにしている。また線毛サブユニットの部分ペプチドはin vivoにおいて防御反応を誘導することから, 線毛あるいはその部分ペプチドを用いた粘膜ワクチンが歯周病ワクチンとして有用である可能性が示唆される。遺伝子工学を応用したDNAワクチンや受動免疫法も歯周病ワクチンのストラテジーとして候補となりうることも示されている。近年の分子生物工学の発達は, 歯周病巣局所における宿主一細菌相互作用の解明を急速に進めてきたが, 我々もP.gingivalis由来の線毛やLPSが樹状細胞の活性化を介して病巣局所における免疫応答を調節している可能性を示すデータを得ている。しかしながら, 歯周病原性細菌に対するワクチン療法を含め, 歯周病を駆逐していくための新たな治療法の開発にはさらなる研究が必要と考えられる。
著者
水田 文子 猪狩 俊郎 安田 真 水田 健太郎 城戸 幹太 下田 元 佐藤 実 高橋 雅彦
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.24-30, 2005-06-30

歯科診療室においては, 患者が厚着していることが多いため, 裸腕に代えて脱衣せずに利用できる血圧測定方法がないか, 健康成人40人に対し, オシロメトリック式自動血圧計を用いて検討した。着衣の状態や測定部位は, 上腕裸腕, ワイシャツ, 薄手のセーター, 薄手のセーターを捲り上げ, 厚手のセーター, 厚手のセーターを捲り上げ, ジャケット, 裸腕前腕, 下腿とした。その結果, ワイシャツやワイシャツに2mm程度のセーターの重ね着程度ならば, 裸腕の血圧測定に代えて利用できることが明かとなった。着衣での頻回あるいは長時間におよぶ血圧測定は望ましくはないが, 健康成人で日常の歯科診療室における血圧測定には十分に利用できるものと考えられた。一般に着衣の上からの測定は駆血に要する圧が高めとなるので測定値が高く出, セーターなどを捲りあげての測定では低くなると言われているが, オシロメトリックメトリック方による測定では必ずしもそうとは限らなかった。
著者
佐々木 元樹 越後 成志 松田 耕策 安藤 良晴 田原 孝之 斎藤 哲夫 森 士朗 飯塚 芳夫 山口 泰 手島 貞一
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.123-129, 1985-12-31
被引用文献数
1

口腔外科領域の重篤な感染症は, 抗生物質の進歩により減少の傾向にあるが, 今回, 口腔底蜂?織炎より頸部にまで炎症の波及した重篤な1例を経験したので報告する。症例は, 25歳男性, 昭和58年9月15日頃より区部歯肉に落痛, 腫脹を自覚し, 9月21日某歯科にて厄を抜歯されたが, 嚥下障害強度なため, 処方された抗生物質を服用できず, また連休にかかったため, 歯科医を転々と受診した後, 9月25日当科を受診した。左側口腔底蜂軍織炎の診断のともに, 左側顎下部および口腔底に切開を加えたが排膿はなく, また, 抗生物質の点滴静注にもかかわらず, 炎症が右側まで拡大したため, 願下部並びに右側の顎下部, 口腔底にも切開を加えたが, 38〜39℃の弛張熱が続いたため, 敗血症を疑い血液培養を行なったが陰性だった。症状が改善しないため右側頸動脈三角への炎症の拡大を疑い, 胸鎖乳突筋前縁部に切開を加えたところ排膿および同部結合組織の壊死を認め, 切開後は次第に症状は緩解した。本例が重篤な症状を呈するに至った原因として, 炎症の急性期における抜歯と, 抜歯後, 処方された抗生物質を服用できなかったこと, 感受性試験で有効と思われた抗生物質が著効を示さなかったことなどが考えられるが, このような重篤な感染症では抗生物質にのみ頼ることなく, 適確な切開排膿の処置を施すことが重要と思われた。
著者
長根 篤子 畠山 寛彰 吉田 宏 丸茂 町子 三条 大助
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.125-131, 1986-12-01

顎顔面口腔領域における電撃痛・知覚麻痺・灼熱痛・穿刺痛・味覚異常・嚥下痛・痙攣など(以下知覚異常として記す)の訴えは, 日常の臨床において時折遭遇するものである。しかし, それらの病因は種々で診断が困難なことも少なくない。そこで, 今回, 我々は, 知覚異常の診断に関する基礎的データを得るために, 過去4年間に東北大学歯学部附属病院を受診した新来患者の中で上記の知覚異常を主訴とした患者111例につき, 主訴と病因との関連性を検討した。その結果, 111例中女性78例(70.3%)男性33例(29.7%)で, 電撃痛, 知覚麻痺各々32例(28.8%), 灼熱痛21例(18.9%), 以下穿刺痛, 味覚異常, 嚥下痛, 痙攣量の順であった。年齢別では50歳代が31例(27.9%), 60歳代が22例(19,8%), 40歳代が18例(16.2%)であり, 特に40〜60歳代の女性が54例(48.6%)であった。来院までの罹病期間は1年以上が47例で最も多く, 次いで1ヵ月以内が24例であった。部位別分類では味覚異常を除く各主訴とも複数の部位に症状が発現し, 全体では舌部, 頬部, 眼窩部, 口唇部に多発した。また111例中59例には心疾患, 胃腸病, 高血圧, 肝疾患, 貧血などの全身疾患が認められた。臨床診断は実に様々なものがあり, しかも不明の症例が21例(18.9%)あったことから, 器質的な異常のみならず心因的背景がある場合も考えられ, 診断の困難性が伺われた。
著者
舟山 眞人 山田 文夫 Masati Funayama Fumio Yamada
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.13-17, 1987-06-01

当教室において身元不明として剖検された死体の中から, 歯科所見を基に身元が確認された最近の3事例を報告する。第1例は220mの海底から引き上げられた男性死体で, 付近海域に沈没した海洋調査船の乗組員の可能性があった。死体上顎の一部に歯列不正(転位歯)がみられ, これがこの調査船の一人の乗組員の顔写真にも写っていた。更にパノラマ写真などとも照らし合わせた結果, 身元が確認された。第2例は山の沢で発見された若い女性の死体で, 3年間手懸りが掴めなかった。しかし, 県内に住む人からの娘の捜索の届出が発端となり, この娘が受診したことのある2歯科医の診療録と剖検時の観察所見とを照合したところほぼ一致したため, この人の娘であると確認された。第3例は外国人専用旅館の焼け跡から発見された焼死体で, 歯科所見と歯型の石膏模型を大使館経由で疑いが持たれた人の国に送ったところ, その人を治療した歯科医によって一致していることが確認された。
著者
笹野高嗣 庄司 憲明 栗和田 しづ子 三條 大助 Takashi Sasano Noriaki Shoji Shizuko Kuriwada Daisuke Sanjo
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.46-52, 1995-06
被引用文献数
1

微小循環系の組織血流の測定にレーザードプラー血流計が広く応用されている。この方法は, 水素ガスクリアランス法など従来の血流測定法とは異なるいくつかの利点を有している。しかしながら, この血流測定法は血流の絶対値を表示しない。そこで本研究では, レーザードプラー血流計を臨床における病態診断システムに応用するための基礎的実験として, 歯肉血流の測定値を水素ガスクリアランス法と比較し, レーザードプラー血流計の表示値の意義について検討した。実験にはネコ4匹を用い, 下顎歯肉の同一部位の血流をレーザードプラー血流計および水素ガスクリアランス法で測定した。歯肉血流を人為的に変化させる方法としては頚部交感神経の電気刺激を用いた。この結果, レーザードプラー血流計では複雑なプリパレーションを行うことなく, 非観血的に歯肉の血流を持続的にリアルタイムでモニターできたのに対し, 水素ガスクリアランス法では, 観血的で, 血流の測定は断続的であり, 瞬時の血流変化には対応できなかった。異なる個体間で測定された測定値については, レーザードプラー血流計の値(mV)と水素ガスクリアランス法の値(ml/100g/min)との間に相関は得られなかった。一方, 各々の血流測定法で算出された血流の変化率については, 両者の間に相関が得られた。以上の結果, レーザードプラー血流計の測定値を絶対値に変換することは困難であるが, 血流の変化率は評価できることが確認された。
著者
室野井基 大家 清 清水 良央 Motoo Muronoi Kiyoshi Ooya Yoshinaka Shimizu
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.157-161, 1995-12
被引用文献数
2

歯に関連する諸構成物の不調和は, 身体諸部位の調和をくずすといわれている。症例は, 35歳の男性で, 腰痛とよく噛めないとの主訴だった。臼歯部の不良補綴物で咬合の乱れが生じていた。直立姿勢で右肩が低かった。メタル・オクルーザル・スプリントを下顎臼歯に施行し, またマイオモニターと鍼治療が疼痛緩和に加療された。3週間後に上記の障害は除去された。本症例は, 咬合の調和が歯の構成物の十分な機能を発揮するのと同時に良い姿勢を保つのに必要であることを示唆している。
著者
枡 武彦 安藤 良晴 飯塚 ふみ子 飯塚 芳夫 手島 貞一
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.49-52, 1984-08-15

ヤマカガシ咬傷後, Defibrination syndromeからDIC症候群に移行して重篤な出血傾向に腎不全を合併し, 交換輸血と血液透析を施行して救命された。受傷後2ヵ月目に当科を受診したが, 両側下顎骨骨体部下縁に著明な骨添加による膨隆を認めた。これはヤマカガシ咬傷後の歯肉出血にともなって下顎骨骨体部骨膜下に形成された血腫が器質化後骨添加によって生じたものであると考えられた。3年4ヵ月後の現在, 添加骨は吸収されてきており, 皮質骨は平坦になってきている。
著者
木村 和男 菅原 準二 三谷 英夫 Kazuo Kimura Junji Sugawara Hideo Mitani 東北大学歯学部 東北大学歯学部 東北大学歯学部 Department of Orthodontics Tohoku University School of Dentistry epartment of Orthodontics Tohoku University School of Dentistry epartment of Orthodontics Tohoku University School of Dentistry
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 = Tohoku University dental journal (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.51-61, 1989-06-30
被引用文献数
5

頭部X線規格写真は, 時を変えて同一個体を撮影する場合, 頭部固定を全く同一条件に設定することが難しい。とくに正面写真では, 耳桿を中心とした頭部の上下方向の回転によりX線像が著しく変化するという欠点を有する。すなわち, 中心X線軸とフランクフルト平面が一致している場合のX線像と, そうでない場合のX線像とでは, 顎顔面頭蓋を構成する各骨影像の位置および形態が変化し, 読影を困難にしている。正面頭部X線規格写真に関する研究で, 頭部回転に伴うX線像変化について述べた報告は, 本橋ら1)のものをみるのみであり, 顎顔面頭蓋を構成する各骨について, 詳細に検討した報告例は見あたらない。そこで本研究では, 耳桿を中心とした頭部の上下方向の回転により, 顎顔面頭蓋を構成する各骨が, 正面写真でどのようなX線像変化をおこすのかを解明することを目的として, ヒト乾燥頭蓋骨のX線像解析を行った。研究は, ヒト乾燥頭蓋骨1体を用い, 個々の骨を各縫合部において順次分離し, その度ごとに中心X線軸とフランクフルト平面が平行な場合と, フランクフルト平面を上・下10^^。ずつ回転させた場合の正面頭部X線規格写真撮影を行った。それらを順次重ね合わせ, 消失した影像を追跡することにより各骨の影像を認識し, 頭部回転に伴う各骨の位置および形態変化を分析した。
著者
山田 和祐 角田 哲 篠木 邦彦 梅津 康生 遠藤 義隆 阿部 洋子 川村 仁 丸茂 一郎 藤田 靖 林 進武 猪狩 俊郎 飯塚 芳夫 越後 成志
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.133-144, 1983-12-25
被引用文献数
1

昭和50年11月1日から, 昭和58年8月31日までの最近8年間に, 本学第一口腔外科を受診した歯科治療時の偶発症患者460名について, 臨床的検討を行なった。偶発症の症例は, 口腔外科治療時の偶発症, 保存治療時の偶発症に分類し, さらに症例を細別して検討を行なった。偶発症患者460名のうち, 男性は207名で, 女性は253名であった。偶発症別で最も多いのは, 歯根破折による抜歯中断で, 偶発症患者総数の28.5%であった。年齢別では, 20代, 30代に集中してみられ, 両者あわせて266名で, 偶発症患者総数の57,8%であった。発症より当科来院までの期間別では, 当日より3日目までの来院が170名で, 偶発症患者総数の40.0%であった。