著者
室伏 道仁 岡藤 範正 倉田 和之 近藤 昭二 杠 俊介 栗原 三郎
出版者
一般社団法人 日本口蓋裂学会
雑誌
日本口蓋裂学会雑誌 (ISSN:03865185)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.293-301, 2006-10-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
18

上顎骨の著しい劣成長を伴う両側性口唇口蓋裂二症例において,REDシステムによる上顎骨延長術を施術した際の,上顎骨および上顎骨に対する歯の移動様相を明確にするために検討を行ったので報告する.症例1は手術時年齢11歳6か月の女子.症例2は手術時年齢16歳8か月の女子.両症例とも顎裂部自家腸骨細片移植術を行った.また,症例2は延長終了22日後に下顎後退術を併せて施術した.骨延長術はREDシステムを応用し,延長装置を上顎歯列に固定した後,Le Fort I型骨切り術を施術し,朝夕0.5mmずつ1.Omm/日の割合で延長を行った.上顎骨と歯の移動様相を正確に評価するため,Le Fort I型骨切り術中にインプラントピンを骨切り線上下に計4本埋入し,骨内マーカーとした.術前から延長終了後2年までの側面セファロトレース上で検討を行った.延長終了時,上顎骨の延長量は症例1で前方11.2mm,下方1.3mm,症例2で前方7.5mm,下方2.6mmであった.延長後変化量は,症例1で-1.8mm(-16.0%)認められたが,症例2では,延長術後も+1.Omm(+13.3%)の前方移動が認められた.術中の歯の移動は両症例とも,水平方向より垂直方向への移動が多く認められた.