著者
松尾 清 杠 俊介 伴 緑也 常川 主裕 安永 能周 柳澤 大輔 西岡 宏 大畑 えりか
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

開瞼してミュラー筋機械受容器伸展で誘発される三叉神経固有感覚は、青斑核を刺激し腹内側前頭前野を活性化し手掌汗腺を発汗させ、生理学的覚醒を調節し、かつ眼瞼痙攣を起こすことを報告した。腱膜性眼瞼下垂の患者の中で、眼瞼痙攣と不眠のある患者50名(平均50.6歳)で、ミュラー筋機械受容器伸展を減弱する手術を行い、術前、術後2週、6ヶ月にアテネ不眠尺度(AIS)の変化を評価した。眼瞼痙攣が改善するだけでなく、AISスコアは術前9.1±4.0、術後2週で4.2±3.8、半年で4.1±3.3と、術後2週で有意に(P<0.001)改善された。三叉神経固有感覚の過剰な誘発が眼瞼痙攣と睡眠障害の原因と考えられた。
著者
杠 俊介
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

ミュラー筋の神経支配の詳細を検索するために研究を行った。平成14年度、ヒトの上眼瞼と眼窩内の解剖と組織学的検索により、ミュラー筋は近位部で涙腺神経につながる神経から神経支配を受けており、その中に、遠心路である無髄のカテコールアミン作動性交感神経節後線維と、求心路と考えられる有髄の自律神経でない神経線維が含まれているという結果を得た。すなわち、ミュラー筋は、涙腺神経内を通ってきた交感神経節後線維の刺激により収縮を起こすとともに、ミュラー筋自体の緊張状態を涙腺神経につながる有髄神経を介して中枢に伝えており、それが上眼瞼挙筋の不随意収縮、すなわち開瞼の持続を起こすものと推察した。平成15年度は、実際に涙腺神経を切断した場合に眼瞼に変化が現れるかどうかを動物実験により検討した。実験動物としてラットを選択した。まずラットの脳から眼窩内、さらに眼瞼にいたる神経の走行を実体顕微鏡下に観察し、三叉神経第一枝の分枝と涙腺神経の位置を同定した。ラット15体で、三叉神経第一枝の分枝である眼窩上神経の中枢端および涙腺神経の切断実験、ならびに上頚部交感神経節の切除実験を各群5体ずつ行った。眼窩上神経の切断を行っても眼瞼には変化は生じなかった。涙腺神経を切断すると上眼瞼の下垂を生じた。上頚部交感神経節の切除を行うと、上眼瞼下垂のみならず眼球の突出が無くなり、下眼瞼の下方移動も悪くなり、結果的には3群の中では最も瞼裂幅が狭くなっていた。この結果は、涙腺神経内に上眼瞼挙上に関係した神経線維が存在することを示唆するもので、ヒトの解剖と組織検索から推察した内容に一致するものと考えた。
著者
室伏 道仁 岡藤 範正 倉田 和之 近藤 昭二 杠 俊介 栗原 三郎
出版者
一般社団法人 日本口蓋裂学会
雑誌
日本口蓋裂学会雑誌 (ISSN:03865185)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.293-301, 2006-10-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
18

上顎骨の著しい劣成長を伴う両側性口唇口蓋裂二症例において,REDシステムによる上顎骨延長術を施術した際の,上顎骨および上顎骨に対する歯の移動様相を明確にするために検討を行ったので報告する.症例1は手術時年齢11歳6か月の女子.症例2は手術時年齢16歳8か月の女子.両症例とも顎裂部自家腸骨細片移植術を行った.また,症例2は延長終了22日後に下顎後退術を併せて施術した.骨延長術はREDシステムを応用し,延長装置を上顎歯列に固定した後,Le Fort I型骨切り術を施術し,朝夕0.5mmずつ1.Omm/日の割合で延長を行った.上顎骨と歯の移動様相を正確に評価するため,Le Fort I型骨切り術中にインプラントピンを骨切り線上下に計4本埋入し,骨内マーカーとした.術前から延長終了後2年までの側面セファロトレース上で検討を行った.延長終了時,上顎骨の延長量は症例1で前方11.2mm,下方1.3mm,症例2で前方7.5mm,下方2.6mmであった.延長後変化量は,症例1で-1.8mm(-16.0%)認められたが,症例2では,延長術後も+1.Omm(+13.3%)の前方移動が認められた.術中の歯の移動は両症例とも,水平方向より垂直方向への移動が多く認められた.