著者
沼田 哲也 大江 春人 坂井 秀章 原田 敬 室屋 隆浩
出版者
心臓
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.31, no.12, pp.833-838, 1999

心肺停止をきたした院内発症の急性肺血栓塞栓症に対し,カテーテルによる血栓吸引を試み救命し得た症例を経験した.症例は44歳,女性.転落事故による外傷性クモ膜下出血,大腿骨骨折治療のため約1カ月臥床していたが,下肢リハビリテーション開始直後に突然呼吸苦を訴え心肺停止となった.心肺蘇生下に緊急心臓カテーテル検査施行,冠動脈造影,左室造影では異常なく,肺動脈造影にて右肺動脈主幹部に広範囲な陰影欠損を認め,急性肺血栓塞栓症と診断した.直ちに経皮的冠動脈形成術(percutaneous transluminal coronary angioplasty;以下PTCA)用8Fガイディングカテーテルを用いた血栓吸引を繰り返し行い,さらにナサルプラーゼ(nasaruplase=pro-urokinase;以下pro-UK)の肺動脈内投与を追加し血栓除去に成功した.後療法としてウロキナーゼ(urokinase;以下UK),ヘパリン,ワーファリンによる抗血栓・抗凝固療法を行い,後日施行した肺動脈造影では明らかな血栓像は認めず,その後も再発はない.<BR>近年,急性肺血栓塞栓症に対する治療法としてカテーテルを用いたインターベンション治療が導入されつつあるが,本邦での報告はまだ少ない.我々は,心肺停止で発症した急性肺血栓塞栓症に,心肺蘇生下にカテーテルによる血栓吸引を試み,救命し得た症例を経験したので,その概要および本治療法の有用性を報告した.