著者
斉藤 博則 野本 淳 田野 入高史 岡村 哲夫 青木 和弘 鈴木 清文 福元 耕 茂木 純一 川井 三恵 横打 邦男 阿部 邦彦 吉沢 直
出版者
心臓
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.92-96, 1995

症例は47歳,男性.平成5年1O月28日事務仕事中,突然意識消失,呼吸微弱となり,心肺蘇生術を受けながら,近医に転送された.来院時意識レベル200~300,瞳孔散大,血圧測定不能,モニターでは心室細動であった.挿管し呼吸管理とするとともに,200~300JのDC計4回施行し洞調律に復した.この間リドカイン,メキシレチン,ベラバミル,ボスミン,メイロン等の静注を受けた.その後順調に回復し,精査加療目的で当院紹介入院となった.入院後心カテ施行.冠動脈造影正常,左室造影上全体的な収縮力低下を認め駆出率は25%であった.また,心筋生検も施行し,さらに電気生理学的検査を施行した.右室2カ所,左室1カ所計3カ所からの3連発刺激,それに加えて,イソプロテレノール負荷後の2連発刺激でも心室頻拍・心室細動は誘発されなかった.治療はアミオダロン200mg/日,カプトプリル,利尿剤,ワーファリンを投与した.現在経過観察中であり,今後ICD植え込みも検討中である.
著者
沼田 哲也 大江 春人 坂井 秀章 原田 敬 室屋 隆浩
出版者
心臓
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.31, no.12, pp.833-838, 1999

心肺停止をきたした院内発症の急性肺血栓塞栓症に対し,カテーテルによる血栓吸引を試み救命し得た症例を経験した.症例は44歳,女性.転落事故による外傷性クモ膜下出血,大腿骨骨折治療のため約1カ月臥床していたが,下肢リハビリテーション開始直後に突然呼吸苦を訴え心肺停止となった.心肺蘇生下に緊急心臓カテーテル検査施行,冠動脈造影,左室造影では異常なく,肺動脈造影にて右肺動脈主幹部に広範囲な陰影欠損を認め,急性肺血栓塞栓症と診断した.直ちに経皮的冠動脈形成術(percutaneous transluminal coronary angioplasty;以下PTCA)用8Fガイディングカテーテルを用いた血栓吸引を繰り返し行い,さらにナサルプラーゼ(nasaruplase=pro-urokinase;以下pro-UK)の肺動脈内投与を追加し血栓除去に成功した.後療法としてウロキナーゼ(urokinase;以下UK),ヘパリン,ワーファリンによる抗血栓・抗凝固療法を行い,後日施行した肺動脈造影では明らかな血栓像は認めず,その後も再発はない.<BR>近年,急性肺血栓塞栓症に対する治療法としてカテーテルを用いたインターベンション治療が導入されつつあるが,本邦での報告はまだ少ない.我々は,心肺停止で発症した急性肺血栓塞栓症に,心肺蘇生下にカテーテルによる血栓吸引を試み,救命し得た症例を経験したので,その概要および本治療法の有用性を報告した.