著者
贄 育子 小幡 孝志 室津 史子
出版者
ヒューマンケア研究学会
雑誌
ヒューマンケア研究学会誌 (ISSN:21872813)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.29-36, 2014

【目的】母性看護学実習に対する男子学生の思いを明らかにし、実習展開の示唆を得る。【方法】母性看護学実習を終了した男子学生9名を対象とし、半構造化面接により作成した逐語録を、テキストマイニングで分析した。【結果】補完類似度を用いた特徴表現抽出の結果、実習前は「男性-疎外感」、「実習-行く+したくない」、実習中は「新生児-看護」、「つながり-理解+できる」、「学生-必要」、「看護-経験+できる」、「観察-重要」、実習後は「まじめ-実習+したい」、「育児休暇-取る+したい」、「実習前-意味+ない」、「精神的サポート-必要」、「男性-支える」、「視点-増える」が抽出された。【結論】母性看護学実習に対して男子学生は、実習前は性差による疎外感から不安を抱えている。しかし、実習中は対象者とのかかわりを通して、学生にとって必要な経験ととらえ、実習後は父親としての将来像についても考えていることがわかった。
著者
重本 津多子 室津 史子
出版者
ヒューマンケア研究学会
雑誌
ヒューマンケア研究学会誌 (ISSN:21872813)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.35-40, 2015

本研究の目的は、組織基盤の異なった2 つの病院で、主観的職務満足度・継続の意志等と背景、および仕事役割と家庭役割から発生する役割葛藤(Work Family Conflict :WFC)について検討することである。近畿地方の病床数220の総合病院と四国地方の病床数500 の総合病院に勤務する看護師を対象に自記式質問紙調査で実施した。その結果、対象者の背景の違いは年代構成であり、これは経験年数・継続年数と関連していた。離職率調査の結果では地域性に差があることが明らかになっているが、本研究でも地域差、組織基盤による継続意志の違い、職場定着への影響があることが明らかとなり、看護師の定着を促す組織運営への影響を示唆していた。また、WFCと背景についての関連はパートナーや子どもの存在が家族生活領域に大きく関係していることから、仕事と家庭を調整する組織文化マネジメントが重要であることが示唆された。
著者
室津 史子
出版者
学校法人山陽学園 山陽学園大学・山陽学園短期大学
雑誌
山陽論叢 (ISSN:13410350)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.133-143, 2009 (Released:2018-11-28)

核家族化した現代の育児において,父親の果たす役割は大きく父親への支援について考えることは母子保健分野において重要なことである。それは,母親が主体となる母乳育児においても同様と考える。そこで本研究では,母乳育児における母親と父親の意識について検討した。調査は,1歳6か月児健康診査に来所し,調査に協力の得られた287組を対象として,無記名自記式質問紙調査を行った。調査内容は、対象の属性と先行文献を参考に作成した母乳育児像についての31の質問項目である。母乳育児像については,母親・父親別に因子分析を行った。その結果,母親の母乳育児像においては,『母の満足・幸福』,『母乳育児志向』,『母乳育児の簡便さ・楽しさ』,『母乳の利点』,『母乳育児の方法』の5つの因子が抽出された。父親の母乳育児像においては,『母子を見守る満足』,『母乳育児志向』,『母乳の利点』,『母乳育児の簡便さ』,『妻の満足』,の5つの因子が抽出された。質問項目別に平均得点で比較すると,父親よりも母親の得点が高い項目が多かったが,母乳育児を支えることは夫のつとめであるという意識は母親よりも父親の方が高かった。母乳育児に対する母親と父親の意識は,共通するキーワードをふくみながら、異なる因子構造が示された。母親の意識が,実施者である自分自身と子どもとの相互作用に向くのに対して,父親の意識は,妻への思いやりや子どもへの利益といった拡がりをもつことが示唆された。