著者
上野 敬介 澤井 浩子 石井 康晴 宮井 早希 小山 惠美
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.21-34, 2013 (Released:2017-02-28)

現代のオフィスでは,VDT作業に代表される精神疲労を伴う知的作業が主流となっている.精神疲労を伴う作業が長時間に及ぶと,覚醒度低下,疲労増大,パフォーマンス低下などを引き起こす恐れがあるが,リフレッシュ行動(RF行動)によって,これらを軽減する可能性が示唆されている.本研究では,より効果的なRF行動の実施を目指すため,オフィスでの実態を反映した数分以内の短時間のRF行動における「自発性」に着目し,知的作業時に生じる座位でのRF行動に伴って心身の状態変化がどのような時系列的特徴を示すのか明らかにすることを目的とした. 結果として,自発的RF行動ではRF行動後に行動前よりも心拍数が減少する時間帯が数分間みられた.また自発的RF行動後では強制的RF行動後よりも,副交感神経活動の指標とされる心電R波間隔時間変動HF成分がより大きい時間帯が数分間みられた.このように,短時間の自発的RF行動に伴って,心拍数および心拍変動HF成分の特徴的な時系列(RF行動後に一時的に活性/緊張と反対方向に変化した後,元の水準まで回復する)変動が有意にみとめられた.よって,知的作業が主流となるオフィス業務では,短時間のRF行動が自発的に生じる環境要件を整えることで,これらの特徴的な時系列変動の振幅がより大きくなり,一時的な作業負荷軽減の効果がより増大する可能性が示唆された.