著者
宮前 健太郎
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2021-04-28

明治期に年間10万人を超える死者を出した伝染病・コレラは高い致死率と感染力、患者の凄惨な病状から、当時の人々にかつてない恐怖をもたらした。それゆえに、伝染病としてのコレラそのものと並んで問題化したのが、伝染病をめぐる流言蜚語である。日本各地で発生した地域住民による隔離病院襲撃や警察との衝突、いわゆる「コレラ一揆」も、元々は「隔離された患者は生き肝を奪われる」、「警察官は消毒と称して病原菌を散布している」といった流言の流布によって起きたものである。申請者は今後これまでの研究内容を踏まえつつ、コレラをめぐる流言の特徴や成り立ち、背景、それを解消するために行われた啓蒙活動の諸記録を検討していく。