著者
宮前 武雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.369-377, 2005-04-25

抗癌剤投与による易感染宿主で向肺ウイルス感染が示す臓器への侵襲態度を動物モデルで解析した.コーチゾン(CO), シクロフォスファミド(CY)の皮下接種マウスが経鼻感染したセンダイウイルスの臓器への侵襲をウイルス血症, ウイルス抗原の検出で追跡した.CO, CYの各1回接種と名古屋株の感染時, ウイルス血症が18時間目と3日目に夫々出現し, 同時に気管リンパ節に侵襲した.更に両群の肝細胞(10日目)と脾リンパ細胞(5-10日目)に侵襲した.感染後, COとCYを夫々3回接種時, 大脳組織(神経細胞, 脈絡叢)への侵襲と肺の重篤感染を夫々に認め, 各腹腔内実質臓器への侵襲は軽度に増し, 双方間に有意差がなかった.感染時にCO1回, 更にCY2回接種の場合, 脳血管の抗原陽性率が高く, 星膠細胞層, 軟膜, 脈絡叢, 脳室上皮も抗原陽性となり神経細胞への侵襲は稀であった.全臓器への侵襲は顕著に上昇し, 呼吸器, 脳, 腹腔内実質臓器の順に低減した.血清HI価は陰性を保った.MN株感染の場合, さらに星膠細胞の侵襲から神経細胞侵食, 神経膠症を招く脳関門の破壊を見, 該血管の抗原は60日間は存続した.CO, CY併用2群は感染後, 死マウスは抗原陽性大脳血管に結節形成を示し, 遅延型過敏症を示唆した.