著者
宮地 朋果
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.614, pp.614_41-614_57, 2011-09-30 (Released:2013-03-22)
参考文献数
31

保険契約における公平性に関しては,保険数理や統計的なデータのような客観的判断とともに,国民性や価値観などの主観的判断も加わる。本稿は,これらの要素がいかに組み合わさり,公平性という価値判断が生成されるか理論的に考察することを目的とした。危険選択は,保険会社や保険数理の枠組みにおける判断と,一般消費者の認識との乖離が特に顕著となるおそれがある。したがって,保険数理的公平性と社会的公平性もしくは公共性をいかに図るかという視点が必要となる。逆選択の不利な影響を防ぐための危険選択や,適正なリスク細分化が求められるが,社会・経済制度も含む様ざまな環境変化により,その根拠となるべき価値判断の基準も変わる。近年その速度が高まるなか,社会環境の変化に事後的に対応せざるを得ないという保険の限界を鑑み,危険選択をはじめとする保険実務の在り方を,実務・研究の枠組みを超えて,広く検討することが期待される。