著者
倉本 秀人 護守 俊介 寺田 聖花 吉田 珠加子
出版者
公益財団法人 生命保険文化センター
雑誌
生命保険論集 (ISSN:13467190)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.205, pp.243-263, 2018-12-20 (Released:2022-03-18)
参考文献数
14

近年、従業員の健康に配慮した「健康経営」への社会的関心が高まりつつある。健康経営への取り組みは、従業員の健康増進だけでなく、イノベーションをはじめとする企業の成果を高めるうえでも重要であると考えられているからである。こうした動向は、生命保険業界にとっても、極めて重要なテーマの一つである。実際、生命保険会社は、自社の従業員等の健康づくりに関する取り組みを推し進めている。さらに、顧客を支える仕組みとしてFinTechの活用など、さまざまな取り組みを実施しつつある。もちろん、企業の健康経営に対する生命保険会社の取り組みはまだ始まったばかりであるが、今後さらに力を入れることで、保険加入者の健康状態を向上させ、生命保険会社としては保険金の支払いを低減させることができる。それだけでなく、企業が健康経営を行ううえでの助力になり、企業パフォーマンス向上の一翼を担うことが期待される。本論文では、健康経営が企業のイノベーションに及ぼす影響について、東証一部上場企業(製造業)を対象として重回帰分析を行った。分析の結果、従業員の多様性に加えて、積極的に健康経営に取り組むことがイノベーションの促進に影響を与える可能性が示唆された。