著者
中村 攻 宮崎 元夫
出版者
千葉大学園芸学部
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
no.34, pp.p45-55, 1984-12

本研究は, 東京都特別区の基本構想における都市施設の整備計画について, つぎのような事項を明らかにした.(1)住宅供給計画-区が直接供給する区営住宅, その他の公的住宅, 民間住宅の3種類があり, 区営住宅をふくめた公的住宅は, 福祉対策・居住環境改善対策・人口確保対策といった公共的性格の強いものに限定され, 一般の住宅需要は民間住宅対策が中心となっている.(2)交通計画-幹線道路建設では, 自動車交通一般の円滑化を目的としたものと, バス交通や避難路の確保といった目的が限定されたものがある.しかし, 幹線道路のモータリゼーション抑制策は, 公共交通の拡充と物流の共同化を抽象的にあげるにとどまり, 具体策を見出しえない状況にある.生活道路では, 歩行者空間の確保が中心課題であり, この他には自転車対策がとりあげられている.また, 現状の求心型の公共交通体系のなかでの横の移動が大きな問題となっている.(3)防災対策-防災計画の作成, 防災都市化の推進, 自主的防災対策の確立, 応急活動体制の確立が中心的課題となっているが, いずれも計画内容は未整備であり, 具体性に欠けるものが多い.そのなかで中野区・世田谷区の計画は, 具体性において注目される.(4)公害対策-測定・監視体制の整備, 原因者規制, さらには広域対策としての環境アセスメントの制度や河川浄化の協議会の設置があげられる.(5)公園-いずれの区も低い整備目標しかあげえず, 高密市街地に位置する区ほどその目標は低い.そして, 具体策としてあげる事項は, 民有地の一時的借りあげ, 河川敷の活用や暗渠化, 残存農地の活用などである.(6)下水道-都心・山手地域とそれ以外では普及率に大きな差があり, 周辺地域では重大