著者
今泉 智子 宮崎 圭子
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学文学部紀要 (ISSN:13481444)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.A75-A91, 2009-03-15

本研究では、近年の子どもたちの遊びの形態の変化を受け、(1)テレビゲームでもゲームソフトの内容によって、「遊び能力」、「社会的スキル」、「コーピング」発達に何らかの有益な影響があるのではないか、(2)ひとり遊びにおいて、「社会的スキル」、「コーピング」発達に何らかの有益な影響があるのではないか、を検討することを目的とした。小学4 ,5 ,6 年生を対象に調査研究を行った。まずひとり遊びに関する質問紙を作成し、主因子法、プロマックス回転による因子分析を行い、I.『主人公への共感性』、II.『ひとり遊びのコントロール能力』、III.『ひとり遊びへの新奇性追求』、IV.『ひとり遊びによるポジティブ効果』、V.『ひとり遊びによる非影響力』の5 因子を抽出し、ひとり遊び能力尺度を作成した。テレビゲームのタイプ別に分散分析を行い、「共感タイプ」には子どもたちの発達に有益となる特性があることが示唆された。また、遊び能力と社会的スキル、コーピングの因果関係の検討から、「社会的スキル」と「コーピング」の積極的コーピングには、ひとり遊び能力が有益な効果をもたらすということが明らかとなった。
著者
宮崎 圭子
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学文学部紀要 (ISSN:13481444)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.A93-A104, 2008-03

中高年のグループに「自己理解」をテーマにサイコエデュケーショナル・グループを実施する機会を得た。本研究の目的は、そのサイコエデュケーションの効果を検証することである。さらに、同様のプログラムで、以前実施した大学院生を対象とするサイコエデュケーショナル・グループ(宮崎, 2004a)との効果を比較し、グループ特性の違いがどのようにサイコエデュケーションの効果に影響するか、その異同を論じることが、2つ目の目的である。両グループとも、サイコエデュケーション実施前後に時間イメージ尺度(都筑, 1993)に回答を求めた。この尺度は現在イメージ、過去イメージ、未来イメージから構成されており、各イメージ尺度は20項目から成っているものである。中高年グループでは、現在イメージがサイコエデュケーション実施後において5%水準で有意にポジティブな方に変化した。さらに現在イメージが「楽しい、安定な」(5%水準)方向に変化した。過去イメージでは、「受身的な(5%水準)方に変化が見られた。院生グループでも、現在イメージがサイコエデュケーション実施後において1%水準で有意にポジティブな方に変化した。現在イメージが「楽しい」(1%水準)方に、「すばらしい、魅力のある」(5%水準)方に改善された。未来イメージにおいては、「楽しい」(1%水準)、「すばらし」(5%水準)方に改善された。また、サイコエデュケーション実施前においては、「家族と同居」群の方が「一人住まい」群より、5%水準で有意に現在イメージがポジティブであったことが明らかとなった。同じサイコエデュケーショナル・グループのアプローチをとり、同じワークを行ったにもかかわらず、グループの特性によって時間イメージの変化が規定されることが明らかとなった。今後の課題として、多様なグループに同様のサイコエデュケーショナル・グループを試み、その変化を詳細に検討していくことである。
著者
宮崎 圭子 篠崎 恵
出版者
跡見学園女子大学附属心理教育相談所
雑誌
跡見学園女子大学附属心理教育相談所紀要 (ISSN:21867291)
巻号頁・発行日
no.12, pp.29-38, 2016-03

本研究の目的は、現代の女子学生が結婚・育児を通して「働く」ということへのイメージとジェンダー・アイデンティティ、キャリア成熟度および結婚願望との関連を明らかにすることであった。関東圏内の女子学部生50名および大学院生(女子)13名を対象に調査を行った。2種類の刺激文を提示し、物語を作成してもらった。また、ジェンダー・アイデンティティ尺度15項目(佐々木・尾崎,2007)、成人キャリア成熟尺度27項目(坂柳,1999)および将来家庭を持ちたいと思うかの1項目(2件法)の質問に回答してもらった。作成された物語を3群(仕事と家庭の両立群、仕事を辞めて家庭を選択した群、葛藤群)に分類した。上記2つの尺度を従属変数、家庭を持ちたいかを独立変数とした2要因分散分析を行った。その結果、将来家庭をもちたいと回答した人の方が1%水準で「展望的性同一性」の得点が高く、5%水準で「自己一貫性同一性」の得点が高いという結果になった。また、判別分析も行った。その結果、展望的性同一性と自己一致的性同一性、人生キャリア自律性の得点が高い傾向にある学生ほど家庭をもちたいと思っている傾向にあり、他者一致的性同一性と人生キャリア計画性の得点が高い傾向にある学生ほど家庭をもちたくないと思っている傾向が見られた。
著者
三村 遥 宮崎 圭子
出版者
跡見学園女子大学附属心理教育相談所
雑誌
跡見学園女子大学附属心理教育相談所紀要 (ISSN:21867291)
巻号頁・発行日
no.17, pp.109-123, 2021-03

本研究では、メールカウンセリングにおける繰り返し技法の効果を量的及び質的に明らかにすることを目的とした。対象者は私立X女子大学学部生102名であった。質問紙は、①心理専門職への援助要請に対する態度尺度、②ポジティブ感情尺度(pre)、③刺激文、④ポジティブ感情尺度(post)、⑤自由記述(感想文)とし、回答を求めた。対象者を4群に分け、Google formのURLを配付し回答を得た。刺激文(就職活動主訴・対人関係主訴)は、①就職活動主訴の繰り返し技法なし、②就職活動主訴の繰り返し技法あり、③対人関係主訴の繰り返し技法なし、④対人関係主訴の繰り返し技法ありとした。刺激文の返信は、学生相談室のカウンセラーが送信したという設定になっている。3要因の分散分析(混合計画)を行った結果、メールカウンセリングにおいては、繰り返し技法を使用しない方がポジティブ感情下位尺度の快適さや共感、素朴な安らぎを感じることが明らかとなった。以上のことから、メールカウンセリングにおいて、カウンセラーは繰り返し技法を多用しないことに留意することが重要である。