- 著者
-
宮崎 泰成
- 出版者
- 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
- 雑誌
- 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.1, pp.11-17, 2014-10-10 (Released:2015-02-02)
- 参考文献数
- 22
【要旨】過敏性肺炎は,特異抗原を吸入した際にアレルギー反応を起こす間質性肺炎である.本疾患の40–80%が慢性で,5年生存率は45%と特発性肺線維症と類似し予後不良であるため,慢性・線維化機序の研究を行った.急性過敏性肺炎では,Th1ケモカイン・サイトカインにより肉芽腫と胞隔炎を形成する.一方で,慢性におけるTh1/Th2細胞の役割は明らかではなかったので,臨床検体および動物モデルで検討した.血清およびBALFでは,Th1ケモカインCXCL10は急性で増加し,再燃症状軽減型,潜在性発症型の順に有意に減少を示し,逆にTh2ケモカインCCL17は急性で減少し,再燃症状軽減型,潜在性発症型の順に有意に増加していた.潜在性発症型に多いUIPパターンでCCL17/CXCL10陽性細胞比が高く,同様にレセプターであるCCR4/CXCR3陽性細胞比も有意に高かった.慢性化・UIPパターンになるに従ってTh1/Th2バランスがTh2ヘシフトしていることが分かった.慢性過敏性肺炎マウスモデルで,A/Jマウス(Th2優位)とC57BL/6マウス(Th1優位)において比較したところ,A/JマウスではTh2サイトカインの上昇とともに線維化病変が強く起こった.以上より,過敏性肺炎ではTh1/Th2の免疫バランスがTh1からTh2にシフトし,慢性・線維化していた.Th2へのシフトを調整するような薬剤が慢性・線維化を抑制する可能性が示され,今後の治療戦略に役立つと考えられる.