著者
二橋 文哉 北原 佳泰 村上 有里奈 岸本 祐太郎 青野 祐也 永福 建 右藤 智啓 佐藤 潤 妹川 史朗 須田 隆文
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1_2, pp.81-84, 2018-10-25 (Released:2019-04-02)
参考文献数
14

呼吸不全を呈した加湿器肺3例の臨床像について後方視的検討をおこなった.全例新規に購入したしずく型の超音波式加湿器を,水を交換せずに注ぎ足して使用し,使用開始後3 ヶ月以内に発症していた.初診時のPaO2/FiO2の中央値は164(104-293)であり,1例で非侵襲的陽圧換気,1例でhigh flow nasal cannula,1例は通常の経鼻カヌラを使用した.胸部CTで,小葉中心性粒状影が主体であった例は無く,浸潤影,すりガラス影が混在し,器質化肺炎との鑑別を要するパターンが認められた.加湿器の使用中止とステロイド投与で全例改善した.加湿器の水のβ-Dグルカンとエンドトキシンはいずれも高値であり,加湿器の水の培養でグラム陰性桿菌,真菌や非結核性抗酸菌(Mycobacterium gordonae)が検出され,病態への関与が推察された.急性~亜急性経過の間質性肺炎の診断において,冬季には,加湿器肺も念頭においた詳細な問診が必要である.
著者
横尾 慶紀 北田 順也 錦織 博貴 山田 裕一 藤井 偉 猪股 慎一郎 工藤 和実 千葉 弘文 白鳥 正典 山田 玄 高橋 弘毅
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.133-137, 2013-10-01 (Released:2014-11-10)
参考文献数
14

症例は54歳,男性.湿性咳嗽,血痰,労作時呼吸困難が出現し,健康診断で胸部X線写真上すりガラス影を指摘され近医を受診した.胸部CTで両側上肺優位に肺野濃度上昇を認めたため,精査目的で当院に入院となった.問診により,幼少時から自宅でレース鳩を飼育していることが判明し,鳥関連過敏性肺炎を疑った.気管支肺胞洗浄ではリンパ球の増加とCD4/8比の低下を認め,経気管支肺生検ではリンパ球浸潤を主体とする胞隔炎を認めた.また,患者が飼育している鳩血清および鳩糞と患者血清との間で行った沈降抗体反応は陽性であった.原因抗原からの隔離により肺病変が改善し,レース鳩を処分したのちに行った飼育小屋での環境誘発試験は陽性であった.以上からレース鳩飼育により急性発症した鳥関連過敏性肺炎と診断した.一般に本症は画像で線維化像を示す慢性型の場合が多い.本症例では,鳩の飼育数の増加によって抗原暴露量が著しく増加したことが急性型の発症を呈した原因と考えられた.
著者
玉田 勉
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.35-42, 2013-10-01 (Released:2014-11-10)
参考文献数
32
被引用文献数
4 5

サルコイドーシスの骨・筋肉・関節病変は比較的頻度は低いものの,しばしば難治性であり長期間の副腎皮質ステロイドホルモン薬(ステロイド)投与を要する傾向がある.診断については整形外科医の協力が必要であるが,手術を要しない内科的治療に関しては,サルコイドーシスに対する全身ステロイド療法の経験の多さからか,われわれ内科医が行うことが多い.骨・筋肉・関節病変に対する治療効果の判定やステロイドの漸減のタイミングなどの判断は,患者の自覚症状に頼ることが多く,われわれ内科医にとって客観的指標に基づく判断をするのは困難である.また患者の側でもステロイドの導入および減量にあたっては,症状が軽度で日常生活が可能な程度であれば,ステロイドを内服せずに我慢する場合もあり,治療方針の決定がスムーズにいかないことも多い.本セミナーではこれら骨・筋肉・関節病変について,東北大学病院サルコイドーシス外来で経験した症例を紹介しつつ,われわれ内科医でできる範囲での診断の手順や,特徴的な画像所見および治療方針などに関して概述する.
著者
山口 哲生
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.7-10, 2014-10-10 (Released:2015-02-02)
参考文献数
7
被引用文献数
1

サルコイドーシス治療において,抗菌薬,免疫抑制剤,吸入ステロイド薬は,各々有効率は低いものの明らかに有効な例が存在することは確かである.抗菌薬の中ではドキシサイクリンが最も使いやすく,隆起性の皮膚病変や筋肉病変などに有効性が高いが肺野病変やBHLにはほぼ無効である.メトトレキサートは単剤治療でも肺野病変やBHLにも有効な例がある.フルチカゾンの吸入は末梢型肺野病変例には無効であるが中枢型病変例では有効例がある.経口ステロイド治療では症例に応じて少量ステロイド,十分量ステロイド治療を使い分ける.本症の全身症状は,不定愁訴と考えずに本症特有の治療の対象となる病変と考えるべきであり,ステロイド薬や抗菌薬が有効な例がある.
著者
大西 康貴 河村 哲治 田中 博子 竹野内 政紀 平田 展也 平岡 亮太 平野 克也 小南 亮太 久米 佐知枝 高橋 清香 水野 翔馬 東野 幸子 塚本 宏壮 佐々木 信 中原 保治
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1_2, pp.65-71, 2019-10-01 (Released:2019-12-28)
参考文献数
20

保守不良の加湿器の使用は過敏性肺炎の一因と考えられている.当院で職員用に使用している31台の家庭用加湿器を対象に,貯留水と吹出気に含まれる微生物についての検討を行った.貯留水,吹出気ともに28台(90%)と高率に微生物を検出し,そのうち14台(45%)で吹出気中と貯留水中の微生物が一致した.また,貯留水より非結核性抗酸菌(nontuberculousmycobacterium: NTM)を19台(61% )で検出した.加湿トレーの洗浄頻度が高い群(毎日~1週間毎)は,低い群(2週間毎~季節毎)と比較し,エンドトキシンが有意に低値であった(P=0.048).唯一,加熱式加湿器は微生物の検出がなくエンドトキシンも低値であった.加湿器による過敏性肺炎の原因として,一般細菌,NTMやエンドトキシンなど様々な要因が関与している可能性がある.
著者
黒﨑 敦子
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1_2, pp.25-28, 2019-10-01 (Released:2019-12-28)
参考文献数
17

ANCA関連血管炎(ANCA associated vasculitis: AAV)として,顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis: MPA),多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis: GPA),好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosiswith polyangiitis: EGPA)の3疾患が定義されている.AAVの肺病変は疾患ごとに特徴的なものが多い.MPAの肺病変としては肺胞出血と間質性肺炎がみられる.肉芽腫性血管炎の名が付いているGPAとEGPAには結節性病変がみられ,GPAでは壊死性血管炎を反映して壊死を伴う肉芽腫,EGPAではアレルギー性疾患を反映して好酸球性気管支・細気管支炎や好酸球性肺炎がみられる.画像から血管炎にアプローチするには,経過を含めた臨床情報が重要である.
著者
安藤 正幸
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1_2, pp.19-24, 2017-10-25 (Released:2018-03-09)
参考文献数
15

著者らは,わが国に特有な夏型過敏性肺炎(SHP)の原因が不完全菌類の一種であるTrichosporon cutaneumであることを発見したが,その発見動機となった原因抗原探究の方法論ならびにその方法を用いて得られた成績について紹介した.SHPはT. cutaneumに対するⅢ型ならびにⅣ型アレルギー反応で起こることから,T. cutaneum多糖体の構造解析を行いglucuronoxylomannanであることを明らかにするとともに交叉反応を示すCryptococcus neoformans抗原の構造との異同についても述べた.更に,T. cutaneumがなぜSHPの原因となり得るのか,その理由について述べると共に,分子生物学的手法を用いたT. cutaneum属の新たな分類,喀痰・気管支肺胞洗浄液ならびに患者発症環境の室内気からのDNA検索法に関する研究成果についても紹介した.また,SHP診断キット(トリコ・アサヒAbチェック)を開発し,保険診療収載検査法として世に出したことも紹介した.本研究を通して著者が学んだこと,すなわち『夢に生きる』,『患者に学ぶ』,『継承的創業』の大切さについて述べた.
著者
山口 哲生 江石 義信
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1_2, pp.1-10, 2019-10-01 (Released:2019-12-28)
参考文献数
56

サルコイドーシスはいまなお原因不明とされている.しかし,細胞性免疫に対して強い免疫原性を有するなんらかの感染性物質が原因となり,素因のある宿主のみが発病して類上皮細胞肉芽腫が形成されることが世界のコンセンサスとなっている.現在までに結核菌(mKatG)とアクネ菌(Propionibacterium acnes)以外の感染性物質が肉芽腫内に認められたとする報告はなく,このいずれかが本症の原因になっていると考えられている.Eishiらは定量的PCR法,in situ hybridization法,アクネ菌モノクローナル抗体の作成と免疫染色法,本症リンパ節リンパ洞内のアクネ菌免疫複合体の証明など,本症の原因をアクネ菌と考える蓋然性の高い報告を重ねてきた.また海外からは,本症の病巣内にアクネ菌のmRNAが有意に頻度高く見出されるという報告も出ている.本稿では,アクネ菌が本症の原因であるとの仮説をたてて,この菌がどのようにサルコイドーシスを発病せしめて,かの奇妙な病態を形成していくのかについて,私たちの考えを述べた.
著者
光岡 知足
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
サルコイドーシス/肉芽腫性疾患 (ISSN:13450565)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.3-12, 2002-10-12 (Released:2010-08-06)
参考文献数
3

皮膚, 上気道, 口腔, 咽頭, 胃, 腸管, 膣, 尿道などには, それぞれ部位によって特徴的な常在細菌がすみつき, 常在菌叢を構成している. 常在菌叢と宿主との問, および, 常在菌叢を構成する菌種問には平衡関係が成立しているが, 何らかの原因でこの平衡関係が破れると, 潜在的に病原性をもっている菌が敗血症, 肺炎, 肺膿瘍, 肺壊疽, 腹膜炎, 胆嚢炎, 胆管炎, 肝膿瘍, 下痢, 腸炎, 口内炎, 扁桃炎, 脳膿瘍, 髄膜炎, 腎孟炎, 膀胱炎, 膣炎, 産褥熱, 心内膜炎, 中耳炎, 結膜炎, 軟部組織膿瘍など, いわゆる“日和見感染”を惹き起こす. 平衡関係の乱れは, 抗生物質やステロイドホルモンの投与, 外科手術, ストレス, 糖尿病, 過労・老齢などが原因となる. また, 腸内菌叢は, 多岐にわたる代謝を行う酵素をもち, その結果, 宿主の栄養, 薬効, 生理機能, 老化, 発癌, 免疫, 感染などに大きな影響を及ぼしている.
著者
石丸 伸司 山口 隆義 川崎 まり子 柿木 梨沙 管家 鉄平 五十嵐 正 岡林 宏明 古谷 純吾 華岡 慶一
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1_2, pp.41-44, 2018-10-25 (Released:2019-04-02)
参考文献数
15

2016年に公開された心臓サルコイドーシスの診断指針では,造影MRIによる心筋の遅延造影所見(Late Gadolinium Enhancement:LGE)が主徴候の一つとして挙げられているが,CT画像での異常所見については触れられていない.今回,我々はCTでの心筋遅延造影(Late Iodine Enhancement:LIE)が診断の契機となった心臓限局性サルコイドーシスの一例を経験した.本症例では,心臓CTでのLIEは心臓MRIでのLGEの部位と一致しており,また18F-FDG-PETでも同部に強い集積を認めた.サルコイドーシスの心病変診断において,CTはMRIと同等の診断能を持つ可能性があると考え報告する.
著者
小橋 陽一郎 河端 美則 網谷 良一
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.19-22, 2013-10-01 (Released:2014-11-10)
参考文献数
4

網谷らは1992年,上葉に限局した肺線維症で,結核などの原因の明らかでない13例を,特発性上葉限局型肺線維症(idiopathic pulmonary upper lobe fibrosis: IPUF)として報告した.IPUFは,胸郭は極めて扁平,胸郭外病変はなく,緩徐ではあるが確実に進行し,10–20年の経過で死亡する例が多い.病理学的には,両肺上葉が著しく縮小化し,両側肺門が挙上.線維化病変は,上肺野に限局してみられ,下葉にはほとんど病変は認められない.胸膜の線維性肥厚があり,気腔内を充満する形の線維化が形成され,時間経過した部分では,肺胞が虚脱,肺胞壁は折り畳まれた形となり,弾性線維が一見増加したように観察される.線維化巣と下方の正常肺の境界は明瞭である.近年,idiopathic pleuroparenchymal fibroelastosis(idiopathic PPFE)としてIPUF類似の組織像を呈する上葉優位型の病変が報告され,新しい間質性肺炎の組織学的分類のなかに,rare IIPsの一つとして取り上げられるようで,さらなる知見の蓄積がなされるものと期待したい.
著者
藤田 次郎
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.11-17, 2019
被引用文献数
1

<p>近年,呼吸器疾患の臨床現場において非結核性抗酸菌症(特にMycobacterium avium complex症,以下MAC症)の重要性が高まりつつある.肺MAC症の主要な病型として,ⅰ)fibrocavitary disease,およびⅱ)nodular/bronchiectatic disease,の2つの型がある.ⅰ)の病型においては,空洞形成が,ⅱ)の病型においては,小結節と気管支拡張が特徴的である.病理学的には,ⅰ)fibrocavitary diseaseにおいては滲出性肉芽腫病変を呈し,病変部にMAC菌体量が多かった(感染型).一方,ⅱ)nodular/bronchiectatic diseaseにおいては増殖性肉芽腫病変を呈し,MAC菌体量は少なかった(宿主応答型).さらにAIDS患者に認められる播種性MAC症の病態も加え,多彩な臨床・病理像を肉芽腫形成の視点から解説した.</p>
著者
渡辺 彰 菊地 利明
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.39-45, 2015-11-01 (Released:2016-02-08)
参考文献数
26

結核の減少を補うように非結核性抗酸菌症の患者数が増えている.非結核性抗酸菌は環境寄生菌であり,吸入曝露により慢性の呼吸器感染症を発症する.わが国の肺非結核性抗酸菌症の8割以上は肺MAC(Mycobacterium avium complex)症であり,線維空洞型と小結節・気管支拡張型の二つの病型があるが,後者が最近増えている.肺MAC症の薬物療法は,クラリスロマイシンをキードラッグとする多剤併用療法であるが,治癒は確実ではなく,排菌が停止しない若年例では,排菌源の主病巣の外科的切除も考慮される.近年進歩している生物学的製剤は,リウマチその他の免疫性炎症性疾患患者において劇的な改善を示す反面,抗酸菌症を含む感染症を併発させやすい.これまで,非結核性抗酸菌症患者への同製剤投与は禁忌とする考え方が強かったが,日本呼吸器学会の「生物学的製剤と呼吸器疾患・診療の手引き」では,一定の条件下での肺MAC症患者への同製剤投与には適応があるとした.
著者
土田 哲人 縣 潤 南場 雅章 遠藤 利昭 安藤 利昭 四十坊 典晴 佐々木 真由美 飯村 攻 平賀 洋明
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
サルコイドーシス/肉芽腫性疾患 (ISSN:13450565)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.37-41, 2004-10-01 (Released:2010-08-06)
参考文献数
14

心臓サルコイドーシス (心サ症) では心室中隔の障害とこれによる菲薄化が特徴的であるが, 左室肥大例も報告されている. そこで今回, サ症確定診断例において心臓超音波法および心筋シンチグラム上異常所見を示した連続70症例を対象に, 左室肥大例の出現頻度, 臨床的・病理学的特徴について解析した. 左室肥大は20例 (29%) に認められ, 中隔菲薄型31例 (44%) に次いで多い形態異常であった. 超音波上, 特発性肥大型心筋症 (HCM) と類似した左室中隔肥厚 (ASH) を伴う例が17例あり, また多くの例で中隔基部の輝度上昇を伴っていた. 10症例において心筋生検を施行したが, 光顕上, 心筋細胞肥大, 間質の線維化および脂肪変性を認めたがHCMに特徴的な心筋錯綜配列は認めなかった. 心サ症において左室肥大を示す例は稀ではないが, 形態的にはASHを示す症例が多く, HCMとの鑑別が問題になると考えられた.
著者
力丸 真美 谷野 功典 福原 敦朗 佐藤 俊 二階堂 雄文 佐藤 佑樹 東川 隆一 福原 奈緒子 河俣 貴也 梅田 隆志 森本 樹里亜 小泉 達彦 鈴木 康仁 平井 健一郎 植松 学 峯村 浩之 斎藤 純平 金沢 賢也 柴田 陽光
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1_2, pp.85-88, 2018-10-25 (Released:2019-04-02)
参考文献数
15

キノコの屋内栽培では大気中に大量の胞子が浮遊しており,高濃度のキノコ胞子を繰り返し吸入することで感作され,Ⅲ型,Ⅳ型アレルギーの機序により過敏性肺炎を発症する.診断には臨床経過や画像検査所見,環境誘発試験,沈降抗体反応やリンパ球刺激試験など免疫学的所見と病理学的所見の結果を総合的に判断することが重要である.今回我々はナメコ,シイタケ栽培者に発症した過敏性肺炎の2症例を経験したので報告する.
著者
山口 哲生 内田 佳介 江石 義信
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1_2, pp.17-26, 2020-10-01 (Released:2021-01-11)
参考文献数
69

サルコイドーシス(サ症)は原因不明の全身性肉芽腫性疾患であり,何らかの外来性原因物質に感受性のある宿主が発病 すると考えられている.肉芽腫は本来,外来性異物を封じ込めるために形成される自己防衛反応であり,肉芽腫性疾患の原 因究明には「肉芽腫内」に存在する異物を明らかにする必要がある.しかし「肉芽腫内」だけに限定して原因物質を探究す ることは技術的に困難で,多くの研究ではリンパ節など「肉芽腫外」組織も含めた「病巣内」において探索する方法がとら れている.病因論に関する研究は,今なお世界中で行われ情報が発信されているが,その多くが抗酸菌とアクネ菌に関する ものであり,本稿では抗酸菌病因論とアクネ菌病因論に焦点を当てこれを比較する形で解説を行った. 「病巣内」に存在する原因微生物を探索するためには定性的PCRが用いられることが多い.これまでの多くの報告をまと めると,抗酸菌もアクネ菌もサ症の病巣内に存在している確率は高い.抗酸菌もアクネ菌も潜伏感染する菌であるため,こ れが病巣内で肉芽腫形成の真の原因物質になっているのか,単なる潜伏感染をみているだけなのか鑑別する必要がある.こ の鑑別のためには定量的PCRで候補菌のゲノムコピー数を比較することが有用であろう.サ症病巣内の候補菌ゲノム数を 定量的に測定した結果では,アクネ菌が他の抗酸菌よりもはるかに多量に検出されている. 「肉芽腫内」に存在する原因物質に関しては,欧米から,結核菌KatG,結核菌heat-shock protein,結核菌gyrase Aが検 出されたとする報告がある.しかし各々 1施設の報告にとどまっており,今後は他の研究者や実臨床のサ症患者で再現性を もって検出されるか否かの検証が必要であろう.他方「肉芽腫内」のアクネ菌検出に関しては,本邦からの一貫した研究が ある.研究初期には,サ症肉芽腫の病巣組織を免疫原として肉芽腫内の異物抗原に反応する単クローン抗体が作製された. これが結核菌ではなくアクネ菌と特異的に反応したことから,次に免疫原をアクネ菌に変更して同様の抗体作製が行われ, 肉芽腫内アクネ菌を検出できるPAB抗体(標的抗原はアクネ菌リポテイコ酸)が完成した.現時点で再現性をもってサ症肉 芽腫内に検出される外来性抗原物質はアクネ菌のみであり,近年では肉芽腫内にPAB抗体陽性像を認める症例がPropionibacterium acnes-associated sarcoidosisとして数多く報告されている.
著者
楠原 浩一 高田 英俊 原 寿郎
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
サルコイドーシス/肉芽腫性疾患 (ISSN:13450565)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.9-19, 2007-10-01 (Released:2010-08-06)
参考文献数
28

マクロファージ内における寄生菌の殺菌を担うIL-12/IFN-γ経路は, 結核菌をはじめとする抗酸菌に対する免疫機構の中できわめて重要な役割を果たしている. 近年, 明らかな細胞性免疫不全のないBCG重症副反応例や非結核性抗酸菌感染症患者の中に, 本経路のサイトカイン, サイトカイン受容体, シグナル伝達物質の遺伝子変異を有する症例が存在することが明らかになってきた. この一連の免疫異常症では結核菌に対する易感染性も認められる. 本稿では, 本邦で初めて見出された常染色体優性遺伝IFN-γ受容体1部分欠損を中心に, IL-12/IFN-γ経路異常症の各病型の臨床像, 病態生理, 遺伝子解析について述べる. また, 肺結核患者を対象としてIL-12/IFN-γ経路の関連分子を中心とした候補遺伝子のスクリーニングを行った結果, 日本人においてIL-12受容体β1遺伝子 (IL12RB1) の特定の多型が結核感受性や結核の重症度に関連していることが明らかになったので, その成績を併せて紹介する.
著者
小野 紘貴 杉野 圭史 渡邉 菜摘 安藤 真弘 蛇澤 晶 坪井 永保
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1_2, pp.86-90, 2021-10-01 (Released:2022-01-26)
参考文献数
19

症例は 78歳,女性. X年 1月下旬から著明な全身倦怠感,食欲不振が出現し当院消化器科を受診.胸部 -骨盤造影 CTで肺門,縦隔リンパ節の腫大を認め当科へ紹介となった.気管支鏡検査を施行し,気管支肺胞洗浄でリンパ球比率 46.4%およびCD4/8比4 .7と上昇を認めた. #4Rリンパ節からの生検で非乾酪性類上皮細胞性肉芽腫を認めた.頭部 MRI検査で下垂体柄の腫大を認め,内分泌学的検査でLH,FSH,TRH, ACTHといった下垂体前葉ホルモンの低下を認めた.ガリウムシンチグラフィで両側肺門部,縦隔リンパ節,両側涙腺および耳下腺に対称性の集積を認めた.以上から下垂体機能低下症を合併した全身性サルコイドーシスと診断し X年 2月より PSL 60mg/日の内服を開始した.また尿崩症の合併に対しデスモプレシン点鼻を併用した.治療開始後,食欲不振,全身倦怠感は消失し同年 2月の CT検査では両側肺門,縦隔リンパ節腫大は消失し多尿も改善を認めた.