著者
藤吉 康志 工藤 玲 川島 正行 林 政彦 宮崎 雄三 青木 一真 山本 真之
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

地上リモートセンサーと同時にグライダーでのin situ 観測を実施することによって、大気境界層内の各種物理量が整合的に変動することが確認できた。さらに、大気境界層上端に発生した強い乱れは、小さな積雲の縁に存在する極めて狭い下降流によってもたらされていたことが分かった。また、エアロゾルの時空間分布と光学的特性の変動要因を解明するため、エーロゾルの量と光吸収特性の鉛直分布を導出するアルゴリズムを開発し、日射による加熱量を推定した。アルゴリズムの検証は、滝川で行ったグライダー観測データで行った。その結果両者にはまだ不一致が見られ、さらなるin situ観測との比較が必要であることが明らかとなった。
著者
宮崎 雄三
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究では昨年度に引き続き、2001年春に行われたNASA航空機観測キャンペーンTRACE-Pで研究員自身が測定を行った窒素酸化物の組成データや、他の研究グループから提供される大気成分データを用いることで、窒素酸化物の収支について解析を行った。その結果、西太平洋域の大気境界層(高度0-2km)及び下部自由対流圏(高度2-6km)で観測された総窒素酸化物(NO_y)は個々に測定された気相の窒素酸化物成分の総和と比べて系統的に10-20%高く、考えうる気相成分以外の成分がNO_y測定へ寄与していることが示唆された。そこで、同時測定された微小モードの硝酸エアロゾルと、この差を詳細に比較した。その結果、NO_y測定器が微小モードの硝酸エアロゾルを検出していたことが明らかになり、そのほとんどが硝酸アンモニウムの形態で存在していたと推定された。NO_y測定器による硝酸エアロゾルの直接測定は過去の航空機観測では報告されておらず、本研究による報告が初めてである。これらの結果は硝酸の大気中における寿命、さらには対流圏オゾンやエアロゾルの収支を考える上で非常に重要である。さらに他の物質との相関解析や後方流跡線解析から、東南アジアでのバイオマス燃焼と中国での化石燃料の燃焼が、微小モード硝酸エアロゾルの主要なソースであることが明らかになつた。微小モード硝酸エアロゾルのNO_yへの寄与は高度0-4kmで最も大きく、10-20%を占めたことが明らかになった。また、航空機搭載型の二酸化窒素(NO_2)測定器の高精度化のための室内予備案験を行った。具体的には、測定時の干渉成分除去や冷却等によるNO_2光解離システムの安定化を行った。その結果、測定の不確定性を18%以下、検出下限を6pptv(体積混合比1兆分の6)までに抑えることに成功し、航空機観測におけるNO_2のより高精度での測定が実現可能になった。