- 著者
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宮崎 香
東 昌市
小川 崇
- 出版者
- 横浜市立大学
- 雑誌
- 特定領域研究
- 巻号頁・発行日
- 2005
がんの悪性進展においてがん周囲の微小環境因子が重要な役割を果たしている。本研究では基底膜の細胞接着分子ラミニン332(Lm332)がプロテアーゼの限定分解を受けて可溶型分子となり、がん細胞の移動を促進することが明らかになった。また、がん細胞が間質に浸潤するとLm332の構成鎖の一つであるγ2鎖が単独で過剰に発現し、この分子ががんの浸潤性増殖を促進することが示された。さらに本研究において、腫瘍血管では発現が抑制される、血管特異的新規ラミニン分子ラミニン3B11が発見された。一方、がんの悪性進展や転移に関与するマトリックス分解酵素MMP7はコレステロール硫酸を介して細胞膜に結合し、細胞膜タンパク質やLm332などを分解し、がん転移を促進すると考えられた。これらの因子は抗がん治療の有望な標的分子と考えることができる。