著者
増井 友里 浅野 善英 柴田 彩 門野 岳史 佐藤 伸一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.340a, 2012 (Released:2013-02-28)

全身性強皮症は皮膚および内臓諸臓器の線維化と血管障害を特徴とする全身性の自己免疫疾患である.その発症機序はいまだ不明であるが,炎症・自己免疫・血管障害など様々な要因により線維芽細胞が恒常的に活性化され,結果的に細胞外基質の過剰な沈着が生じると考えられている.その過程にはTGF-βをはじめとし,多くの炎症性サイトカインや成長因子が関与していることが明らかにされている.   ビスファチンは主に脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの一つで,内臓脂肪蓄積量と高度に相関し,内臓脂肪蓄積を基盤とした病態や脂肪細胞の分化・誘導に関与していると言われている.また,炎症・線維化・免疫調節への関与も報告されており,関節リウマチやベーチェット病,炎症性腸疾患などの炎症性自己免疫疾患での病態に関わることが示唆されている.   今回我々は全身性強皮症患者において血清ビスファチン濃度を測定し,臨床症状や検査データとの関連について検討を行った.さらにTHP-1細胞およびヒト皮膚線維芽細胞を用いてビスファチンが線維化の過程に及ぼす影響を検討し,全身性強皮症の線維化の病態におけるビスファチンの役割について考察した.
著者
松岡 摩耶 門野 岳史 松浦 佳奈 北澤 智子 川上 民裕 相馬 良直
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.213-220, 2017 (Released:2017-03-28)
参考文献数
8

2005年1月から2015年12月までの11年間に当科で病理組織学的に皮膚悪性腫瘍と診断した680例について統計的検討を行った。男性348例,女性332例で男女差はみられなかった。疾患別では,基底細胞癌214例,Bowen病129例,有棘細胞癌98例,日光角化症91例,悪性黒色腫87例,乳房外Paget病40例であった。過去に報告された他施設における統計と比較検討したところ他の地域がん拠点病院と類似する疾患分布であった。悪性黒色腫は集学的な治療が必要となるため,各施設の症例数に差がみられた。今後,免疫チェックポイント阻害薬の出現により,治療施設の一層の集約化が行われると考える。
著者
門野 岳史
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.83-89, 2017 (Released:2017-06-12)
参考文献数
32
被引用文献数
1 36

抗PD-1抗体であるニボルマブおよびペンブロリズマブ,抗CTLA-4抗体であるイピリムマブを代表とする免疫チェックポイント阻害薬は悪性黒色腫,非小細胞肺癌,腎細胞癌,ホジキンリンパ腫といったがん治療に新たな光明をもたらした一方で,様々な臓器に対して免疫関連有害事象という独特な副作用をもたらす.なかでも,間質性肺疾患,大腸炎,甲状腺機能低下症,肝障害,発疹,白斑,下垂体炎,I型糖尿病,腎機能障害,重症筋無力症,末梢神経障害,筋炎,ぶどう膜炎などが代表的である.免疫関連有害事象の出現時期に関しては様々であるが,抗CTLA-4抗体であるイピリムマブに関しては皮膚粘膜障害が比較的早期に出現し,その後消化器症状が出現しやすい.ニボルマブの免疫有害事象は全体としておおよそ投与数ヶ月後に生じることが多いが,出現時期には大きなばらつきがある.免疫関連有害事象に対する治療は基本的にはアルゴリズムに則って行うが,速やかに専門医にコンサルトし,有害事象のグレードと原病の状態を鑑みながら方針を立てていく.免疫関連有害事象は様々な臓器に出現するが故に他科との連携が肝要であり,病院として関係する各科横断的な対策チームを築くことが重要である.
著者
門野 岳史
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.242-248, 2010 (Released:2010-10-31)
参考文献数
44
被引用文献数
2 3

血球細胞はまず皮膚の血管内皮細胞によって捕獲(capture)され,血管に沿って転がり(rolling),固着する(firm adhesion).その後,血管内皮細胞を通り抜け(transmigration),血管外へと遊出し(diapedesis),皮膚へと浸潤する.これらの過程には様々な細胞接着分子が重要であり,例えばcaptureおよびrollingはセレクチンファミリーによって主に制御される.セレクチンファミリーはL-selectin, P-selectin, E-selectinよりなり,これらの分子の阻害により皮膚の炎症が減弱する.Firm adhesionにはインテグリンファミリーが重要であり,その主なものとしてβ2 integrinとそのリガンドであるICAM-1およびα4 integrinとそのリガンドであるVCAM-1がある.これらの分子の阻害によっても皮膚の炎症は減弱する.Transmigrationおよびdiapedesisに関与する分子に関しても,PECAM-1, CD99, JAMの阻害により皮膚の炎症が改善した報告がみられている.今後,これら様々な細胞接着因子を抑えることにより,皮膚の炎症を制御することが期待される.
著者
菊池 かな子 小宮根 真弓 門野 岳史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

皮膚の色素増強を起こす病態として、全身性強皮症がある。申請者は以前この病態で血清中のbasic fibroblast growth factor(bFGF)が増強していることを見いだした。bFGFはメラノサイトの増殖に促進的に作用するので、全身性強皮症における皮膚色素増強にはが関与している可能性もある。これに関連し、申請者は最近悪性腫瘍による強皮症類似病態において、全身性強皮症よりも高い血清中濃度について報告した。病変皮膚、原発の悪性腫瘍の一部でもbFGFの高発現が見いだされた。このbFGFは多くの皮膚疾患について関与が考えられる。申請者は皮膚型、および全身型の多発性動脈炎においてやはり血清bFGF濃度の上昇を報告した。やはり病変部の動脈周囲ではbFGFの発現も認められた。同様の手法を用いてより大型の血管の病変でも、bFGFやその他のサイトカインの発現を検討し、一部は発表済みである。色素脱失を来す尋常性白斑に対し、我々はnarrowband UVB療法を行っており、前後で皮膚生検を行いメラノサイト、表皮角化細胞におけるbFGFやその他のサイトカインの発現の変化を観察している。またメラノサイト特有の蛋白の発現も同時に観察中である。5S-cistenyl-dopa(5-S-CD)はメラノーマの血清マーカーとして知られている。我々は現在尋常性白斑、尋常性乾癬といったnarrowband UVB療法が有効である疾患で経時的に5-S-CDを計測し、発表した。またこの療法中に血清尿酸値の上昇も認められた。