著者
小路 直 大瀧 達也 宮嶋 哲
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.34-39, 2020 (Released:2020-07-01)
参考文献数
16

前立腺肥大症 (Benign Prostatic Hyperplasia, 以下BPH) に対するツリウムレーザー手術は, 2015年にわが国に導入され, 2017年には男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドラインでは, 治療の効果と安全性においてエビデンスレベル2, 治療は推奨グレードBとして示されている. ツリウムレーザーは, 出血の少ない切開, 出力エネルギーに応じた蒸散が可能であるため, 経尿道的前立腺核出術, および蒸散術のモダリティーとして世界的に使用されている. ツリウムレーザーの波長は 1,940-2,013 nmであり, 水分子に吸収されやすく, 前立腺組織への深達長は, 0.2 mmと浅い. また, 連続波モードでの照射が可能であるため, 連続照射による高い蒸散, 凝固能力と切開能を併せ持つレーザーとして, BPHに対する治療として普及している. ツリウムレーザーを用いたBPHの治療として, 高い凝固能と切開能を活かしたツリウムレーザー前立腺核出術 (Thulium laser enucleation of the prostate, 以下ThuLEP), 安定したレーザー深達長による安全性の高い蒸散能を活かしたツリウムレーザー前立腺蒸散術 (Thulium laser vaporization of the prostate, 以下ThuVAP) が行われている. 特にThuLEPは, 無作為化比較試験において他術式と比較して出血量が少なく, 短いカテーテル留置期間が得られる治療であることが示されている. また, ツリウムレーザーは出血のリスクの高い他科領域での手術における有用性も報告されていることから, 複数診療科でのニーズがあるレーザーとして今後の普及が期待される.
著者
三上 洋 伊藤 敬一 吉井 秀彦 小坂 威雄 宮嶋 哲 加地 辰美 浅野 友彦 早川 正道
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.23-27, 2008-01

68歳, 男。PSA値上昇を指摘され, 経会陰式前立腺生検よりatypical cellが検出された。6ヵ月後の再生検で前立腺右葉中心に低分化型腺癌と診断され入院となった。臨床病期T2aN0M0の診断で後腹膜鏡下根治的前立腺摘除術および両側骨盤内リンパ節切除を施行した。病理組織診断は低分化型腺癌(Gleason score 3+5)であった。術後3日目にドレーンが自然抜去し, 14日目の膀胱造影で吻合部リーク, ダンベル型の膀胱を認めた。19日目には発熱, 下腹部膨隆が出現し, 骨盤CTにて右側に巨大な液体貯留を認めた。同部にカテーテルを留置し, 内容液はリンパ液と考えられ, リンパ嚢腫と診断した。カテーテルを持続吸引式バッグに接続し, その後ミノサイクリン注入を行った。術後27日目の膀胱造影でリークはなく, 42日目のCTでは嚢腫は消失していた。退院後は外来フォローしているが, リンパ嚢腫の再発は認めていない。A 68-year-old male visited our division with an elevation of PSA level. He underwent a needle biopsy of the prostate, and the histopathological diagnosis was poorly differentiated adenocarcinoma (Gleason score 4+3). The cancer was clinically diagnosed as T2aN0M0, and he underwent extraperitoneal laparoscopic radical prostatectomy and bilateral pelvic lymphadenectomy. Cystography 14 days after the operation still showed leakage at the vesico-urethral anastomosis and a dumbbell shaped bladder. A few days later, prominence of lower abdomen and a slight swelling of right leg presented with a high fever. Computed tomography revealed a giant lymphocele in the retroperitoneal space. We percutaneously punctured the lymphocele by using ultrasonography, inserted a pigtail catheter, and drained 1,000 ml of lymphatic fluid. After the puncture, sclerotherapy with minocycline was performed four times. Twenty days after the puncture, the lymphocele cavity was found to have shrunken and the pigtail catheter was removed. The lymphocele was diminished and did not recur thereafter.