著者
宮本 一巧 塩瀬 隆之 阪上 雅昭
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.2B2OS19a04, 2018 (Released:2018-07-30)

理学療法士,作業療法士が治療の中で行う「ハンドリング」は,経験主義的な部分が多く,その技術を他者に伝達していくには困難を伴う.本研究は,リハビリテーション領域での患者の起立動作の治療に対するハンドリングにおいて,熟練者が持つ特徴と,そこから推測可能な「コツ」を検討した.対象はセラピスト役として18年目の作業療法士 (以下,熟練者)と作業療法学科学生の2名,患者役として仮想片麻痺者を想定した健常者2名とした.熟練者は患者との距離を大きくとりながらも,終始,セラピストと患者の距離間を一定にすることで起立動作に重要な前方への運動を誘導していたことが示唆された.その特徴を支持していたのは上肢運動の自由度を抑え,下肢運動の自由度を大きくするという全身の協応構造にあった.一方,このような身体構造は古武術などの武術的な身体運動の特徴にも見られる.そこで,古武術的な要素を取り入れた他者の上体起こしと一般的なそれを比較した結果,古武術の方が,頭と肩・肘・手との距離を小さくして身体操作を行っていた.