著者
鷲野 巧弥 志田 大 谷澤 徹 那須 啓一 宮本 幸雄 井上 暁
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.2621-2625, 2012 (Released:2013-04-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

大腸癌発癌の一因として,日本住血吸虫感染症が指摘されている.今回,癌部に日本住血吸虫卵を認めた同時性多発大腸癌の1例を経験したので報告する.症例は79歳男性,18歳まで日本住血吸虫の流行地であった山梨県甲府盆地に居住していた.健診での便潜血の精査で進行S状結腸癌および早期下行結腸癌と診断した.内視鏡的切除を行った下行結腸M癌の病理組織において,茎部・粘膜筋板直下に日本住血吸虫卵を認めた.同時に切除した大腸腺腫4カ所には虫卵はなかった.S状結腸癌に対しては,腹腔鏡下S状結腸切除術を行った.病理所見は,中分化管状腺癌,type2,45×35mm,SS,N1(1/13)であり,H0,P0,M0,fStage IIIaであった.S状結腸癌病巣の一部および周囲粘膜筋板直下にも日本住血吸虫卵を認めた.虫卵の存在と発癌の関与が示唆された.
著者
那須 啓一 志田 大 松岡 勇二郎 谷澤 徹 松永 裕樹 真栄城 剛 宮本 幸雄 井上 暁 梅北 信孝
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.1485-1492, 2011-11-01 (Released:2011-11-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

S状結腸癌の術前検査にて偶発的に発見され,癌手術に際して同時切除した仙骨前面の骨髄脂肪腫の症例を経験した.症例は70歳の男性で,S状結腸癌の術前検査の腹部CTにて第3から第5仙椎前面に内部不均一に淡い造影効果を示す径4cmの腫瘤が見られた.MRIでは脂肪成分の含有を認め辺縁も一部不整であったことから,脂肪肉腫の術前診断にて,S状結腸癌の手術にあわせて同時に切除した.仙骨前面腫瘤は径4cm大の被膜形成の明瞭な充実性腫瘤で仙骨前面に比較的強固に付着していたが浸潤はなかった.組織学的には成熟脂肪組織の増生とその中に混在する三系統(赤血球,白血球,血小板)の造血細胞からなる骨髄組織が見られ,悪性所見はなく骨髄脂肪腫と診断した.骨髄脂肪腫は,主として副腎に発生する比較的まれな軟部組織由来の良性腫瘍であり,副腎以外の部位に発生する骨髄脂肪腫は極めて少ないことから,画像診断も含めて文献的考察を加え報告する.