- 著者
-
宮本 涼子
西前 順子
桜井 陽子
辺見 典子
- 出版者
- 一般社団法人 日本農村医学会
- 雑誌
- 日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
- 巻号頁・発行日
- pp.82, 2006 (Released:2006-11-06)
<緒言>術後患者は、痛みなどの肉体的苦痛のほか、不安・緊張・孤独感などの精神的負担も伴う。その結果、創痛や不安を過大に自覚し、睡眠障害・不穏・せん妄が見られることがある。私達は日頃の多忙な看護業務の中、精神的へのケアが不十分ではないかと自覚している。そこで、術後患者のリラクゼーション効果を得るために癒しの効果がある曲としてモーツァルトを選択し、ヒーリング音楽を流す効果について検討した。<対象・研究方法>病棟に入院され、全身(+硬膜外)麻酔下にて外科的手術を受けた患者23名を対象とし、無作為にコントロール群(音楽を流さない)12名(平均72.0歳)と実験群(平均68.6歳)の2群にわけた。また、両群間共に手術後、ヒーリング音楽を流し、その効果についてのアンケートを施行する旨を術前オリエンテーションで説明し了解を得た。 コントロール群は、従来どおりの環境下において患者の疼痛・睡眠状況を把握した。実験群は、術後30分から翌朝6時まで、癒しの曲として有名なモーツァルトの曲を、音量・スピーカーの位置を統一した上で繰り返し流した。術後、自覚的疼痛の程度を、フェイススケールを用いて術翌朝まで経時的に観察した。鎮痛剤使用の時間と内容を記録し、音楽の感想、睡眠状況、痛みや不安についてのアンケートを術後3日以内に実施した。<結果・考察>今回の研究では、ヒーリング音楽を流すことによる手術後の疼痛軽減、睡眠の確保といった肉体的な苦痛軽減は得られなかった。これらは、ヒーリング音楽は肉体的苦痛への直接的な軽減効果が無い事を示している。しかし、侵襲の大きい手術後においては、実験群で疼痛が軽減されている傾向があり、鎮痛剤の平均使用頻度も実験群のほうが少なかった。看護師側への影響としても、「音楽を流す事により緊張した気持ちが和らぎ、ゆとりを持って患者と接することができた」という意見もあり、より良い看護につながるのではないかと期待される。<まとめ>今回の研究において、ヒーリング音楽を流すことは、肉体的苦痛の軽減が得られるとは言えなかったものの、患者の不安軽減など精神面でのサポートに効果的であることが示唆された。また、看護師側にも、ゆとりをもって患者に接することができるようになった。今後、精神的な苦痛緩和のためには、患者への声かけなど精神面へのケアを充実させることはもちろん、ヒーリング音楽などの聴覚、嗅覚(アロマなど)、視覚(病室の照明など)などの感覚に訴えるような補助的な方法を積極的に導入することも重要であると思われた。