著者
野中 健一 石川 菜央 宮村 春菜
出版者
三重大学
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.133-143, 2003-03-25

本稿では、人と生き物の関係を流動的かっ可変的なものとしてとらえ、人と生き物とが、どのように結ばれているのかということ、そこに関連する諸側面を明らかにすることを目的とした。対象地域としてフィリピン、カオハガン島を選定し、島民にとって身近な生き物であるニワトリ、イヌ、ホシムシを例に取り上げた。その結果、島民はそれぞれの生き物に対して、臨機応変に対応を変えつつさまざまな関係を成り立たせていた。それは関係そのものに対する融通性と、関係を結ぶ生物の選択に対する融通性としてとらえることができた。また、人と生き物の関係は、島の社会と大きく関わっており、人間どうしのつながりをもつくっていることが明らかとなった。さらに、人と生き物の関係の間に技能が関連していることは、それぞれの関係が、一定の型にはめられるものでなく、人と生き物の実際のふれあいにより築くことが出来るものであることを示している。