- 著者
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宮田 公治
- 出版者
- 公益社団法人 日本語教育学会
- 雑誌
- 日本語教育 (ISSN:03894037)
- 巻号頁・発行日
- vol.141, pp.36-45, 2009 (Released:2017-04-05)
- 参考文献数
- 8
本稿は「にとって」の用法について,教室での説明に供することを念頭に置き,簡明な記述を目指したものである。「Xにとって,AはB」は,「経験者がXである場合を適用範囲として,「AはB」という判断を行う(=“少なくともXの場合は,「AはB」と言える”)」という意味の表現である。B(述語)の位置を占めるのは名詞・形容詞を基本とするが,不自然な例になりやすいのは形容詞である。なかでも「反対だ」「嫌いだ」など,常に特定のXのもとに下される個別的判断を表す述語は「にとって」と結びつきにくい。これらは“X(経験者)を必須成分とし,「XはA{が/に}B」という文型をとる”という構文上の共通点を持つ。ただし,「にとって」は構文関係を明示するという機能も有しており,その機能を優先して,これらの述語にあえて「にとって」を共起させることもある。