著者
宮田 知恵子 藤原 俊之 補永 薫 辻 哲也 正門 由久 長谷 公隆 里宇 明元
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.301-307, 2008-05-18 (Released:2008-06-10)
参考文献数
17

上肢局所性ジストニア患者においては,大脳皮質興奮性の増大が認められ,皮質興奮性を低下させる低頻度反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)が,症状の改善に有効であることが知られている.より簡便な経頭蓋直流電流刺激(tDCS)も皮質興奮性の修飾をもたらすことが報告されており,局所性ジストニアの治療に有効な可能性がある.さらに装具を用いた上肢運動の抑制により,局所性ジストニアが軽減することも報告されている.そこで,われわれは,上肢局所性ジストニアに対して,tDCSと装具の併用療法を施行した.Cathodal tDCSは刺激強度1 mA,刺激持続時間10 分間,1 日1 回,5 日間連続して施行し,その後,右母指と右示指の指節関節固定装具を装着させた.5 日間連続のtDCSの後には,書字動作時の長母指屈筋と第一背側骨間筋の過剰な筋活動が減少し,刺激間隔20 ms,100 msにおける相反性抑制ならびに皮質内抑制の出現を認めた.さらにスプリントの装着により,その効果は3 カ月後にも維持されていた.tDCSとスプリントの併用療法は,局所性ジストニアの治療に有効である可能性が示唆された.