- 著者
-
宮脇 真彦
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.10, pp.12-21, 2011-10-10 (Released:2017-05-19)
- 被引用文献数
-
1
俳諧の季語は、一句の季感を決定するものとして、一句の題に準じて考えられてきている。そのため、一句に季語が二つ以上詠み込まれる季重なりなどの場合、句の中心となる季語を選び出して季感を決定するという手続きが取られても来たのである。こうした一句の季に関する考え方は、現代俳句での季語に対する考え方の反映として、無意識に俳諧の発句に向き合ったための手続きでは無かったろうか。本稿では、芭蕉が積極的に編集に参加した『猿蓑』所収「春風にぬぎもさだめぬ羽織哉」の一句を取り上げ、その前書「露沾公にて余寒の当座」を手がかりに、蕉風俳諧における題と言葉、季題と季語の関係について考えてみた。そこからは、俳諧の発句が、現代俳句のような季語を詠み込むことにおいて季題を提示する方法ではなく、題を表現しようとして一句の季語を用いてゆくという、むしろ和歌的な題詠の方法が見えてくる。