- 著者
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宮腰 尚久
- 出版者
- 一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
- 雑誌
- 臨床リウマチ (ISSN:09148760)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.3, pp.203-208, 2013-09-30 (Released:2015-06-30)
- 参考文献数
- 20
高齢者の骨折を防ぐには,転倒を予防することが必須である.高齢者の転倒は,身体運動機能の低下のほか,視覚機能の低下や認知機能の障害などのさまざまな要因によって生じるが,身体運動機能には,少なからずビタミンDが関与していると考えられている.これまでの研究により,血中25(OH)D濃度が低い高齢者は,身体運動機能が衰え,転倒しやすい状態にあることが判明している.また,海外では,多くのランダム化比較試験を用いたメタアナリシスによって,ビタミンD(天然型および活性型)投与による有意な転倒予防効果が示されている.このような,ビタミンD投与による転倒予防効果は,ビタミンDの投与量が十分であり,血中25(OH)D濃度が高く維持された場合に発揮されやすい.ビタミンDによる転倒予防効果は,主に,筋に対する作用によって生じると考えられるが,その作用機序には,genomic作用とnon-genomic作用のふたつが存在する.われわれの研究では,ラットのステロイド誘発性ミオパチーモデルにおいて,アルファカルシドールは,筋張力を維持し,筋疲労を抑制し,ステロイド薬によって生じた筋委縮を部分的に抑制していた.今後は,ビタミンDの転倒予防効果に関して,わが国における臨床でのエビデンスの蓄積とともに,さらに詳細な機序の解明が望まれる.