著者
寄高 博行 花輪 公雄
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.107-128, 2020
被引用文献数
1

<p>水準測量の2000年度平均成果を用いて,外洋に面する全国の沿岸で,東京湾平均海面基準の1998年から2007年までの10年間の平均水位分布を求めた。1969/1972年度平均成果によるものとの大きな違いは,九州沿岸で18~36 cm,四国沿岸で10~24 cm平均水位が高いと見積もられたことである。その結果,北海道を除く九州・四国・本州の沿岸は,10年間の平均水位が空間的にほぼ一様な4つの区間に分けられた。これらの4区間は,平均水位の高い順に,東シナ海・日本海沿岸,潮岬以西の太平洋沿岸,潮岬以東の本州南岸,そして本州東岸である。4つの区間の4つの境界における水位差は,流れが接岸する岬付近に集中して生じていた。北海道沿岸の10年平均水位も,日本海側の方が太平洋側よりも高く,その水位差は流れが接岸する岬付近に集中していた。本州沿岸と北海道沿岸の10年平均水位差は,日本海側,津軽海峡内ともに14 cmであった。本州沿岸と北海道沿岸の水位差は11月がピークとなる季節変動を示すが,津軽海峡周辺の5つの岬を挟む水位差は,津軽海峡通過流・津軽暖流の岬付近での流速の季節変動を反映して,それぞれ異なる季節変動を示していた。九州・四国・本州南岸では,本研究で扱った期間に生じた2回の黒潮の大蛇行開始時に,黒潮の分枝流が潮岬よりも東の岬へ接岸し,潮岬以東の水位が上昇して非大蛇行時よりも高くなった状態が数か月続いていた。その後,黒潮の分枝流が岬から離岸し,潮岬以西の水位が潮岬以東の水位と同じように下がり,非大蛇行時よりも低くなるという変化をしていた。</p>