著者
花輪 公雄
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.114, no.3, pp.485-495, 2005-12-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
12

The oceans play important roles in the formation of the earth's climate, and in climatic variations and change. One of these important roles is meridional heat transport due to oceanic general circulation, especially three-dimensional thermohaline circulation through the entire water column. The oceans transport a huge amount of heat-as much as that of the atmosphere. Accordingly, the north-south gradient of surface air temperature is greatly mitigated. Corresponding to global warming due to increases of greenhouse gasses, the oceanic heat content hasincreased sharply. Global warming might cause a weakening of the strength of thermohaline circulation.
著者
久保川 厚 花輪 公雄
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.247-259, 1984-08-25 (Released:2011-06-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1 27

ポテンシャル渦度が有限でかつ空間的に一様な, 海面上に密度前線をもつ沿岸密度流に付随する半地衡性重力波 (Semigeostfophic gravity wave) について調べた. その結果, 沿岸密度流には2種類の半地衡性重力波が伴うことが判った. 本論文では, この2種類の波動を半地衡性沿岸波 (SCW) および半地衡性前線波 (SFW) と名付けた. SCWはある極限でケルヴィン波に一致する波動であり, SFWは前線の存在に本質的に帰因する波動である. 前者は岸での上層の厚さと前線での岸に沿う方向の流速変動として主に現われ, 後者は海流の幅の変動として主に現われる. また, これらの波動は弱非線形性と非地衡性を考慮するとKortweg-de Vries方程式に支配されることを示した. このことは, 沿岸密度流の局所的な変動が波動状擾乱として伝搬しうることを示唆している.
著者
寄高 博行 花輪 公雄
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.107-128, 2020
被引用文献数
1

<p>水準測量の2000年度平均成果を用いて,外洋に面する全国の沿岸で,東京湾平均海面基準の1998年から2007年までの10年間の平均水位分布を求めた。1969/1972年度平均成果によるものとの大きな違いは,九州沿岸で18~36 cm,四国沿岸で10~24 cm平均水位が高いと見積もられたことである。その結果,北海道を除く九州・四国・本州の沿岸は,10年間の平均水位が空間的にほぼ一様な4つの区間に分けられた。これらの4区間は,平均水位の高い順に,東シナ海・日本海沿岸,潮岬以西の太平洋沿岸,潮岬以東の本州南岸,そして本州東岸である。4つの区間の4つの境界における水位差は,流れが接岸する岬付近に集中して生じていた。北海道沿岸の10年平均水位も,日本海側の方が太平洋側よりも高く,その水位差は流れが接岸する岬付近に集中していた。本州沿岸と北海道沿岸の10年平均水位差は,日本海側,津軽海峡内ともに14 cmであった。本州沿岸と北海道沿岸の水位差は11月がピークとなる季節変動を示すが,津軽海峡周辺の5つの岬を挟む水位差は,津軽海峡通過流・津軽暖流の岬付近での流速の季節変動を反映して,それぞれ異なる季節変動を示していた。九州・四国・本州南岸では,本研究で扱った期間に生じた2回の黒潮の大蛇行開始時に,黒潮の分枝流が潮岬よりも東の岬へ接岸し,潮岬以東の水位が上昇して非大蛇行時よりも高くなった状態が数か月続いていた。その後,黒潮の分枝流が岬から離岸し,潮岬以西の水位が潮岬以東の水位と同じように下がり,非大蛇行時よりも低くなるという変化をしていた。</p>
著者
稲津 大祐 木津 昭一 花輪 公雄
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.57-69, 2005-01-05
被引用文献数
1

日本沿岸の85か所,および,韓国の日本海側の3か所の水位データを用いて,気圧変動に対する水位の応答とその海域特性を研究した。その結果,従来提唱されてきた静力学的なInverted Barometer (IB)応答(-1cm hPa^<-1>)が成り立つ海域は,水深の浅い内湾を除く,太平洋沿岸に限られることが明らかになった。一方,日本海やオホーツク海沿岸の水位は,総観規模の気圧変動に対して,最大半日程度の遅れを伴いながら応答することがわかった。日本海沿岸における応答時間の遅れは,対馬,津軽,宗谷海峡からの距離にほぼ比例していた。これらの結果に基づき,場所によって異なる水位の応答を仮定して,新しい気圧補正法を提案する。この補正によって,IB応答を仮定する従来の補正よりも確からしく気圧起源の変動成分を除去することができ,また山陰海岸に発生する陸棚波の信号をより確からしく抽出することができた。
著者
中澤 高清 青木 周司 菅原 敏 川村 賢二 遠嶋 康徳 パトラ プラビール 森本 真司 青木 周司 花輪 公雄 石戸谷 重之 菅原 敏 森本 真司 町田 敏暢 遠嶋 康徳 マクシュートフ シャミル 佐伯 田鶴 パトラ プラビール 石島 健太郎 豊田 栄
出版者
東北大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2005

大気中のCO_2、CH_4、N_2Oの濃度や同位体比およびO_2濃度を、地上基地や航空機、船舶、大気球を利用して広域にわたって測定し、全球におよぶ時間空間変動の実態を明らかにした。また、全球3次元大気輸送モデルを開発し、観測から得られた結果を解析して、変動の原因を究明すると同時に、近年における温室効果気体の循環を明らかにした。さらに、南極ドームふじ深層氷床コアを分析し、過去70万年にわたる温室効果気体の変動を復元し、その変動を解釈した。
著者
宮本 健吾 花輪 公雄
出版者
東京大学
雑誌
東京大学海洋研究所大槌臨海研究センター研究報告 (ISSN:13448420)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.95-96, 2001-03-29

平成12年度共同利用研究集会「北太平洋北西部とその縁辺海の水塊変動と循環」(2000年8月24日~25日, 研究代表者:岩坂直人)講演要旨Variations of water masses and circulation in the northwestern North Pacific and its marginal seas(Abstracts of scientific symposia held at Otsuchi Marine Research Center in 2000)
著者
宮本 健吾 花輪 公雄
出版者
東京大学
雑誌
東京大学海洋研究所大槌臨海研究センター研究報告 (ISSN:13448420)
巻号頁・発行日
vol.25, 2000-03-29

平成11年度共同利用研究集会「北日本の気象と海象」(1999年8月18日~19日, 研究代表者:児玉安正)の講演要旨Atmospheric and oceanographic phenomena around the northern part of Japan(Abstracts of scientific symposia held at Otsuchi Marine Research Center in 1999)
著者
谷本 陽一 岩坂 直人 花輪 公雄
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.831-849, 1997-08-25
被引用文献数
6

北太平洋における海面水温場と大気循環場、風の応力場、正味の海面熱フラックス場との関係をENSOサイクルの時間スケール(3年から5年)とdecadalの時間スケール(5年以上)に分けて調べた。このために、海面水温、風の応力場、正味の熱フラックス場における緯度経度5度格子月平均値データセットを1951年から1990年の40年にわたって新規に作成した。大気循環場のデータにはNMC作成の月平均値データセットの同期間分を使用した。冬季の海面水温場における10年変動に対応して、大気循環場にはその活動中心域を150°W-170°W帯におくPacific/North American(PNA)とよく似たパターンが卓越する。風の応力場では、それと整合するように、中部北太平洋の海面水温が気候値より低い(高い)期間に偏西風が強く(弱く)またその中心帯は南下(北上)している。これら大気側の変化に伴い、海面での活発な(不活発な)熱放出と海洋表層でのより強い(弱い)エクマン輸送が引き起こされる。これに対し、ENSOサイクルの海面水温変動に対応する大気循環場では別のパターンのWestern Pacific(WP)に近いパターンが卓越する。ENSOのwarm epispdes時には中部北太平洋付近の海面水温は気候値より低くなり、西部北太平洋では高くなる。この際、偏西風は下流で蛇行を示し、中部北太平洋で強く偏西風の中心帯は北上し、西部北太平洋では弱まり中心帯が南下する。この風系の変化は西部太北平洋での熱放出を押さえ、この海域での正偏差をもたらす。ENSO cold episodes時にはほぼ逆の結果を示す。10年スケールとENSOスケールの時間スケール間における海面水温アノマリの空間構造の違いは大気大循環場における違い、つまりPNA-likeパターンとWP-likeパターンのどちらが卓越しているかに結びついている。また、それに伴う風系の変化により、海洋からの熱放出、エクマン輸送と言った水温偏差を形成する過程も時間スケール間で異なっていると考えられる。