著者
石原 次郎 富岡 啓介 河? 眞琴
出版者
農林省四國農業試験場
雑誌
四国農業試験場報告 (ISSN:00373702)
巻号頁・発行日
no.64, pp.59-64, 1999-06

種子中の蛋白質含有率が20%前後に及ぶ高蛋白裸麦系統四R系911の種子貯蔵蛋白質を,二次元電気泳動法を利用して解析し,その質的および量的特徴を明らかにした。四R系911の種子貯蔵蛋白質は交配の片親である九州二条1号のものと一致し,九州二条1号から遺伝したものと考えられる。また,オオムギの貯蔵蛋白質の約4割を占めるホルデインのうち,主要な8種類のホルデインを吸光度値で比較したところ,これらすべてのホルデインについて四R系911の方が九州二条1号よりも含有量が多かった。ただ,増加率は一定ではなく,1.24倍から3.02倍の範囲で異なっていた。特に,BホルデインよりもCホルデインに属するもののほうが増加率が高かった。8種類のホルデインの増加の仕方は,穂の一部を切除して人為的に高蛋白化させた九州二条1号の値と酷似していた。以上のことから,四R系911の高蛋白化は,貯蔵器官である穂の占める割合が茎葉部に比べて減少したため,茎葉部から転流されてくるアミノ酸量が相対的に増加して生じたものと推察した。
著者
富岡 啓介 森 充隆 佐藤 豊三
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.620-623, 1999-12-25
参考文献数
9
被引用文献数
2

1999年3月,香川県の施設で栽培中のラナンキュラス(ハナキンポウゲ;Ranunculus asiaticus L.)に灰色かび病の典型的な症状を呈する病害が確認された。葉,茎および花に,初め水浸状の不整形病斑が現れ,病斑はしだいに褐変・乾燥しながら拡大・癒合し,それら器官が腐敗して株全体が早期枯死に至る。病斑上には肺∼灰褐色のビロード病の菌体が観察され,その出現は多湿条件で促進された。この菌体では典型的なBotrytis属菌の分生子柄と分生子がみられ,本菌を主にその形態的特徴からB. cinerea Person:Friesと同定した。本菌分離菌株の分生子を健全宿主に接種した結果,原病徴が再現されるとともに接種菌が再分離され,同菌の病原性が確認された。本病はすでに記録のあるラナンキュラス灰色かび病と思われた。しかし,病徴とともに病原菌の同定根拠および病原性に関する報告がない。本研究はその科学的根拠を示すものである。