著者
富澤 一弘
出版者
高崎経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

群馬県勢多郡黒保根村の水沼製糸所(現桐生市黒保根町水沼、平成17年6月、合併にて黒保根村より移行)は,明治7年創業の県下最初の民間の洋式器械製糸場であり、社長星野長太郎、実弟新井領一郎の連繋のもと,本邦初の生糸直輸出を敢行した人物として知られている。従ってこの生糸直輸出に焦点をあわせて、行われた研究等は、報告者のものも含めて少なくない。しかしながら、明治35年、組合製糸甘楽社加盟以降、昭和17年、戦時統制化の営業停止に至るまでの、水沼製糸所経営史を総合的に見通すような研究は絶無である。それ故、報告者は,明治7年以降、昭和17年に至る水沼製糸所の経営に関する原史料を体系的に蒐集,以って明治前期一昭和前期までの全期間の経営史を明らかにすることを課題として、平成15年度以来、4ヵ年にわたり研究を継続してきた。この間の研究実績として、報告者は星野長太郎文書(現桐生市黒保根町水沼・杉崎静代氏所蔵)の調査を実施、水沼製糸所経営関連の史料を抽出して複写を行うと同時に、未整理史料の整理・複写に従事してきた。それらの概要は、日誌、日記、帳簿類、商用書翰、領収書等、きわめて多岐にわたるが、未整理商用書翰の大量出現を前に、これら史料の整理・複写に重点を置いて、作業を行ってきた。また史料の永年的保存の見地から規格性を有する文書箱を活用、史料の機能的配置や、防虫的措置にも努めてきた。さらに複写した史料の翻刻・活字化にも精力的に取り組んできた。かかる成果をうけて、別紙のような業績も生み出している。もとより万余の近代文書群故に、作業・研究ともに途上であるが、平成19年度以降、論文執筆、単著化を目指していく積りである。