著者
富田 早苗 西田 洋子 石井 陽子 波川 京子
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1-2, pp.377-384, 2020

A大学では,2015年度から新たなカリキュラムに基づいた公衆衛生看護学実習を展開している.本研究は,保健師コースを選択した学生の3年間の学習到達度と全国保健師教育機関協議会が実施した全国調査との比較から A大学の保健師教育の現状と課題を明らかにすることを目的とした.調査は2015~2017年度に公衆衛生看護学実習(以下,実習)を行った4年次生を対象に,無記名自記式質問紙調査を行った.調査項目は実習体験,保健師に求められる卒業時の学習到達度である.調査時期は,各年とも実習が終了した直後に行い,3年間の総計と全国調査との比較を記述的に行った.実習での技術体験では,本調査対象者は,家庭訪問,健康相談,健康診査において,主体的な体験割合が低く,地区活動計画立案,健康危機 / 災害と感染症の項目においても体験割合が低い傾向にあった.また,専門領域では,児童虐待防止対策,自殺対策,依存症対策,がん対策の体験割合が低い傾向にあった. 学習到達度では,「保健師としての責任を果たす」は高かったが,その他の項目は低い傾向にあった.3年間の調査結果から,A 大学対象者は,少しの助言で自立してできると判断した者が少ないことが明らかとなった.主体的な実習体験の拡充と,専門領域を意識できる学内講義・演習の充実が課題である.
著者
富田 早苗 三徳 和子 中嶋 貴子
出版者
特定非営利活動法人 日本禁煙学会
雑誌
日本禁煙学会雑誌 (ISSN:18826806)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.114-120, 2016-08-30 (Released:2016-09-17)
参考文献数
18
被引用文献数
1

【目 的】 居宅の壮年期生活保護受給者の喫煙状況と健康行動との関連について明らかにする。【方 法】 40~64歳の生活保護受給者を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。調査内容は喫煙状況、疾患、健康行動およびソーシャルサポート等である。【結 果】 分析対象者は246名で、男性164名(66.7%)、女性82名(33.3%)、喫煙率は男性57.9%、女性39.0%であった。男性では学歴が低い者、健康行動が不適切な者、ソーシャルサポートが少ない者は有意に喫煙リスクが高かった。一方、女性では飲酒以外は喫煙との関連は認められなかった。男女とも高血圧、糖尿病、うつ病などの疾患と喫煙に有意な関連はなかった。【考察・結論】 女性は、喫煙とアルコール双方の支援が、男性は、食事、運動、睡眠など健康行動全般をふまえて禁煙支援をする必要性がある。ソーシャルサポートとの関連も示唆されており、生活保護受給者の禁煙対策は彼らの健康と生活を守るうえで早急に対応すべき課題と考える。