著者
シャリフディン フィルザ ウタマ 寺井 達夫
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.69, no.583, pp.73-78, 2004-09-30 (Released:2017-01-27)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本研究の目的は、コンピュータ内に展示施設などの仮想建築空間を構築し、四次元的空間制御を行うことで新たな建築空間の利用可能性が高まることを示すことにある。本論文ではそのために、仮想空間の制御を四次元空間レベルで自由に行うことのできる手法を提示し、実際にその制御を可能とする簡易システムを開発してモデル空間に適用することで、その有効性を具体的に示している。これまで提案された仮想空間はそのほとんどが実空間の延長として、モニタ上に単なる三次元空間を展開しているものであるが、本来、仮想空間は実空間の制約から解放されている分だけ、自由かつ流動的に制御できる空間として実務利用される可能性を有している。本論文では、そのような高度な処理を行うために四次元幾何空間の概念に着目し、その三次元空間への投影を建築設計上の要件に即して自由に制御できる手法を提示した。その手法を具現化して開発したコントローラシステムを実際に操作し、空間設計のツールとしての有効性を示すとともに、より応用的な検討に進むための基礎固めを行っている。具体的には、まず建築空間を構成するものとして環境、境界、人間の三つの要素に着目し、実空間と仮想空間における相互の関連を比較することで、仮想空間が依拠すべき実空間の特性と、実空間にない新たな特性を明らかにしている。その後、抽出した特性をもとに四次元空間を三次元空間に投影した際に制御される可視空間と不可視空間を規定し、仮想建築空間における内部空間と外部空間とにそれぞれ対応付けている。その結果、モデルとして制御可能な四次元仮想空間がモニタ上に展開される。