著者
松下 幸子 寺尾 京子 石間 紀男
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.75-83, 1980

1) 児童, 青年, 中年, 老年の年齢階層別の320名を調査対象として, 71品目の調理食品について嗜好調査を行った.調査には嗜好尺度による調査用紙を使用した.<BR>2) 嗜好調査の結果, 嗜好度の高かったものは, 児童では, 焼きそば, ホットドッグ, コロッケ, コーンスープ, 肉まんじゅう, ホットケーキ.青年ではすきやき, 野菜サラダ, シュークリーム, わかめのみそ汁, 白菜の漬け物.中年ではすきやき, 茶わん蒸し, 雑煮, わかめのみそ汁.老年ではひじきと油揚げの煮つけ, わかめのみそ汁, 白菜の漬け物, 赤飯などであった.<BR>3) 嗜好調査の結果について主成分分析を行ったが, 調理食品に対する嗜好には, 年齢階層別に明らかな区別があることが認められ, 主成分軸の上で児童から老年の方向へ, 嗜好が系統的に変化していくことが見られた.<BR>4) 主成分軸の意味づけを行うために, 第1主成分軸と第2主成分軸をそれぞれ64°直交回転した結果, 第 1主成分は児童の嗜好を意味し, 第2主成分は老人の嗜好を意味することが明らかになった.<BR>5) 嗜好調査の結果について, ミニマムスパンニングトリー法によりクラスター分析を行った結果, 71品目の調理食品は, 嗜好性によって6群に分類することができた.第1群はビーフシチュー, ハンバーグステーキなどの肉類を材料とするもの.第2群はコロッケ, カレーライスなどの児童の好む食品.第3群はシュークリーム, チョコレートなどのおやつ類.第4群はこぶまき, ひじきと油揚げの煮つけなどの伝統的和風そう菜類.第5群は赤飯, 雑煮などの和風料理.第6群はきゅうりのピクルス, ふろふき大根など日常の食生活では使用頻度の低いものである.その他にうなぎの蒲焼き, マーボー豆腐, 五目とり飯のように, 他の食品の嗜好に左右されずに嗜好がきまる食品がいくつか見られた.