著者
岸原 悠貴 安田 英人 須崎 紳一郎 原田 尚重 原 俊輔 蕪木 友則 東 秀律 寺岡 麻梨 山本 浩大郎 鈴木 秀鷹
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.643-650, 2020-10-31 (Released:2020-10-31)
参考文献数
9

目的:適切な入院先の選定を可能にすることで患者の予後を改善する目的から,重症化予測スコアリングモデルの検討を行う。方法:デザインは単施設後方視的コホート研究で, 2013年1月〜2015年12月に武蔵野赤十字病院救命救急センターに入院した急性医薬品中毒患者を対象とした。重症管理の有無を主要評価項目とし予測スコアリングモデルを複数作成,それらを統計学的に比較した。結果:171例を対象に解析を行い,重症管理群29例(17.0%),非重症管理群142例(83.0%)であった。予測スコアリングモデルを比較すると,ハイリスク薬剤内服の有無,内服薬の錠数151錠以上の有無,GCS 6未満の有無,心電図変化の有無を説明変数とすると妥当性がもっとも高かった(AIC=125.6)。結論:本予測スコアリングモデルによって急性医薬品中毒患者の重症管理予測の一助となる可能性がある。
著者
戸塚 亮 鈴木 秀鷹 相原 史子 櫻井 うらら 松尾 和廣 寺岡 麻梨 原 俊輔 原田 尚重
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.532-536, 2021-11-01 (Released:2021-11-01)
参考文献数
10

メトホルミン関連乳酸アシドーシス(metformin-associated lactic acidosis, MALA)は広く知られているが,血漿中濃度測定と剖検の報告は少ない。今回,MALAを発症して死亡し,死亡前の血漿メトホルミン濃度が高値であった剖検例を経験したので報告する。症例は糖尿病でメトホルミン内服中の64歳,女性。嘔吐を主訴に救急搬送され,MALA,急性腎障害,肺炎の診断でICUに入室した。抗菌薬,人工呼吸器管理,腎代替療法を施行したが奏功せず死亡した。血漿メトホルミン濃度は51.9 mg/Lと高値であった。病理解剖で巣状融合性肺炎を認めたが,高度な乳酸アシドーシスの原因は指摘できず,MALAの診断に矛盾しなかった。 血漿中濃度測定,病理解剖ともに行った症例は稀少で, MALAの診断には血漿メトホルミン濃度と臨床像の蓄積が重要であり,特異的な病理所見の有無の確認のためには,さらなる研究が待たれる。