著者
久留宮 康浩 寺崎 正起 岡本 恭和 坂本 英至 後藤 康友 浅羽 雄太郎 新宮 優二 夏目 誠治
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.317-322, 2003-02-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
12
被引用文献数
2 4

大腸癌術後の最も危険な合併症の一つである縫合不全について,その病態と治療向上に関連する因子を明らかにする目的で,過去12年間に当院で大腸癌に対し待期および緊急手術を含め切除を行った675例についてretrospectiveに検討した.またイレウスと縫合不全の関連,特に逆行性イレウス管が縫合不全の予防に有用か否かについて検討を加えた.縫合不全は47例(7.0%)にみられた.男性,術前イレウス,下部直腸癌,リンパ節転移陽性は縫合不全の危険因子であった.保存的に治療した34例の縫合不全発症日と経口摂取開始までの日数との間には有意な負の相関があった(p<0.001). 47例中再手術は8例であったが,再手術後の経過は全例良好であった.縫合不全症例47例のうち在院死亡は5例(10.6%)で,縫合不全がない症例(在院死亡, 1.9%)より有意に死亡率が高かった.イレウスで発症した大腸癌に対して逆行性イレウス管を挿入することにより緊急手術を減少させ,かつ縫合不全の発症率も減少させることができた.
著者
神谷 忠宏 寺崎 正起 岡本 好史 鈴村 潔 加藤 健宏 田島 将吾
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.2234-2238, 2013-08-25
参考文献数
19

症例は48歳,女性.血便を主訴に近医を受診し,下部消化管内視鏡検査でS状結腸に2型腫瘍を認めた.生検で高分化型腺癌と診断され,当院に紹介受診となった.腹部CT検査で,肝S4に径3cmの腫瘤を認め,同時性肝転移と診断した.手術はS状結腸切除術および肝左葉切除術を施行した.病理組織学的所見でS状結腸癌の浸潤部にinvasive micropapillary carcinoma(IMPC)成分を認めた.IMPCはSiraunkgulらが1993年に提唱した浸潤性乳癌の新しい組織型であり,近年,他臓器での報告も認められるようになってきた.IMPC成分を有する大腸癌の報告は比較的稀であり,文献的考察を加え報告する.