8 0 0 0 OA 腹部銃創の2例

著者
深見 保之 長谷川 洋 小木曽 清二 坂本 英至 伊神 剛 森 俊治
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.2495-2499, 2003-10-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
10

症例1は45歳,男性.ピストルで左側腹部を撃たれ救急外来に搬送された.血圧は触診で60mmHg,左側腹部に射入創,右側腹部の皮下に銃弾を触知した.開腹すると, S状結腸間膜と空腸間膜が損傷を受け,空腸と上行結腸が穿孔していた.空腸部分切除,回盲部切除術を施行し,術後28病日に退院した.症例2は41歳,男性.ピストルで数発撃たれ受傷し来院した.右腋窩に貫通銃創,腰部から左腹部に抜ける貫通銃創,左大腿に貫通銃創,右腹部に盲管銃創,左下腿に盲管銃創を認め,開腹し空腸部分切除,回盲部切除術を施行した.また腹壁と左下腿の弾丸は摘出した.術後45病日に退院した.銃創は本邦においては稀であるが,今後増加することが予想される.腹部銃創による腹腔内臓器損傷が疑われる場合には,迅速な手術決定が必要であると思われた.
著者
久留宮 康浩 寺崎 正起 岡本 恭和 坂本 英至 後藤 康友 浅羽 雄太郎 新宮 優二 夏目 誠治
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.317-322, 2003-02-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
12
被引用文献数
2 4

大腸癌術後の最も危険な合併症の一つである縫合不全について,その病態と治療向上に関連する因子を明らかにする目的で,過去12年間に当院で大腸癌に対し待期および緊急手術を含め切除を行った675例についてretrospectiveに検討した.またイレウスと縫合不全の関連,特に逆行性イレウス管が縫合不全の予防に有用か否かについて検討を加えた.縫合不全は47例(7.0%)にみられた.男性,術前イレウス,下部直腸癌,リンパ節転移陽性は縫合不全の危険因子であった.保存的に治療した34例の縫合不全発症日と経口摂取開始までの日数との間には有意な負の相関があった(p<0.001). 47例中再手術は8例であったが,再手術後の経過は全例良好であった.縫合不全症例47例のうち在院死亡は5例(10.6%)で,縫合不全がない症例(在院死亡, 1.9%)より有意に死亡率が高かった.イレウスで発症した大腸癌に対して逆行性イレウス管を挿入することにより緊急手術を減少させ,かつ縫合不全の発症率も減少させることができた.
著者
星野 伸晃 長谷川 洋 坂本 英至 小松 俊一郎 久留宮 康浩 法水 信治 高山 祐一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.1951-1958, 2010 (Released:2011-02-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1

目的:Multidetector-row CT(MDCT)を用いた虫垂炎診断において,単純・造影の診断能を比較しそれらの位置づけを検討した.方法:2008年3月から同年9月の間に当院を受診した全ての虫垂炎疑いの患者104例に単純・造影MDCTを施行し,Multi-planner reformation(MPR)画像を作成した.そのうち蜂窩織炎性,壊疽性または穿孔性虫垂炎と診断された75例の画像をretrospectiveに検討し,虫垂および虫垂壁の描出能,および虫垂周囲脂肪織濃度の上昇,腹水,小腸うっ滞の診断能を単純と造影で比較した.次に造影MDCTをルーチンに行った群(期間A)と最初に単純のみを施行し選択的に造影した群(期間B)でprospectiveに診断精度を比較した.結果:経静脈造影が有意に優れていたのは虫垂壁の描出能だけであり,その他の所見については読影方法により差を認めなかった.期間Aと期間Bで診断精度はほぼ同等であった.結語:MDCTの虫垂炎診断において,単純CTを評価した後に選択的に造影を行う方針が妥当であることが示唆された.
著者
森 俊治 長谷川 洋 小木曽 清二 坂本 英至 伊神 剛 太平 周作 服部 弘太郎 水野 隆史 杉本 昌之 深見 保之
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.1239-1243, 2002-05-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

症例は79歳の男性で,パーキンソン病があり,抗パーキンソン病薬を内服していた.日常生活は介助により起立が可能だが,ほとんど臥床の状態であった.主訴は心窩部痛,腹部膨満で近医よりイレウスの診断で紹介となった.腹部に巨大なガス像を認め, S状結腸軸捻転症を疑い緊急内視鏡検査を行ったが,上行結腸の肝彎曲部まで正常であった.腸閉塞の診断で経過観察していたが,改善が見られず手術を行ったところ,盲腸は反時計方向に180度回転し,さらに頭側に180度屈曲して盲腸が横行結腸と癒着して著明に拡張していたため,盲腸軸捻転症と診断した.自験例はその誘因としてパーキンソン病と長期臥床による大腸のatonyが深く関与していると考えられた.
著者
徳丸 勝悟 長谷川 洋 坂本 英至 小松 俊一郎 河合 清貴 田畑 智丈 深見 保之 秋田 昌利 都築 豊徳
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.521-526, 2005-05-01
被引用文献数
7

症例は61歳の男性で, 上腹部痛, 発熱を主訴に近医を受診し, 肝左葉に腫瘤を指摘され紹介となった.当院のダイナミックCTで肝外側区と一部内側区におよぶlow density tumorを認め, その辺縁部は徐々に不均一に造影された.腫瘍マーカーは正常範囲であった.胆管細胞癌を第1に疑い, 平成15年4月7日にリンパ節郭清を伴う肝左葉切除術を行った.病理組織像では腫瘍のほとんどが肉腫様構造を呈し, ごく一部に腺管様構造を認めた.また, その境界には移行部を認めた.肉腫様変化を伴う胆管細胞癌と診断した.術後経過は良好であったが, 外来通院中に残存肝へ転移が出現した.化学療法, 放射線療法にて一定の効果を得たが徐々に状態が悪化, 平成16年1月15日に永眠された.肉腫様変化を伴う胆管細胞癌の報告は極めて少なく, 本邦では我々が検索しえたかぎり13例を認めるのみであった.その臨床的特徴をまとめたので報告する.