著者
寺崎 秀則 田上 正 津野 恭司
出版者
熊本大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

1.未熟胎仔ヤギでのto and fro venovenous bypass ECLA安全性と有効性の実証:帝王切開にて娩出した, 在胎118〜139日, 体重700〜3190gの未熟胎仔ヤギ6例で, 頚静脈よりthin wall catheterを心房まで挿入して1本のカテーテルで交互に脱送血をくり返すto and fro venovenous bypass ECLAを実施した. 在胎132日以上, 体重2400g以上の3例は, 18時間〜32時間のECLA実施後, 気管内チューブを抜去でき, 自力でガス交換と経口摂取が可能となった. 在胎120日, 体重2000gの1例は, 87時間のV-VバイパスECLAの後離脱できたが, ベンチレーターで管理中に急に呼吸不全状態となりECLAを再開した. しかし, ガス交換補助が不十分であったため, V-VバイパスからV-Aバイパスへ変更した. 203時間のECLAを実施したが, 生体肺のガス交換能が全く改善しなかったのでECLAを断念した. 解剖の結果, 気道ならびに肺胞内は膿性の分泌物が充満していた. ベンチレーターならびに気道管理不良による感染で重症肺炎を合併したものと考えられる. 体重700g, 1250gの2例は, 未熟度が高度で, 低酸素症の改善がないまま, バイパス開始2時間で低血圧ついで心停止をきたして死亡した. 生体肺のガス交換能と心機能が未熟で, V-Vバイパスでは生命維持に必要な心肺機能を補助代行できなかったためであろう. 超未熟児の重症例ではV-VバイパスECLAよりV-Aバイパスが良いと考えられる.2.ECLAの臨床応用:在胎34週, 体重2000gのRSD患者がベンチレーター療法で気圧外傷を合併し, ガス交換が不良で生命の危険が迫ったのでECLAを実施した. 3日間のECLAで救命できた.以上のように, 頚動脈を損傷しないで済むto and fro venovenous bypass ECLAは, 体重2kg以上の新生児重症呼吸不全の治療に臨床応用可能である.