著者
寺田 晋
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.21-31, 2019

近年,インターネットを通じたヘイト・スピーチやフェイク・ニュースの拡散を背景に右派ポピュリズム勢力が台頭するとともに,人種差別主義や排外主義に対する抗議行動も激化している。こうした時代状況のもとで,社会の分断を危惧する声が高まっている。しかし,社会の分断とはどのような状態で,それは解消されるべきなのか,解消されるべきであるとしたらどのように解消されるべきなのだろうか。この論文では,以前から分断が危惧されてきたアメリカ社会において分断が議論される際に頻繁に用いられるシヴィリティという概念を分析する。本論文の主張は⚓点にまとめられる。第一に,アメリカでは,しばしば,意見対立する人々の間であっても守られるべき規範としてシヴィリティが持ち出され,この規範に反する行為が社会を分断するとみなされる。第二に,何がこの規範なのかについては共通了解は存在せず,ある理解からしてみれば分断を克服する行為が,他の理解からしてみれば分断を促進する行為とみなされる場合があり得る。第三に,シヴィリティの主張は深刻な人権侵害や少数派に対する物理的暴力を覆い隠すという問題がある。とくに,対話の継続を規範とするシヴィリティ理解は傷つきやすい人々に対し危害に耐えることを強いるという問題がある。分断の解消と対話の促進を主張する人々はシヴィリティの規範を明確化し,こうした問題に答える必要があるのである。
著者
寺田 晋
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1_225-1_245, 2014 (Released:2017-07-01)

While recent studies have emphasized the importance of colonial studies in the vein of Yanaihara Tadao as a discipline dealing with issues arising from international migration, this article suggests that studies of private international law addressed similar issues. Since private international law presupposes the coexistence of different sovereign states with their own legal systems and the movement of people among them, scholars of modern private international law had a strong interest in migration-related topics such as the admission of foreign nationals and the legal status of resident foreigners. This article focuses on one of the pioneering scholars of private international law in Japan, Yamada Saburô, and argues that his views on international migration, while based on Règles internationales sur l'admission et l'expulsion des étrangers adopted in 1892 by Institut de droit international, presented his original idea, kyôdô seizon (community life or simply community).