著者
朱 立峰 寺町 信雄
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集 社会科学系列 (ISSN:02879719)
巻号頁・発行日
no.28, pp.115-139, 2011-03

本論文は、関(2002)論文が開発・提案した付加価値指標・輸出高度化指標とその偏差値・任意の2国の対米輸出競合度という分析ツールを用いて、日中韓およびASEANの工業製品(およびIT関連製品)の雁行形態的な対米輸出構造について議論したものである。扱った期間は1999年-2007年である。工業製品における日中韓ASEANの雁行形態的な対米輸出構造を示す統計的な輸出高度化指標の偏差値の順位は、期間を通じて高い順に日本→韓国→ASEAN→中国と変わらない結果をえている。他方、IT関連製品における日中韓ASEANの雁行形態的な対米輸出構造に関連する偏差値も、同様の順位を示す結果をえている。しかしながら、年の経過とともに、中国の対米輸出規模が多額になるに伴い、日韓ASEANの中国との対米輸出競合度は大きな数値を示すようになり、特にIT関連製品においては、日韓ASEANと中国とは補完的な関係というよりは競合的な関係を強くしているという結果をえている。関(2002)論文は、主に日本と中国の1990年-2000年における工業製品(およびIT関連製品)の雁行形態的な対米輸出構造について分析を行なっている。工業製品については大筋われわれと同じ結論であるが、IT関連製品については異なる結論となっている。
著者
寺町 信雄
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.1-21, 2009-03-12

1996年-2005年における日中間の貿易構造の特徴を議論する。使用する主なデータは,UNCTAD/WTOの国際貿易センター(ITC)による「SITA 1996-2005」のSITCの5桁の貿易データである。 先ず日中間貿易の総額について概観した後,SITC大分類より日中間貿易の純輸出比率曲線を導出し,それを用いた議論を行う。次にSITCの5桁の貿易データを用いて,一方向貿易・双方向貿易・垂直的産業内貿易・水平的産業内貿易・単価が異なる双方向貿易に仕分けし,一方向貿易に比べて双方向貿易および垂直的産業内貿易の割合が徐々に上昇していること,対中輸入より対中輸出の方がこの傾向が強いことを明らかにする。また,SITC貿易データを国連の用途別のBEC分類の貿易データにコンバートして,産業用資材と部品の中間財と,資本財と消費財の最終財に区分した日中間の貿易構造についても明らかにする。続いて,一方向・双方向・垂直的・水平的などに仕分けしたSITC分類の品目であると同時に,用途別のBEC分類の品目である仕分けを行うことによって,日中間の貿易構造の詳細な特徴を新たに追加する。最後に,まとめと今後の課題について述べる。